石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

五大国際石油企業2016年度業績速報シリーズ(10)  

2017-03-02 | 海外・国内石油企業の業績

 (注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してごらんいただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0401OilMajor2016.pdf

 

III. 2014年と2015年の5社業績比較 (続き)

2.損益

(1)総合損益

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-26.pdf 参照)

2016年の利益を前年の2015年と比較すると各社によって明暗が大きく分かれている。2016年に5社で最も利益が多かったのはExxonMobilでその額は78億ドルであった。しかしこれは同社の2015年の利益162億ドルから半減している。これに対してTotalは2015年の51億ドルを22%上回る62億ドルの利益を計上している。またShellの利益は前年の2.4倍の46億ドルであり、利益の上昇率では5社のトップである。BPは2015年の大幅欠損を脱し、わずかではあるがプラスに転じている(-65億ドル → +1億ドル)。これに対してここ数年ExxonMobilに次ぐ利益を計上していたChevronは2015年の利益46億ドルから2016年は5億ドルの損失に転落、5社の中で唯一マイナス決算になっている。

 

(2)上流部門と下流部門の損益比較

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-30.pdf 参照)

各社の利益を上流部門(生産)と下流部門(精製)に分けてみると下流部門はいずれも前年より利益額が減少しているものの黒字傾向を維持している。しかし上流部門はExxonMobil、Total、Chevronのように黒字が減少、あるいは赤字幅が拡大した企業がある反面Shell、BPは赤字幅の縮小あるいは赤字から黒字に転換するなど改善が見られる企業の二極に分化している。

 

例えばExxonMobilの場合、2015年の上流部門利益は71億ドル、下流部門は66億ドルであったが、2016年は上流部門2億ドル、下流部門42億ドルといずれの部門も利益が減少している。Shellは両年とも上流部門が赤字、下流部門が黒字であったが、2016年は上流部門の損失が減少した反面(-88億ドル → -37億ドル)、下流部門は利益幅が縮小している(102億ドル→66億ドル)。Totalは5社の中で上流・下流とも比較的安定した収益を上げている(上流部門:48億ドル→36億ドル、下流部門49億ドル→42億ドル)。

 

(注) 最終損益額には石油化学部門その他の損益が合算されているなど各社によって異なるため、部門別の上流・下流部門の損益合計額とは一致しない

 

3.設備投資

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-28.pdf 参照)

 設備投資は5社すべてが前年を下回っており、ExxonMobiは311億ドル→193億ドル(38%減)で5社の中では減少幅が最も大きい。Shellは261億ドル→221億ドル(15%減)、でまたBPは186億ドルから167億ドルに10%減少、Totalは204億ドル→178億ドル(13%減)、Chevronは340億ドル→224億ドル(34%減)である。

 各社とも原油価格の下落とそれによる業績悪化のため設備投資を削減している。設備投資のうち探鉱開発投資の減少は将来の各社の石油・天然ガス生産量の減少となり懸念される。

 

(続く)

 

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