石油と中東

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業績回復著しいスーパーメジャー:五大国際石油企業2017年1-3月期決算速報(2)

2017-05-10 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0410OilMajor2017-1stQtr.pdf

 

2017.5.10

前田 高行

 

1. 五社の1-3月期業績比較(続き)

(2)総合利益 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-52.pdf 参照)

 今期は5社ともに利益を計上している。利益額が5社の中で最も大きいのはExxonMobilの40億ドルであり前年同期(18億ドル)の2.2倍である。ExxonMobilに次いで利益が多いのはShellの35億ドルであり、同社の場合は前年同期比で8倍弱である。TotalとChevronの利益はそれぞれ28億ドル及び27億ドルであり、前年同期に比較するとTotalは1.8倍である。Chevronは前年同期の7億ドルの欠損から急回復している。BPはChevronと同じく前年同期は5.8億ドルの欠損であったが、今期は14億ドルの利益を計上している。。但しこれでも利益の水準はExxonMobilの3分の1強、Shellの2分の1弱にとどまっている。

(注)Shellの利益額は同社財務諸表の「Income/(loss) attributable to Royal Dutch Shell plc shareholders」の数値を取り上げている。

 

(3)上流部門と下流部門の利益

(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-56.pdf及びhttp://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-57.pdf参照)

 利益を上流部門(石油・天然ガスの開発生産分野)と下流部門(石油精製および製品販売分野)に分けて比較すると、まず上流部門では前年同期はTotal以外の4社はマイナスであったが、今期はShellを除く4社は利益を計上している。この1年の間に原油価格が大きく改善したこと、及び各社が上流部門の投資ポートフォリオを見直したことにより各社とも上流部門で利益が出る体質に変化したと言えよう。

 

 5社の中で今期の上流部門の利益が最も多かったのはExxonMobilの23億ドルでこれに次ぐのがChevron 15億ドル、Total 14億ドル、BP 13億ドルである。Shellのみは今期も5億ドルの赤字を計上している。

 

 下流部門は今期も好調で全社利益を計上している。利益額が最も大きいのはShellの26億ドルであり、次いでBPが17億ドルの黒字を計上している。その他の3社の下流部門の利益は、ExonMobil 11億ドル、Total 10億ドル、Chevron 9億ドルである。前年同期比では各社で明暗が分かれた。Shellは50%の増益であり、またChevron及びExxonMobilも25%前後利益が拡大している。しかしBP及びTotalの2社は前年同期より利益が減少している。下流部門は原油価格の上昇が原料のコストアップとなり上流部門とは正反対の効果をもたらすことになるが、製品価格への転嫁、製油所の効率化・集約化など企業努力の結果が各社の下流部門の業績に反映しているようである。

 

 なお冒頭の総合損益は各社によって石油化学品部門あるいはその他の損益を含むため上・下流部門の利益の合計額とは一致しないケースがある。

 

 各社の上流部門と下流部門の損益を比較すると、ExxonMobil、Total及びChevronの3社は上流部門が下流部門を上回り、一方、Shell及びBPは下流部門の利益が上流部門のそれを上回っている。かつて石油価格が高かった時代は国際石油企業は利益の大半を原油・天然ガスの生産(上流部門)で稼ぎ、精製、石油化学など(下流部門)の低収益を補うという収益構図であった。その後昨年前半までの約2年間は原油価格が大幅に下落したため収益構造が逆転、上流部門の利益が急減する一方、精製、石油化学部門は原料の原油・天然ガス価格が急落したため利益の出る体質に変化した。しかし、昨年後半以降は原油・天然ガス価格が持ち直しており、各社とも上流部門と下流部門の収益が変動しつつあり、それが今期の決算に表れたと言えよう。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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                               E-mail;maedat@r6.dion.ne.jp

 

 

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