石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

五大国際石油企業2014年度業績速報シリーズ(12)7カ年設備投資比較

2015-03-16 | 海外・国内石油企業の業績

 

(注)本レポート1~13回は「マイライブラリー(前田高行論考集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0337OilMajors2014.pdf

 

 

III. 7カ年(2008-2014年)業績推移の比較(続き)
4.設備投資
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-09.pdf参照)
 2008年の設備投資額はShellが384億ドルで最も多く、BP(307億ドル)、ExxonMobil(261億ドル)、Chevron(228億ドル)と続きTotalは163億ドルで最も少なかった。翌2009年にはShellとBPの2社は投資額が大幅に減少しているが、Shellは引き続き6社の中では最も多い317億ドルでであった。2009年以降は各社おしなべて設備投資額が増加する傾向にあり、2013年には5社とも2008年の投資額を上回っている。2008年と2013年を比較した場合、特にChevronは1.8倍、ExxonMobil、Totalは1.6倍など大きく膨れ上がり、Shell及びBPも1.2倍である。

  しかし2014年は各社とも設備投資を抑えている。5社の投資額は最も多いChevronが403億ドル、ExxonMobilおよびShellが380億ドル前後、そしてTotalとBPが240億ドル前後である。次項(石油・ガス生産量の推移)に見るごとく、BPのように生産量が大幅に減少しているケースを含め各社とも減少に歯止めがかからず、投資に見合った埋蔵量の積み増しや生産量の増加が得られていない。昨年後半から石油価格の暴落により売上および利益が急落したこともあり各社とも設備投資を削減する方向にある。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

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今週の各社プレスリリースから(3/8-3/14)

2015-03-14 | 今週のエネルギー関連新聞発表

3/9 BP    BP makes second significant gas discovery in Egypt’s East Mediterranean Sea http://www.bp.com/en/global/corporate/press/press-releases/bp-makes-second-significant-gas-discovery-in-egypts-east-mediter.html
3/11 国際石油開発帝石    幹部社員の人事異動について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2015/20150311.pdf
3/12 経済産業省    LNG産消会議2015を開催します~LNG市場の発展に向けた国際プラットフォーム~ http://www.meti.go.jp/press/2014/03/20150312002/20150312002.html
3/13 JX日鉱日石開発    英国北海22/16、17b鉱区における原油の発見について http://www.hd.jx-group.co.jp/newsrelease/2014/20150313_01_1050061.html

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サルマン新体制によるサウジアラビアの今後を占うー石油、外交政策および第三世代(2)

2015-03-13 | OPECの動向

 

(注)本レポート1~4は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0338SaudiRoyalFamily2015.pdf

 

 

2.石油政策:ナイミ石油大臣はいつ誰と交代するのか?
 サウジアラビアでは国王が首相を兼務する(統治基本法56条)。1月29日、サルマン国王兼首相は彼にとって最初の内閣を組閣した。第一副首相にムクリン皇太子、第二副首相兼内相にムハンマド副皇太子を任命し、外相、国防相などの重要閣僚ポストおよび財務相、商工業相などの主要経済閣僚は留任した。重要閣僚ポストはサウド家王族の指定席であり、一方重要経済閣僚ポストは代々ベテランのテクノクラートの指定席である。石油鉱物資源相として留任したナイミもその一人である。

 ナイミ石油鉱物資源相(以下石油大臣と略す)は世界のエネルギー業界では誰一人知らぬ人の無い人物であり、今やベテランとかテクノクラートといった形容詞を超越した存在であると言えよう。彼が最初に石油大臣に就任したのは1995年であり、今年で20年目を迎える。実はサウジアラビアに石油鉱物資源省ができて以来、石油大臣の数はわずか4名にすぎない。最初の石油大臣はタリキ(1960-1962年)、二人目はOPECを率いて世界を震撼させたヤマニで24年間にわたって(1962-1986年)石油大臣を務めた。その後ナーゼル大臣を経て1995年にナイミが第4代の石油大臣となり現在に至っている。ナイミは1935年生まれ、今年で80歳になる。

