II. 五社の業績比較
ここでは五社の当期利益、売上高、売上高利益率、キャッシュ・フロー及び設備投資を比較する。
(王者の貫禄ExxonMobil、見劣りするbpとTotalEnergies!)
1. 純利益 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-52.pdf 参照)
7-9月期で利益が最も多かったのはExxonMobilの86億ドルであった。これに続くのはChevron及びShellであり、両社の利益はそれぞれ45億ドル及び43億ドルとExxonMobilのほぼ2分の1にとどまっている。TotalEnergiesとbpの利益はさらに少なく、TotalEnergiesはExxonMobilの4分の1の23億ドルであり、bpはExxonMobilの40分の1の2億ドルに過ぎない。
BpとTotalEnergiesはそれぞれ英国とフランスが本社のヨーロッパ系であり、これに対してExxonMobilとChevronは米国系の企業である。ヨーロッパ系と米国系企業の今期業績は明暗を分けたが、その理由の一つとして過去数期にわたるエネルギー資源調達方針の違い―すなわち従来の延長線上として石油を引き続き資源調達の主流に据えるか、それとも太陽光、風力など再生可能エネルギーへのシフトを促進するかという方針の違い―を指摘することができよう。
即ちヨーロッパ系のbp及びTotalEnergiesは地球温暖化防止の掛け声に引きずられ、石油から天然ガス、さらには太陽光、風力などの自然エネルギーへの転換に積極的に取り組んだ。しかしウクライナ戦争の結果ロシアからの天然ガス輸入がストップし、さらに自然エネルギーの開発が高コストを構造を招き、収益の悪化につながった。これに対しExxonMobil及びChevronの米系企業は国内のシェールブームにより大量で安価な天然ガス及び石油を手にした(米国は今や世界一の石油/天然ガスの生産国である)。
地球温暖化防止という長期的視点に立てば、エネルギーが石油から天然ガス、さらには非化石エネルギーに移行する必要があることは言を俟たないが、当面のトレンドとしてはエネルギー確保の安定性あるいは経済性の点で石油の時代が続く見込みである。bp或いはTotalEnergiesはこのトレンドを読み違えた結果、収益性の面でExxonMobil或いはChevronに遅れを取ったと言えそうである。
(断トツのExxonMobil売上高、bp、Chevronの2倍!)
2.売上高 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-51.pdf 参照)
2024年7-9月期のBrent原油平均価格は80ドル/バレルであり、前年同期(87ドル) 、前期(85ドル)より下落している。この結果ほぼ全社の売上高は減少した。
5社の中で売上高が最も高かったのはExxonMobil(900億ドル)であり、これに次ぐのShell (711億ドル)、TotalEnergies(520億ドル)である。Chevron及びbpの売上はそれぞれ489億ドル及び483億ドルであった。
ExxonMobilの売上高を100とした場合、Shell 79、TotalEnergies 58、Chevron及びbpは 54である。前項で触れた通り利益面ではExxonMobil、Chevron、TotalEnergies、Shell、bpの順であり、ExxonMobilは売上及び利益の両面でトップ企業の貫録を示している。
(ExxonMobil、Chevronの米系2社の利益率は9%台!)
3.売上高利益率 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-53.pdf 参照)
IOC5社の今期売上高利益率はExxonMobilが9.6%と最も高い。これに次ぐのはChevron 9.2%、Shell 6.0%、TotalEnergies 4.4%であり、bpは0.4%にとどまっている。
前期(4-6月期)と比較すると、ExxonMobil及びChevronはほぼ変わらず、Shellは4.7%からアップ、TotalEnergiesは7%からダウンしている。Bpは前期▲0.3%のマイナスを脱し、プラスに転換しているが、他の4社に比べ利益率は以前低いままである。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp
ここでは五社の当期利益、売上高、売上高利益率、キャッシュ・フロー及び設備投資を比較する。
(王者の貫禄ExxonMobil、見劣りするbpとTotalEnergies!)
1. 純利益 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-52.pdf 参照)
7-9月期で利益が最も多かったのはExxonMobilの86億ドルであった。これに続くのはChevron及びShellであり、両社の利益はそれぞれ45億ドル及び43億ドルとExxonMobilのほぼ2分の1にとどまっている。TotalEnergiesとbpの利益はさらに少なく、TotalEnergiesはExxonMobilの4分の1の23億ドルであり、bpはExxonMobilの40分の1の2億ドルに過ぎない。
BpとTotalEnergiesはそれぞれ英国とフランスが本社のヨーロッパ系であり、これに対してExxonMobilとChevronは米国系の企業である。ヨーロッパ系と米国系企業の今期業績は明暗を分けたが、その理由の一つとして過去数期にわたるエネルギー資源調達方針の違い―すなわち従来の延長線上として石油を引き続き資源調達の主流に据えるか、それとも太陽光、風力など再生可能エネルギーへのシフトを促進するかという方針の違い―を指摘することができよう。
即ちヨーロッパ系のbp及びTotalEnergiesは地球温暖化防止の掛け声に引きずられ、石油から天然ガス、さらには太陽光、風力などの自然エネルギーへの転換に積極的に取り組んだ。しかしウクライナ戦争の結果ロシアからの天然ガス輸入がストップし、さらに自然エネルギーの開発が高コストを構造を招き、収益の悪化につながった。これに対しExxonMobil及びChevronの米系企業は国内のシェールブームにより大量で安価な天然ガス及び石油を手にした(米国は今や世界一の石油/天然ガスの生産国である)。
地球温暖化防止という長期的視点に立てば、エネルギーが石油から天然ガス、さらには非化石エネルギーに移行する必要があることは言を俟たないが、当面のトレンドとしてはエネルギー確保の安定性あるいは経済性の点で石油の時代が続く見込みである。bp或いはTotalEnergiesはこのトレンドを読み違えた結果、収益性の面でExxonMobil或いはChevronに遅れを取ったと言えそうである。
(断トツのExxonMobil売上高、bp、Chevronの2倍!)
2.売上高 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-51.pdf 参照)
2024年7-9月期のBrent原油平均価格は80ドル/バレルであり、前年同期(87ドル) 、前期(85ドル)より下落している。この結果ほぼ全社の売上高は減少した。
5社の中で売上高が最も高かったのはExxonMobil(900億ドル)であり、これに次ぐのShell (711億ドル)、TotalEnergies(520億ドル)である。Chevron及びbpの売上はそれぞれ489億ドル及び483億ドルであった。
ExxonMobilの売上高を100とした場合、Shell 79、TotalEnergies 58、Chevron及びbpは 54である。前項で触れた通り利益面ではExxonMobil、Chevron、TotalEnergies、Shell、bpの順であり、ExxonMobilは売上及び利益の両面でトップ企業の貫録を示している。
(ExxonMobil、Chevronの米系2社の利益率は9%台!)
3.売上高利益率 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-53.pdf 参照)
IOC5社の今期売上高利益率はExxonMobilが9.6%と最も高い。これに次ぐのはChevron 9.2%、Shell 6.0%、TotalEnergies 4.4%であり、bpは0.4%にとどまっている。
前期(4-6月期)と比較すると、ExxonMobil及びChevronはほぼ変わらず、Shellは4.7%からアップ、TotalEnergiesは7%からダウンしている。Bpは前期▲0.3%のマイナスを脱し、プラスに転換しているが、他の4社に比べ利益率は以前低いままである。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます