(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0422BpOilGas2017.pdf
2017.10.13
前田 高行
(2007年を底に急速に改善する米国のエネルギー自給率!)
(6)米国の石油・天然ガス自給率の超長期推移(1970~2016年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-G06.pdf 参照)
米国の石油・天然ガスの需給ギャップが近年急速に改善しつつあることについては既に石油篇、天然ガス篇及び前項でも触れたが、本項では改めて1970年から2016年までの50年間近くにわたる石油と天然ガス並びに両者を合わせた自給率の推移を検証する。
まず石油については1970年は生産量1,130万B/Dに対し消費量は1,471万B/Dであり自給率は77%であった。つまり米国は必要な石油の4分の3を自国産で賄っていたことになる。その後石油の消費量が急拡大する一方、原油価格が低水準にとどまったため生産が伸び悩み1977年には自給率が53%まで低下した。
1980年代前半には石油価格が上昇したため国内の生産が増加、消費は減少した結果、1985年には生産量1,058万B/D、消費量1,573万B/Dで自給率は67%まで回復した。ただその後は海外の安価な石油に押され生産は減少の一途をたどり2005年から2007年までの3年間の自給率は33%に落ち込んだ。この時、米国は必要な石油の3分の1しか自給できなかったのである。
しかし2000年初めから石油価格が急上昇し、米国内で石油増産の機運が生まれ、同時にシェール層から石油を商業生産する方法が確立し、2008年以降石油の生産量は大幅に増えた。反面、景気の後退により消費量が漸減した結果、2016年は石油生産量1,235万B/D、消費量1,963万B/Dで自給率は63%に達している。
次に天然ガスを見ると、1970年から1982年までの自給率は100%に近く、ほぼ完全自給体制だった。80年代後半以降は生産が伸び悩む半面、消費が増加したため、自給率は漸減の傾向を示し、2005年には82%まで低下、需要の約2割を隣国カナダからの輸入に依存することになった。しかしシェールガスの開発生産が本格化するに伴い生産量は急激に拡大し、2016年の自給率は96%とほぼ自給体制を整えている。2015年には自給率が99%に達したが翌2016年は生産減、消費増により若干自給率が低下している。しかしシェールガスの増産意欲は高く数年中には自給率が100%を突破、本格的なLNG輸出国になる気配である。
石油と天然ガスを合わせた自給率は1970年に86%であった。その後石油自給率と同じような歩調で1979年70%、1984年78%と下降と上昇の軌跡をたどった後、1985年以降は長期低落傾向となり、2005年の自給率は50%に落ち込んだ。しかしその後は急速に回復、2016年の自給率は76%と1980年台前半の水準に戻っている。因みに2016年の石油・天然ガスの合計生産量は石油換算で2,527万B/D、また合計消費量は同石油換算で3,305万B/Dである。需給ギャップが7百万B/D強あるものの、シェールガス及びシェールオイルの増産は今後も続くものと見られ、エネルギーについては米国の将来は極めて明るいと言えよう。
(石油+天然ガス篇 完)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0422BpOilGas2017.pdf
2017.10.12
前田 高行
(石油・天然ガスの消費が急増する中国、日本は16年間で12%減!)
(5)主要5カ国の消費量推移(2000年~2016年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-G04.pdf 参照)
米国、日本、中国、ロシア及びインドの5カ国について2000年から2016年までの各国の石油と天然ガスの合計消費量を見ると、米国の消費量は他の国を圧倒しており2000年時点で3,109万B/Dとロシア(875万B/D)の3.6倍、日本(679万B/D)の4.6倍、中国(513万B/D)の6倍あり、インド(271万B/D)に対しては10倍以上の差があった。
米国の消費量は2012年まで横ばい状態を続けたが、最近4年間は増加傾向にあり、2016年は3,305万B/Dと史上最高となった。中国の消費量は爆発的に増加しており、2004年には日本を超え、さらに2009年にはロシアを追い抜き米国に次ぐ世界第2位の石油・天然ガス消費国となり、2016年の消費量は2000年比3.1倍の1,601万B/Dに達している。この結果かつて6倍であった米国と中国の差は2倍にまで縮まっている。
インドも中国程ではないが年々増加しており2000年に271万B/Dであった消費量は、2004年には300万B/D、そして2009年には400万B/Dを突破、2016年の消費量は2000年比2倍の535万B/Dに達している。日本との差は60万B/Dであり現在の趨勢が続けば数年中にインドの消費量は日本を上回ることになろう。
日本の石油・天然ガスの消費量は2000年から2009年まではほぼ一貫して減少し、2009年には600万B/Dを下回った。その後漸増し2015年までは600万B/D台を維持したが2016年には再び600万B/Dを割っており、2000年を12%下回っている。比較した5か国の中で2000年の水準を下回っているのは日本だけであり際立った特徴を示している。これは景気低迷によりエネルギー消費が減少したこと及び省エネ政策によりエネルギー効率が向上したためと考えられる。省エネ政策や再生エネルギー利用は今後も継続的に発展することが見込まれるが、一方では原発の停止により火力発電用石油・天然ガスが増えることは避けられないであろう。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0422BpOilGas2017.pdf
2017.10.11
前田 高行
(重みを増すアジア・大洋州!)
