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http://mylibrary.maeda1.jp/0579OilSupplyByOpecPlusJune2023.pdf
2.目標生産量と実生産量の乖離
目標生産量に対し実際の生産量がどうなっているか、ここではサウジアラビア、ロシア等主要な産油国についてOPEC月次レポートにより検証してみる。なおロシアは2021年末まで同国エネルギー省が公式統計を発表していたが昨年1月以降ストップしているため、ここではOPECレポート月報に明記された今年4月までの生産量を取り上げた。
(1)OPEC10カ国の合計生産量(図2-D-2-50参照)
OPECプラスの協調減産体制に組み込まれているOPEC10カ国の昨年10月以降の生産目標と実生産量を比較すると、まず昨年10月は生産目標26,689千B/Dに対し実生産量は25,154千B/Dであり、差引▲1,535千B/Dの目標未達であった。
翌11月からOPECプラスは▲2,000千B/Dの協調減産を実施、OPEC10カ国の生産目標量も25,416千B/Dに引き下げられたが、同月の実生産量は24,487千B/Dであり▲929千B/Dの乖離が生じている。
4月にサウジアラビアなどOPEC6カ国は非OPEC2か国とともに合計▲1,157千B/Dの自主減産を公表している。しかしOPEC10か国の5月の生産量は目標24,377千B/Dに対し実際には23,482千B/Dにとどまっており、なお▲900B/D近く目標未達である。
このようにOPEC10カ国で目標未達が常態化しているのは次に述べるようにアンゴラ及びナイジェリアの生産量が目標を大きく下回るレベルにとどまっているためである。
(2)目標を大きく下回るナイジェリア及びアンゴラの生産量(図2-D-2-52 & 2-D-2-56参照)
昨年10月のナイジェリア及びアンゴラの生産量は1,066千B/D及び1,054千B/Dであった。同月の生産目標はそれぞれ1,826千B/D及び1,525千B/Dであり、目標未達量はナイジェリア▲760千B/D、アンゴラ▲471千B/Dに達していた。ナイジェリアの生産量は目標の6割、アンゴラは7割にとどまっていたのであり、この2か国がOPEC全体の足を引っ張っていたことになる。
ナイジェリアの生産量は今年に入り2月、3月には130万B/D台後半まで回復したが、その後再び低迷、5月は1,269千B/Dに落ち込んでいる。またアンゴラの生産量は100万B/D前後に停滞したままであり、これら2カ国が目標未達の主因である。
両国の生産低迷はロシアやイランのような欧米の経済制裁が原因ではなく、国内の部族対立またはイスラム過激派による石油施設の破壊、或いは石油パイプラインからの原油窃盗密売などにより原油の正常な生産輸出が妨げられると言う国内事情が原因である。事態が鎮静化しないため今後とも安定的な石油操業は期待できそうにない。
このため、6月のOPECプラス会合では来年1月以降の目標生産量をナイジェリアは1,742千B/Dから1,380千B/Dに、アンゴラは1,455千B/Dから1,280千B/Dに引き下げられている。伝えられるところでは会合で両国は目標の下方修正に強く抵抗したと言われるが、現状を見る限り引き下げはやむを得ないところであろう。
(続く)
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