その2:カタール・エネルギー大臣、怒りの発言
(原題) Qatar warns it will halt gas exports to Europe if fined under EU due diligence law
2024/12/23 Ahram Online
7月に発効したEUの企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)は、経営陣が人権や環境への悪影響に対処しなかった場合、企業の年間世界売上高の最大5%の罰金を科すことを認めている。
「欧州への供給で売上高の5%を失うなら、欧州への供給はしない」とカタールのアル・カビ・エネルギー大臣は日曜掲載のfinancial Timesのインタビューで語った。同大臣は、「はったりを言っているわけではない」と付け加えた。しかし同大臣は、罰金の対象が世界総売上高ではなく欧州で生み出された収入だけであれば妥協の余地があるかもしれないと示唆している。
「だが、総収入にまで踏み込みたいなら、それはまったく意味をなさない」と同大臣は述べた。アル・カビ大臣は、液化天然ガス(LNG)供給契約を破棄するつもりはないが、多額の罰金を科せられた場合は法的手段を検討すると付け加えた。「罰金を科せられることは受け入れない。その時は欧州へのガス供給を停止する」と同大臣は語っている。
欧州諸国がロシア産ガスからの脱却を模索する中、カタールはドイツ、フランス、イタリア、オランダにLNGを供給する長期契約を締結した。グローバル法律事務所リード・スミスのエネルギー・天然資源グループのパートナー、ジェームズ・ウィルン氏は、「カタールは世界最大のLNG輸出国の一つだ。ロシアからの天然ガス供給が減少したため、EUはカタールのLNGへの依存度を増している。カタールのLNG輸出が中断すれば、特に需要がピークとなる冬季に供給制約が悪化する可能性が高い」と述べている。
アラブ首長国連邦のザ・ナショナル紙は「カタールの対応は、他のエネルギー輸出国がEUのCSDDDに抵抗する前例となる可能性がある。そうなれば、EUは持続可能性の目標と経済およびエネルギー安全保障上の配慮とのバランスを取るよう圧力を受けることになるだろう」と報じた。
CSDDDはEU内外から批判を浴びている。各国は2026年までに新規則を国内法に導入する必要がある。1年後の2027年には、規則が企業に適用され始め、発効後3年から5年の間に段階的に導入される。この指令は、企業の慣行を2050年までにネットゼロ排出量を達成するという目標に合わせるというEUのより広範な戦略の一部である。
欧州委員会は、この指令は国際法に合致しており、この措置の下で何が悪影響を構成するかは世界的に認められた基準によって決定されると強調した。委員会の声明によると、「この指令の下でのデューデリジェンスはリスクに基づくものである。企業に要求しているのは、特定された悪影響に見合った、合理的に利用可能な措置を講じることだけだ」と声明は付け加えている。
ブルームバーグが12月に報じたところによると、ドイツは、欧州連合最大の自国経済が景気後退に苦しむ中、この法律を2年間延期し、中小企業に報告義務を免除するよう求めている。「企業に不必要な負担をかけないように」変更が必要だと欧州委員会は付け加えた。
以上
(筆者追記)
上記ロシア及びカタールの警告とは別に、米国のトランプ次期大統領は、欧州にエネルギーの輸入促進を迫っている。次期大統領は国内向けには「掘って、掘って、掘りまくれ (Drill, baby, drill)!」とばかり天然ガスの生産増強を促す気配であり、化石燃料による地球温暖化問題には無関心を装っている。欧州としては一時的措置として同盟国の米国から天然ガスを輸入することでエネルギー危機を回避できる。しかしこれは欧州が米国に随従することにつながり、欧州のプライドは傷付くことになろう。欧州にとっては難しい選択を迫られる状況である。