 健康に問題は無いようであるが年齢的に見て石油大臣の激職は大きな負担であり早晩身を引くことは間違いないであろう。今年6月のOPEC総会がその花道になるのでは、という観測も流れている。彼の辞任説は今に始まったことではなく、2007年の内閣改造時にもメディアに交代の噂が広がった 。彼が最初に石油大臣に任命された1995年は病弱のファハド国王にかわりアブダッラー皇太子が摂政となり国政の実権を掌握した年でもある。以来ナイミはアブダッラーに忠誠を誓い、またそれに恥じない活躍を続けてきた。アブダッラーとナイミの信頼関係は極めて強固であった。

 しかし大臣就任以来20年が経過、かつての石油鉱物資源省の若手も中堅からベテランの域に達し、そろそろ世代交代の時代に入った。その先頭に立っているのがサルマン国王の息子で今回副大臣に任命されたアブドルアジズである。アブドルアジズはサルマン国王の4男で1960年生まれ 。20代後半には石油鉱物資源省次官補となり、アラビア石油の利権更新問題ではサウジ側の窓口として活躍、その後OPEC本部勤務を経て最近では新エネルギー開発にも携わっている。今年55歳になる彼は家柄、年齢、経験ともに申し分ない人物であり、ナイミ石油大臣の後任として下馬評が高いのは当然である。筆者もアブドルアジズ副大臣がかなり近い将来(サルマン国王の目が黒いうちに)、ナイミ石油大臣の後任に指名されるものと確信している。

 但しそのことがサウジアラビアにとって本当にベストな選択であるかという点については若干の疑問を禁じ得ない。上記の歴代石油大臣を見ていただきたい。いずれもベテランのテクノクラートであって王族ではない。実はクウェイト、UAEなど他のGCC産油国も石油大臣はいずれもテクノクラートである。産油国において国家財政の根幹を成す石油大臣のポストは極めて重要であり、またOPECメンバー国の担当大臣として国際的な地位が高い。名誉と地位を求める王族にとって石油大臣は極めて魅力的なポストのはずである。しかるに王族ではなくテクノクラートが任命されるのは何故であろうか?

 そこには石油大臣ポストが抱える落とし穴があるからである。石油は世界のエネルギーの中枢を占めており、産油国(その多くは開発途上国である)は先進国を中心とする消費国と常に利害調整を迫られ、他方市場では需給バランスによる大幅な価格変動のリスクに対処しなければならない。昨年から今年にかけての原油価格の大幅な下落に対してサウジアラビアは市場シェアを重視し、米国のシェールオイルとどちらが先に倒れるかと言われる苛烈なチキンレースを始めた。その結果同国の歳入は激減している。ナイミ石油大臣の石油政策(それはとりもなおさずアブダッラー前国王の政策でもある)が問われている。ナイミがその責任を取らされてもおかしくない状況なのである。つまり石油大臣ポストは極めて不安定であると同時に、問題が起こった(あるいは最高権力者が問題ありと判断した)時、首を挿げ替えることのできるポストとみなされている。またそれによって最高権力者自身も直接の責任追及を免れることができると言える。

 ところがアブドルアジズが石油大臣に就任すれば石油政策にミスがあっても国王の息子を首にすることはできないであろう。せいぜい副大臣または次官クラスのテクノクラートをスケープゴートにするのが関の山である。責任があいまいになることは間違いない。ちなみに同じような例をサルマン自身に見ることができる。彼のリヤド州知事時代の1990年代半ばにリヤドで過激派テロが頻発したことがあった。欧米諸国であれば知事が引責辞任するケースであるが、彼は兄のナイフ内相の助けで知事の職を保持したのはその一例である。

 石油がらみで今回もう一つ不可解な人事があった。アラムコの副社長二人がほぼ同時に辞めたことである。一人はKhalid Al-Buainain技術サービス担当上級副社長であり、彼は1980年に入社、住友化学工業との合弁事業PetroRabigh会長も兼務していたが、3月初めにアラムコを離れた 。もう一人はSamir Al-Tabibエンジニアリング担当上級副社長である。彼の場合は何と国防省のプロジェクトマネジメント責任者(director)に転身している 。国防大臣のムハンマドはサルマン国王の7男でアブドルアジズ副大臣の異母弟である。ムハンマドがどのような目的で異母兄の石油省から副社長を引き抜いたのかその意味するところは甚だ興味深いが、部外者が理解するのは極めて難しい。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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五大国際石油企業2014年度業績速報シリーズ(11)7カ年利益・売上高利益率比較

2015-03-13 | 海外・国内石油企業の業績

 

(注)本レポート1~13回は「マイライブラリー(前田高行論考集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0337OilMajors2014.pdf

