1.純利益 (続き)
(コロナ禍からの回復目覚ましいメジャー、高水準のアラムコ、低位安定のENEOS、出光!)
(2)2019年(度)~23年(度)年間純利益の推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-11.pdf 参照)
2019年(度)から2023年(度)までの5年間の年間純利益の推移を見ると、2019年(度)のENEOSは▲17億ドル(▲1,879億円、109円/ドル)、出光は▲2億ドル(▲229億円、108.7円/ドル)の欠損であった。この時メジャーはShellの158億ドルを筆頭に、ExxonMobil 143億ドル、TotalEnergies 113億ドル、bp 40億ドル、Chevron 29億ドルと5社いずれも黒字であった。これら純民間企業7社に対してアラムコの同年の利益は882億ドルであり圧倒的な収益力を示している。
アラムコと7社との格差はその後も縮小していない。しかし2020年(度)は新型コロナ禍による世界的な景気後退の影響を受けアラムコの利益は前年の半分近い490億ドルに急落している。メジャー各社の場合は全社揃って欠損となり、特にExxonMobil、Shell及びbp3社は200億ドルを超える大幅な赤字となっている。このような中で邦系2社はむしろ前年度の赤字を脱却、ENEOSは1,140億円、出光は349億円の利益を計上している。これはBrent原油の年間平均価格が64ドル/バレルから42ドルに急落したことに加え、為替レートが円高(109円/ドル→106円/ドル)になった効果が大きい(2019~2023年の為替変動については次節売上高で触れる)。
2020年から2022年にかけては景気回復による石油・ガスの需要増及びそれに付随した油価の上昇によりアラムコ及びメジャーズ5社の収益はほぼ各社で増加、2023年の利益はやや減少したものの、アラムコは1,200億ドルの利益を確保、メジャーズ各社もExxonMobilの360億ドルを筆頭にその他4社も150乃至200億ドル強の利益を計上している。
これに対してENEOS及び出光の邦系2社は2020年以降共に利益を計上し続けており、メジャーズと極めて対照的な結果を示している。これは日本国内の石油需要が増加したからではなく、原油価格と為替の変動による日本の石油市場価格の急激な上昇を防ぐため、政府が価格調整金と言う名目で価格操作を行ってきたためである。このような人為的な政策のおかげで日本の石油企業は業績の急激な変動を避けることができた一方、アラムコ或いはメジャーズに比べ極めて低いレベルの利益水準にとどまっているのである。
(続く)
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