(原題) Syrian Kurdish groups on the back foot as power balance shifts
2024/12/22 Arab News (Reuter電)
カミシュリー:シリア北部ではトルコに支援された敵対的なグループがクルド人勢力に対抗して動員され、ダマスカスはトルコに友好的なグループによって統治されているため、シリアの主要クルド人勢力は13年間の戦争で得た政治的利益を守ろうとする中で後手に回っている。
イラク、イラン、トルコ、アルメニア、シリアにまたがる民族グループであるクルド人は、これまでのところシリア紛争の数少ない勝者の1つであり、国土のほぼ4分の1を支配し、イスラム国に対抗する上で重要な米国の同盟国として強力な武装グループを率いてきた。しかし、イスラム主義グループであるハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)が今月ダマスカスに侵入し、バッシャール・アサド大統領を倒して以来、クルド人の勢力バランスは不利に傾いている。
米国の政権交代により、米国がシリアのクルド人主導の勢力をいつまで支援し続けるのかという疑問が生じている。シリアにおける劇的な変化は、トルコの影響力をさらに強めると予想される。トルコにとって、クルド人勢力は国家安全保障上の脅威である。トルコ政府はシリアのクルド人をクルド労働者党(PKK)の延長とみなしている。PKKは1984年以来トルコ政府に対して反乱を起こしており、トルコ、米国、その他の国からはテロ組織とみなされている。
米国のシンクタンク、センチュリー・インターナショナルの研究員アロン・ルンド氏は、「シリアのクルド人グループは非常に深刻な問題を抱えている。シリアでは根本的にトルコが支援し、或いはトルコと連携する勢力に有利にシフトしており、トルコはこれを最大限に利用しようと決意しているようだ。」と語っている。この変化は、北部の支配権をめぐる新たな戦闘に反映されており、トルコが支援する武装集団「シリア国民軍(SNA)」がクルド人主導のシリア民主軍(SDF)に対して軍事的前進を遂げている。
クルド人主導の地域行政の高官ファナル・アルカイト氏はロイター通信に対し、「アラブ民族主義のバース党を率い何十年にもわたりクルド人を抑圧してきたアサド大統領が追放されたことは、分裂した国を再び一つにまとめるチャンスである。政権はトルコとの対話の用意があるが、北部の紛争はトルコが「非常に悪い意図」を持っていることを示している」と述べた。また同氏は「これは間違いなく、この地域を新たな紛争へと向かわせるだろう」と付け加えた。
トルコのエルドアン大統領は金曜日、トルコがSDF同盟の先頭に立つクルド人民兵組織人民防衛隊(YPG)を孤立させようとしている中、アサド政権の打倒後、諸外国がクルド人戦闘員への支援を撤回すると予想していると述べた。
トルコ当局者はロイターの質問に対し、紛争の根本原因は「トルコのこの地域に対する見方ではなく、PKK/YPGがテロ組織であるということだ」とし、「PKK/YPGの分子は武器を捨ててシリアから撤退しなければならない」と述べた。 SDFのマズルム・アブディ司令官は木曜日のロイター通信のインタビューで、シリアにPKK戦闘員がいることを初めて認め、彼らはイスラム国との戦いに協力しており、トルコとの全面停戦が合意されれば帰国すると述べた。彼はPKKとの組織的つながりを否定している。
フェミニズムとイスラム主義
一方、ダマスカスでは、新指導部がトルコ政府に好意的な姿勢を示し、シリア全土を中央政府に復帰させたい意向を示している。これはクルド人が支持する地方分権化への挑戦となる可能性がある。トルコはSNAに直接支援を与えているが、アルカイダとの関わりがあるためHTSをテロ組織とみなしている。
それにもかかわらず、トルコ政府は同組織に対して大きな影響力を持っていると考えられる。西側のある上級外交官は「トルコは明らかに他の誰よりも彼らに影響を与えることができる」と述べた。HTSのリーダー、アハメド・アル・シャラー氏はトルコの新聞に対し、アサド大統領の追放は「シリア国民の勝利であるだけでなく、トルコ国民の勝利でもある」と語っている。トルコ当局者は、HTSはトルコ政府の支配下にあったことはなく、かつてあったこともなかったと述べ、HTSは「状況により連絡を取っていた」組織であり、多くの西側諸国もそうしていると付け加えた。