 

 

III. 7カ年(2008-2014年)業績推移の比較(続き)
2.利益
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-07.pdf 参照)
 2008年から2014年までの5社の利益の推移を見ると、2008年はExxonMobilが452億ドルの利益を計上、Shell(263億ドル)、Chevron(239億ドル)、BP(212億ドル)、Total(156億ドル)にくらべTotalの3倍、BPの2倍等、他社を寄せ付けない圧倒的な収益力を誇った。
 
 翌年の2009年にはリーマン・ショックと油価の急落によりExxonMobilの利益は前年比で半減するなど各社とも利益が100億ドル台に急減、5社間の利益格差は一気に縮まった。2010年から2011年にかけては5社とも利益が急回復し、ExxonMobilは400億ドル台の利益を計上し、その他の4社は2008年を超える利益であった。

しかし2012年以降は各社によって利益水準はまちまちとなっている。ちなみに2012年はExxonMobilだけが前年を上回る利益を計上したが、その他の4社の利益はいずれも前年を下回った。そして2013年にはExxonMobil、ChevronおよびShellの利益が減少する中で、Totalは横ばい、BPは大きく回復してExxonMobilに次ぐ235億ドルの利益を計上している。

2014年は5社とも利益は前年を下回り、特にBPは大幅に悪化している。BPの場合、過去7年間の利益は2008年の212億ドル以降、166億ドル(09年)→マイナス37億ドル(10年)→257億ドル(11年)→113億ドル(12年)→235億ドル(13年)→38億ドル(14年)と揺れ幅が大きく業績が不安定であることを示している。

3.売上高利益率
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-08.pdf参照)
 過去7年間を通じて売上高利益率が高いのはExxonMobilとChevronである。ExxonMobilは9.5%(08年)→6.2%(09年)→7.9%(10年)→8.4%(11年)→9.3%(12年)→7.4%(13年)→7.9%(14年)と 2009年には落ち込んだものの7~9%前後をコンスタントに維持しており、またChevronも8.8%(08年)→6.1%(09年)→9.3%(10年)→10.6%(11年)→10.8%(12年)→9.4%(13年)→9.1%(14年)と時には10%を越えてExxonMobilを上回る利益率を示している。

 Shell、BP、Totalの利益率は2008年は6%弱でほぼ並んでいた。BPは2009年には6社中で最も高い利益率(6.9%)を示したが、翌年は一転して5社の中で唯一マイナスの利益率(-1.3%)を示し11年以降は6.8%(11年)→3.0%(12年)→6.3%(13年)→1.1%(14年)と不安定な状態である。Shell及びTotalは2011年以降利益率の低下に悩まされており、Shellの2013年の利益率は3.6%と5社の中で最も低く2014年も利益率は3.5%にとどまっている。

(続く)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(3月11日)

2015-03-11 | 今日のニュース

・サウジアラビア、2月の原油輸出量676万B/Dの高水準。アジア向けが58%

・OPEC、6月総会でも生産枠堅持の方針:クウェイト代表談

・アッティヤ・カタール元石油相:油価年末には60ドルに。70ドル回復には数年かかる

 

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五大国際石油企業2014年度業績速報シリーズ(10) 7カ年売上比較

2015-03-11 | 海外・国内石油企業の業績

 

(注)本レポート1~13回は「マイライブラリー(前田高行論考集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0337OilMajors2014.pdf

 

 

III. 7カ年(2008-2014年)業績推移の比較
 ここでは2008年から2014年までの過去8年間の5社の業績の推移を比較検討する。因みに2008年は年央にBrent原油の価格が史上最高の147ドル(バレル当たり)を記録、また年間平均価格も97ドルに達して石油5社が過去最高の業績を示した年である。

1.売上高
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-06.pdf 参照)
 2008年の売上高トップはExxonMobilの4,774億ドルでありShellが僅差の4,709億ドルの第2位であった。そして売上高第3位はBP(3,611億ドル)で、ChevronとTotalは2,730億ドル及び2,647億ドルであった。5社の順位は2008年から2012年までの5年間はExxonMobilがトップであったが、その後2013年および2014年はShellの売り上げがExxonMobilを上回っている。ただし両社の差は小さくBP、ChevronおよびTotalの3社とはかなりの差がある。7年間を通じてBPはExxonMobil、Shellの8割前後であり、Chevron、Total2社はトップ2社の5割強の水準で推移している。