(4)地域別の消費量の推移(1990年~2015年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-G03.pdf 参照)
全世界の消費量に占める地域別の割合の推移を見ると1990年は欧州・ユーラシアが世界全体の40%を占めて最も多く、次いで北米が31%、アジア・大洋州が16%を占め、その他の地域(中南米、中東及びアフリカ)は13%であった。欧州・ユーラシアと北米を合わせた欧米先進国だけで全世界の4分の3近くの石油・天然ガスを消費しており、これに新興国家が多いアジア・大洋州を加えると9割近くに達する。
その後欧州・ユーラシア地域の消費量は緩やかに減退し1990年代半ば以降は36百万B/D前後で推移し、2016年は3,654万B/Dにとどまっている。これに対し1990年に16百万B/Dであったアジア・大洋州の消費量は年々上昇し、2011年には北米、欧州・ユーラシアを抜き去り、2016年には4,603万B/Dに達し世界で最も多く石油・天然ガスを消費する地域となっている。
2016年の地域別割合はアジア・大洋州が29%、次いで北米26%、欧州・ユーラシア23%であり、これら3地域で世界の石油・天然ガス消費量の8割弱を占めている。かつて1990年には13%しかなかった中東、南米およびアフリカ地域のシェアは22%に大幅に増加しており、発展途上国のエネルギーの消費が拡大していることがわかる。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0422BpOilGas2017.pdf
2017.10.10
前田 高行
(石油と天然ガスの比率は最近は6:4で安定!)
(3)石油と天然ガスの消費量の推移(1990年~2016年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-G02.pdf 参照)
1990年から2016年までの石油と天然ガスの合計消費量の推移を追ってみると、1990年の石油と天然ガスの消費量は石油が6,665万B/D、天然ガスは1兆9,579億㎥(石油換算3,374万B/D)であった。合計すると石油換算で1億39万B/Dとなり、両者の比率は石油66%、天然ガス34%であった。
その後消費量は2009年を除き2016年まで毎年増加の一途をたどり、2016年の消費量は石油換算で1億5,761万B/D(内訳:石油9,656万B/D、天然ガス3.5兆㎥)であり1990年の1.6倍に達している。石油と天然ガスそれぞれについて見ると、石油は1.5倍、天然ガスは1.8倍と天然ガスの伸び率は石油より高い。この結果、2016年の消費量に占める石油と天然ガスの比率は61%対39%であり、天然ガスの比率は過去20年の間に5ポイント上昇している。地球環境問題の高まりにより石油に比べてCO2発生量が少ない天然ガスの導入が進んだことがわかる。特に日本の場合は原発の新設がほぼ不可能になり、既設原発の再稼働にも多くの制約が課されていることを考慮すると、燃料調達コストの問題はあるにしても今後天然ガスの比率が増えることは間違いないであろう。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0422BpOilGas2017.pdf
2017.10.9
前田 高行
(米国は石油も天然ガスも世界一の消費国。一国で世界の5分の1強を消費!)
