6月2日、OPECとその同調国(いわゆるOPECプラス)の閣僚級会合(略称ONOMM)が開催され、2022年11月以降、3段階にわたり実施された減産を年内まで延長すると共に、2025年に徐々に減産を緩和し各国が新しい生産水準に移行することが決められた。
本稿では(1)過去3度の減産量を略述し、(2)今回のONOMMで決定された来年1-12月の生産水準とOPEC6月月次レポートによる今年5月の各国の生産量を比較し、今後のOPEC+の増産の動きを検証する。さらに(3)減産体制を見直す要因となった原油価格の動向、及び(4)サウジアラビア(及びロシア)が主導する減産体制見直しに対する増産推進派の造反などOPECプラスを取り巻く環境の変化について分析を試みる。
なお従来OPECの構成国は13カ国であったが、イラン、リビア及びベネズエラ3カ国は協調減産に加わっておらず、またアフリカの有力産油国アンゴラは自国の割り当て生産量を不満として昨年OPECを脱退している。従ってOPECプラスの協調減産体制は以下の各国によって成り立っている。
OPEC9カ国:サウジアラビア、イラク、UAE、クウェイト、ナイジェリア、アルジェリア、コンゴ、エクアトール・ギニア、ガボン
非OPEC10カ国:ロシア、カザフスタン、メキシコ、オマーン、アゼルバイジャン、マレーシア、ブルネイ、バハレーン、スーダン、南スーダン
1.2022年10月~2023年6月協調減産の推移
現在のOPECプラス協調減産は2022年10月のONOMMで決定された。同年8月の生産量を基準にOPEC10カ国(注、その後脱退したアンゴラを含む)と非OPEC10カ国が11月以降2023年12月まで合計200万B/Dを減産することとなった。この時、サウジアラビアとロシア両国は共に526千B/Dの減産を受け入れ全体の過半を負担した[1]。
2023年に入りロシアが50万B/Dの自主減産を打ち出した。4月の合同閣僚級モニタリング委員会(JMMC)でサウジアラビアなど8カ国もこれに追随、これら9カ国は5月以降年末まで166万B/Dの自主減産を行うことを決定した。サウジアラビア及びロシアの減産量は共に50万B/Dであり、2カ国で全体の60%を負担している[2]。
しかし2度の減産でも石油需要は伸びず価格も低迷したため、6月にはサウジアラビア主導のもと8カ国が3度目の自主減産を実施した。全体の減産幅は220万B/Dであり、このうちサウジアラビアは100万B/D、ロシアが50万B/Dを負担し、全体の7割弱を占めている[3]。
これら3度にわたる減産の合計量は586万B/Dに達する。このうちサウジアラビアは2,026千B/Dであり全体の3分の1を占め、ロシアは1,526千B/Dで同じく4分の1を占めている。両国を合わせると実に全体の60%をサウジアラビアとロシアが負担しているのである。因みにOPEC6月々次レポートによればサウジアラビアとロシアの生産量が22カ国の合計生産量に占める割合は44%である(詳しくは次項参照)。このことから現在のOPEC+減産体制はサウジアラビアとロシア、特にサウジアラビア一国に強く依存していることがわかる。
(続く)
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[1] OPECプレスリリース:
https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/7021.htm
[2] OPECプレスリリース:
https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/7120.htm
[3] OPECプレスリリース:
https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/7160.htm
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