石油と中東

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国際石油企業5社、アラムコ及びENEOS/出光興産の2022年4-6月期業績を比較する(3)

2022-09-07 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0566IocAramcoEneosIdemitsu2022-2ndQtr.pdf

 

(ENEOS売上高はアラムコの6分の1、ExxonMobilの4分の1!)

2. 売上高[1] 

(1)当期売上高 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-22.pdf 参照)

2022年4-6月期のENEOSの売上高は3兆5,551億円、出光は2兆2,047億円であった。これをENEOSは1ドル=130円、出光は1ドル=129.6円で換算すると(換算レートは各社の決算説明資料から引用、以下同様)、ENEOSは273億ドル、出光は170億ドルとなる。

 

これに対してアラムコの同期間の売上高は1,729億ドルであり、またIOC5社のそれは最も多いExxonMobilが1,157億ドル、ついでShell 1,001億ドル、TotalEnergies 748億ドル、bp 695億ドル、Chevron 654億ドルである。ENEOSはアラムコの6分の1、ExxonMobilの4分の1である。出光は比較した中では売上高が最も少なく、アラムコの1割、ExxonMobilの7分の1である。

 

(原油価格との相関関係が濃いアラムコとIOC各社、伸びが小さい日系2社!)

(2)2020年7-9月期以降今期までの推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-32.pdf 参照)

 2020年7-9月期から今期(2022年4-6月期)までの売上高の推移を見ると、アラムコがIOC5社及び日系2社を大きく引き離しトップを続けている。2020年7-9月期の売上高は610億ドルのアラムコを筆頭に、ExxonMobil、Shell及びbpが400億ドル台で続き、TotalEnergies331億ドル、Chevronは5社で最も少ない240億ドルであった。これに対して日系2社はENEOS 329億ドル、出光97億ドルであり、ENEOSの売上高はChevronを上回りTotalEnergiesと肩を並べる規模であった。

 

続く2020年10-12月期はbp、ENEOSが前期を下回ったほか他社も横ばい状態であった。しかし2021年に入るとアラムコ及びIOC5社の売上は急伸し、例えばExxonMobilの2021年以降の四半期毎の売上高は591億ドル→677億ドル→738億ドル→850億ドル→905億ドル→1,157億ドルにアップ、2年間で2.5倍に膨張している。他のIOC各社もほぼ同様の傾向で、Chevron2.7倍、Shell,TotalEnergies2.3倍など軒並み2倍を超えている(bpのみが1.6倍)。

 

これらIOCを上回る伸びを示しているのがアラムコであり、2020年7-9月期に610億ドルであった売り上げは、1年後に1千億ドルを突破、その後も右肩上がりで売り上げを伸ばし今年4-6月期は2年前の2.8倍1,729億ドルに達している。

 

これに対してENEOSは過去2年間で2020年7-9月期の売上が最大であり、今期は漸く8割強に回復した状況である。出光の今期売上高は170億ドルであり、2年前の1.8倍に達したが、アラムコ或いはIOC各社の伸びを下回っている。

 

売上高の変動に大きな影響を与えるのが原油価格であるが、代表的な油種であるBrent原油の各四半期の平均価格を見ると以下の通りであった(価格はドル/バレル)。

 

42.94ドル(‘20年7-9月期)→44.16ドル(‘20年10-12月期、前期比+2.8%)→61.12ドル(‘21年1-3月期、前期比+38.4%)→68.97ドル(‘21年4-6月期、前期比+12.8%)→73.51ドル(‘21年7-9月期、前期比+6.6%)→79.76ドル(‘21年10-12月期、前期比+8.5%)→102.23ドル(‘22年1-3月期、前期比+28.2%)→113.93ドル(‘22年4-6月期、前期比+11.4%)

 

これに対してExxonMobilの対前期比増収比率は、0.7%(‘20年10-12月期)→27.1%(‘21年1-3月期)→14.5%(‘21年4-6月期)→8.9%(‘21年7-9月期、前期比)→15.2%(‘21年10-12月期)→6.5%(‘22年1-3月期)→27.8%(‘22年4-6月期)と全期間を通じて売上高と原油価格との相関関係が極めて高い。この傾向はアラムコにも見られ、IOCとアラムコ5社は原油価格の値上がりに比例して売り上げもアップしたと考えられる。一方、日系2社にはそのような傾向が薄い。2社は原油のほぼ全量を外部から調達し、製品については規制当局の指導を受け価格を自由に決定できないため売上高と原油価格の相関関係は薄いようである。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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[1]  「売上高」は各社資料から下記項目を抽出した。

ExxonMobil:Total revenues and other income          

Shell:Total revenue and other income         

bp:Total revenue and other income

TotalEnergies:Sales         

Chevron:Sales and other operating revenues

ENEOS:売上高

出光:売上高

 


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