(2)2016年の石油と天然ガスの国別消費量
(表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-T01.pdf 参照)
消費量を国別に見ると、世界で石油と天然ガスの合計消費量が最も多いのは米国である。同国の消費量は石油換算で3,305万B/D、全世界の21%を占めており世界の5分の1強の石油と天然ガスを消費しているのである。
米国に次いで消費量が多いのは中国の1,601万B/D(石油換算)である。同国は石油の消費量は世界2位(1,238万B/D)、天然ガスは世界3位(石油換算363万B/D)であり、天然ガスの消費量は石油の約4分の1である。石油と天然ガスの合計消費量が1千万B/Dを超えているのはこの2カ国だけである。第3位はロシアの994万B/D、日本は第4位で合計消費量は595万B/D、内訳は石油404万B/D、天然ガス1,112億㎥(石油換算192万B/D)である。
これら4カ国の消費量を前年の2015年と比較すると、米国と中国はそれぞれ前年より2.9%及び12.3%増加しているのに対して、ロシアと日本は共に前年比-3.0%、-4.5%と減少しているのが特徴である。日本と中国を比較すると、石油消費量は中国が日本の3.1倍、天然ガスは1.9倍であり、石油と天然ガスの構成比は日本が68%(石油)対32%(天然ガス)、中国は77%対23%となっており、日本は天然ガスの構成比率が高い。
5位以下10位までは、サウジアラビア(合計消費量579万B/D、石油67%、天然ガス33%)、インド(同535万B/D、84%、16%)、イラン(同531万B/D、35%、65%)、カナダ(同406万B/D、58%、42%)、ドイツ(同378万B/D、63%、37%)、ブラジル(同365万B/D、83%、17%)と続いている。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
10/2 出光興産 出光興産は出光Q8ペトロリアムを通じて、ベトナムで外資として初めてのSS事業を開始します。
10/2 出光興産/昭和シェル石油 ブライターエナジーアライアンス 出荷基地の相互利用がスタート
10/2 昭和シェル石油 シェルルブリカンツジャパン株式会社の体制について
10/2 Total Statoil, Shell and Total enter CO2 storage partnership
10/4 Shell Shell and KUFPEC cancel share sale for two Shell subsidiaries in Thailand
10/4 BP BP strengthens LNG shipping capacity
10/5 ExxonMobil ExxonMobil Announces Fifth Discovery Offshore Guyana
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0422BpOilGas2017.pdf
2017.10.
前田 高行
3.世界の石油と天然ガスの消費量
(三大消費地域:アジア・大洋州、北米、欧州・ユーラシア!)
(1)2015年の石油と天然ガスの地域別合計消費量
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-G01.pdf 参照)
2016年の世界の石油消費量は日量9,656万バレル(以下B/D)であり、これに対して天然ガスの消費量は年間3兆5,429億立方メートル(以下㎥)であった。天然ガスの消費量を石油に換算すると6.105万B/Dとなり、従って石油と天然ガスを合わせた1日当りの消費量は1億5,761万B/Dとなる。両者の比率は石油61%、天然ガス39%でほぼ3:2の割合である。
消費量を地域別に見ると、アジア・大洋州が4,603万B/D、北米4,053万B/D、欧州・ユーラシア3,654万B/Dと並んでおり、これら3地域が世界に占める割合は8割弱に達する。但し各地域の石油と天然ガスの比率にはそれぞれ違いがあり、アジア・大洋州は石油の比率が73%に対して天然ガスは27%である。一方欧州・ユーラシアは石油と天然ガスの比率がそれぞれ51%と49%でほぼ均衡しており、北米の場合は石油59%に対して天然ガスは41%である。世界的に見ると上述の通り石油がエネルギーの太宗を占めているが、欧州・ユーラシア地域はロシア・中央アジアなど天然ガスの生産地と西ヨーロッパの消費地が陸続きのためパイプライン網による天然ガス利用が発達したという歴史的経緯がある。ヨーロッパでは天然ガスは家庭用・発電用燃料として使われ、一方石油の用途は輸送用燃料(ガソリン、ディーゼル)或いは石油化学原料が一般的であり、天然ガスと石油の利用が相半ばしているのである。
これら以外の3地域(中南米、中東、アフリカ)は全て併せても20%強に過ぎず、それぞれの世界消費に占めるシェアは中東12%、中南米6%、アフリカ4%である。石油及び天然ガスの消費が先進国及びアジアの新興工業地帯に集中していることがわかる。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp