4.減産反対派の造反及びOPECプラス外部環境の変化
OPECプラスの2大産油国サウジアラビア及びロシアは1年足らずの間に3回の減産を主導した。これに対して他の加盟国が唯々諾々として従った訳ではない。最初の減産(2022年11月)ではOPECプラスの全対象国が足並みを揃えたものの、2回目(2023年4月)及び3回目(同年6月)の減産は一部加盟国の自主減産にとどまったことがそのことを証明している。
因みに2回目及び3回目の自主減産に同調しなかった国はOPEC加盟国ではアンゴラ、コンゴ、エクアトール・ギニア、ナイジェリアの5か国であり、非OPECではアゼルバイジャン、バハレーン、ブルネイ、マレーシア、メキシコ、スーダン及び南スーダンの7カ国である。
一見してわかる通りOPEC加盟の5か国はいずれもサブサハラ(アフリカサハラ砂漠以南)の国々である。これら5カ国が閣僚級会合で協調減産や自主減産に反対し続けたことはメディアでもたびたび報道され、OPECの不協和音が高まっていることを推測させた。それを象徴する出来事がアンゴラのOPEC脱退であった。
OPEC内部では更に別の造反の動きが表面化した。UAEによる増産要求である。近年、世界では石油のような化石エネルギーから太陽光、風力などの自然再生エネルギー或いは原子力への移行が叫ばれてきた。しかし最近では経済性或いは効率性などの面から石油の時代がまだしばらく続くとの考えが支配的になっている。その結果、石油の新規開発または増産投資に目が向けられ始めた。石油の増産余力を持っているUAEはOPECプラス諸国に自国の増産要求を突き付けたのである。
UAEが増産要求するもう一つの隠れた理由は、協調減産の枠外にあるイラン或いはベネズエラの原油生産が増産傾向にあることにもありそうだ。さらに米国がシェールオイル・ガスを含めた世界一のエネルギー生産国としての覇権を唱えていることもUAEを刺激しているであろう。UAEは今回(6月)の会合で来年1月から9月までの間30万B/D増産することが認められた。一方、ロシアは欧米諸国の禁輸制裁に対して中国やインドなどへの抜け道輸出でウクライナ戦争の戦費獲得に余念がない。OPECプラスの盟主とは言えロシアがいつサウジアラビアと袂を分かつかわからない。
今やサウジアラビアはOPECプラスの中で孤立状態にある。全体の減産量586万B/Dのうち3分の1に相当する203万B/Dの減産を背負い込み貧乏くじを引いているのが現在のサウジアラビアの姿である[1]。同国のやせ我慢がいつまで続くのか状況を注視する必要がある。
以上
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[1] 図「サウジアラビア原油生産量の推移(2023.1-2024.5月)」参照。
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