民主統一党(PYD)と傘下の民兵組織YPGが率いるシリアのクルド人グループは、2011年にアサド大統領に対する蜂起が始まった後、北部の大部分を支配下に置いた。彼らは独自の政権を樹立したが、目的は独立ではなく自治であると主張した。社会主義とフェミニズムを強調する彼らの政治は、HTSのイスラム主義とは大きく異なる。米国主導の部隊がイスラム国に対する作戦でSDFと提携するにつれて、彼らの支配地域は拡大し、アラブ人が多数を占める地域を占領した。
トルコが支援するSNAグループはアサド政権が倒れる中、SDFに対する攻撃を強化し、12月9日にマンビジ市を制圧した。ワシントンは停戦を仲介したが、SDFはトルコとその同盟国が停戦を遵守していないと述べており、トルコ国防省当局者はそのような合意はなかったと述べた。
米国のSDF支援はNATO同盟国トルコとの緊張の要因となっている。ワシントンはSDFをイスラム国に対抗する重要なパートナーとみなしており、ブリンケン国務長官は、イスラム国がシリアでの能力を再構築しようとしていると警告している。また、米国のバーバラ・リーフ国務次官補(近東担当)は、ワシントンはトルコ政府およびシリア民主軍(SDF)と協力し、「シリア国内のその地域におけるSDFの役割に関して、管理された権限の委譲」を見つけようとしていると述べた。バイデン現政権は、米軍はシリアに留まるとしているが、トランプ次期大統領は1月20日の就任時に米軍を撤退させる可能性がある。
トランプ大統領への手紙
トランプ大統領は最初の政権時代にシリアからの撤退を試みたが、国内および米国の同盟国からの圧力に直面した。シリアのクルド人高官イルハム・アハメド氏は、12月17日付のトランプ大統領宛の手紙で、トルコが大統領就任前に北東部への侵攻を準備していると述べた。トルコの計画は「安定確保とテロとの戦いにおける長年の進歩を台無しにする恐れがあるが、あなたにはこの大惨事を防ぐ力があると信じている」と同氏は書いている。
コメントを求められた政権移行担当報道官ブライアン・ヒューズ氏は、「我々はシリア情勢を引き続き監視している。トランプ大統領は中東の平和と安定に対する脅威を軽減し、国内の米国人を守ることに尽力している」と述べた。トランプ次期大統領は12月16日、トルコがシリアで何が起こるかの「鍵を握る」と述べたが、シリア駐留米軍に関する計画は発表していない。
オクラホマ大学のシリア専門家ジョシュア・ランディス氏は、「クルド人は不利な立場にいる。ダマスカスが権力を固めれば、この地域に攻め込むだろう。米国は永遠にそこに留まることはできない」と語っている。
HTSの指導者シャラア氏は英国放送局BBCに対し、クルド人は「我々の国民の一部」であり「シリアを分割すべきではない」と語り、武器は完全に国家の手に委ねられるべきだと付け加えた。シャラア氏はトルコの主な懸念の1つであるシリア国内のクルド人戦闘員の存在を認め、「シリア領土がトルコや他の地域を脅かし不安定化させるなどとは認めない」と述べた。
クルド人当局者のケイト氏は、政権が「民主的なシリア、分権化されたシリア、あらゆる宗派、宗教、民族のシリア人全員を代表するシリア」を望んでいると述べ、これらをレッドラインと表現した。SDFは「来たるシリア軍の中核となる」と同氏は付け加えた。
SDF司令官のアブディ氏はロイター通信のインタビューで、両軍の衝突を避けるためにHTSとの連絡ルートが確立されていることを確認したが、アンカラはダマスカスとクルド人主導の政権の間に亀裂を生じさせようとしている、と述べた。同氏は、SDFがダマスカスの「新しい政治段階」に参加することについて、米国主導の連合を含む国際的関係者から強い支持を得ており、これを「絶好の機会」と呼んだ。また同氏は「我々とトルコおよび関連派閥間の完全停戦の後、我々はこの段階に参加する準備をしている」と述べている。
以上