 年毎に見ると2009年は各社とも前年比で大きく落ち込んでいる。これは2008年に原油価格が史上最高値となったが、同年9月にリーマン・ショックが発生、世界景気が一気に冷え込んだためである。2009年の原油平均価格は前年比で4割近く下落、販売量も落ち込んだため各社の売上高はExxonMobil35%減、Shell40%減、BP34%減など軒並み30%以上の大幅な減収となった。

 2010年以降は原油価格が持ち直し各社とも売り上げは回復、2011年には年間平均価格が100ドル(Brent)を超えたためExxonMobil、Shell、BPの3社は2008年をしのぐ売上高となり、Total、Chevronもほぼ元に戻っている。2012年から2013年にかけてはBP、Totalは横ばいで、その他3社は5~10%程度の減収となった。しかし2014年には全社ともに前年比7%前後の減収となっている。これは2014年後半から石油価格が急激に下落したことが大きな要因である。

2008年の売上高を100とした場合、2014年の各社の売上高はExxonMobil86、Shell92、BP98、Total89、Chevron78といずれも2008年の水準を下回っている。現在石油価格は2014年前半の半値以下となり価格回復の足取りも鈍いため2015年の各社売上高がさらに落ち込むことは避けられないであろう。

(続く)

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サルマン新体制によるサウジアラビアの今後を占うー石油、外交政策および第三世代(1)

2015-03-09 | OPECの動向

 

(注)本レポート1~4は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0338SaudiRoyalFamily2015.pdf

 

 

1.はじめに
 1月23日、アブダッラー前国王の死去に伴い第7代国王にサルマンが即位してから1カ月半が経過した。新国王は即位直後の演説で前国王の路線を踏襲すると語ったが、その後副皇太子指名、内閣改造、州知事の交代、第三世代王族の登用、そして各種の行政横断的協議体を廃止し二つの最高会議に簡素化するなど勅令を連発、急速に独自色を打ち出している。

 内閣改造ではサウド外相、ナイミ石油相など主要閣僚は留任しており確かに政策の継続性を印象付けてはいるが、その陰で4男の息子アブドルアジズを石油省副大臣に昇格させ、あるいは7男で国防相のムハンマドを最高会議のうちの一つの議長に任命した。一方でリヤドとマッカの州知事であったアブダッラー前国王の息子二人を解任するなどアブダッラー色を払拭する人事も行っている。

 サルマンのこれまでの政治姿勢に加えて上記の事実から透けて見えるのは、サルマン新国王の政治スタイルがコンセンサス(アラブ・ベドウィン風に言えば「マジュリス」)を重視したアブダッラー前国王のそれとは大きく異なると予想されることである。サルマンの政治スタイルは息子などの縁故者あるいは側近を加えた密室政治に変容するのではないかと言うのが筆者の見方である。

 現在のサウジアラビアはシリア・イラク国境にまたがるスンニ派過激派組織「イスラム国」の脅威に直面しており、また南の隣国イエメンでは同じスンニ派の過激テロ組織「アラビア半島のアル・カイダ」が「イスラム国」への対抗意識むき出しで活動を活発化させている。さらには国境のすぐ南に住むシーア派部族フーシー勢力が国家権力を掌握しイランの影響力の増大が懸念されている。サウジアラビアは東のイラン、北の「イスラム国」、南のイエメンの三方面に難題を抱え厳しい外交政策を強いられている。

 一方サウジアラビア経済の屋台骨である石油は一時100ドル/バレルを超えた価格が半値以下に下落、今年度は大幅な赤字予算となるなど深刻な歳入不足に直面している。昨年12月のOPEC総会で減産しなかったことが一方の原因であり、世界の需要が停滞する中で米国シェールオイルの増産の勢いが止まらないことが他方の原因である。サウジアラビアと新興勢力米国のシェールオイル産業が対抗する構図となり、どちらが先に音を上げるかまさに「チキンレース」の様相を呈している。

 そして内政面ではサウド家第三世代への権力継承という厄介な問題も抱えている。これまでアブドルアジズ初代国王の息子たちによって平穏に継承されてきた王位も現在のムクリン皇太子が最後である。故ナイフ内相の息子が副皇太子に指名され第三世代の中で一歩抜け出したことは間違いない。しかしその他の第三世代の王子たちが今後どのようにして権力中枢に姿を現すのか、あるいは逆に権力基盤から滑り落ちるのか、予測ははなはだ難しい。ファハド第五代国王以降、それぞれの時代の国王あるいは皇太子のもとで第三世代の息子たちが繰り広げてきた栄枯盛衰の例は枚挙にいとまがない。現在のサルマン体制といえどもいずれ訪れるポスト・サルマン時代にどうなるかはわからない。

 サルマン新国王の体制下でサウジアラビアは国内外の多くの局面で変化を余儀なくされる。本稿では(1)石油政策、(2)外交政策および(3)サウド家第三世代王族の消長の三点に絞ってサウジアラビアの今後を占ってみたい。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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今週の各社プレスリリースから(3/1-3/7)

2015-03-07 | 今週のエネルギー関連新聞発表

3/3 出光興産    人事異動に関するお知らせ http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2014/150303.pdf
3/3 コスモ石油/昭和シェル石油ほか    LPガス統合元売会社の新社名、人事、組織体制等について 新社名は「ジクシス株式会社」 http://www.cosmo-oil.co.jp/press/p_150303/index.html
3/3 石油連盟    SS過疎地対策協議会の設置について http://www.paj.gr.jp/paj_info/press/2015/03/03-000728.html

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五大国際石油企業2014年度業績速報シリーズ(9)石油・天然ガス生産量の比較

2015-03-06 | 海外・国内石油企業の業績

 

(注)本レポート1~13回は「マイライブラリー(前田高行論考集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0337OilMajors2014.pdf

 

 

II. 2014年の業績比較 (続き)
5. 石油及び天然ガス生産量
(1)石油生産量
 昨年の石油生産量が最も多かったのはExxonMobilの2,111千B/Dであり、5社の中で同社だけが2百万B/Dを超えている。ExxonMobilに次いで生産量が多いのはChevron(1,709千B/D)、第3位はShell(1,484千B/D)である。両社とExxonMobilを比べるとChevronはExxonMobilの8割、Shellは7割である。BP及びTotalはこれら3社よりかなり少なく、BPは1,106千B/D、Totalは1,034千B/Dの石油を生産しており、これはExxonMobilのほぼ半分である。

(2)天然ガス生産量
 天然ガスの生産量が最も多いのはExxonMobil(日量11,145百万立方フィート、以下mmcfd)であった。2位以下はShell(9,259mmcfd)、Total(6,063mmcfd)、BP(6,016mmcfd)、Chevron(5,167mmcfd)と続いている。、Chevronは5社中で最も少なく、ExxonMobilの半分弱にとどまっている。

(3)石油・天然ガス合計生産量(石油換算)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-05.pdf 参照)
 石油と天然ガスの合計生産量が最も多いのはExxonMobilであり石油換算で3,969千B/Dである。ExxonMobilに次いで合計生産量が二番目に多いのはShell(3,080千B/D)であり、以下Chevron(2,571千B/D)、Total(2,146千B/D)と続きBP(2,143千B/D)が最も少ない。ExxonMobilの生産量を100とした場合、他の4社はShell78、Chevron66、TotalとBPは54でありTotal及びBPはExxonMobilのほぼ半分となっている。
 
 各社の石油と天然ガスの比率を見ると、Chevronは石油66%、天然ガス34%であり5社の中では石油の比率が最も高い。その他4社の石油:天然ガスの比率はそれぞれ、ExxonMobil(石油53%:天然ガス47%)、BP(石油52%:天然ガス48%)、Total(石油48%:天然ガス52%)、Shell(石油48%:天然ガス52%)であり、Chevron、ExxonMobilおよびBPの3社は石油生産量が天然ガス生産量を上回っているのに対して、ShellとTotalは石油よりも天然ガスの生産量の方が多い。

(続く)

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国際石油企業5社の業績推移を図表にまとめました。

2015-03-05 | 海外・国内石油企業の業績

国際石油企業5社(ExxonMobil, Shell, BP, Total及びChevron)各社の決算報告資料から下記の図表を作成しましたのでご利用ください。

http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-Energy.html

(内容)

2014年:売上高、利益、売上高利益率、設備投資、原油生産高、ガス生産高、原油+ガス生産高(原油換算)

2008年~2014年業績推移:売上高、利益、売上高利益率、設備投資、原油生産高、ガス生産高、原油+ガス生産高(原油換算)

 

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