石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

大きく後退したGCC6カ国、MENA平均で世界140位:報道の自由度(2019年版)(4)

2019-05-03 | その他

(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してお読みいただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0465MenaRank6.pdf

 

(MENAなんでもランキング・シリーズ その6)

 

4.2015年から2019年までの順位の推移

(MENA諸国の殆どは世界順位130位以下で低迷!)

(1)MENA全般の動き

(表http://menarank.maeda1.jp/6-T02.pdf 参照)

 2015年から2019年までのMENA各国の世界順位の変化を見ると、今回チュニジアが3年ぶりにMENAトップに返り咲き、過去2年連続トップであったイスラエルは2位に落ちている。チュニジアは2016年以降世界100位以内を維持している。とは言え今回世界100位以内はこの2か国にとどまっており、MENAの平均順位は5年間を通じて138位乃至140位である。半数近い国は140位以下であり、特にイラン、シリア、サウジアラビア、イエメンなどは世界180か国の中で170位前後の最下位グループにとどまっている。

 

 2011年のいわゆる「アラブの春」によりMENA諸国の報道の自由が進展するかに見えたが、実際には強権独裁政権が倒れた後、自由が確保されたのはチュニジアのみでありその他の国々はいずれも政治的混乱、更には内戦の勃発あるいは新たな強権政権の発足等によりむしろ報道の自由が脅かされる事態となっている。例えばリビアはカダフィ政権が倒れた後、各地の部族勢力が群雄割拠する状況で治安が極度に悪化しておりジャーナリストの安全が確保できない状況である。さらに昨年以降アルジェリア、スーダンなどで政変が発生、リビアの内戦が激化する様相を呈している。そしてそれ以外の国々では過激派の台頭を警戒して治安対策を強化する動きがあり、このためMENA地域全般で自由な報道が妨げられている。

 

(2)主要国の2015~2019年の推移

(図http://menarank.maeda1.jp/6-G01.pdf 参照)

 ここではイラン、イラク、サウジアラビア、UAE及びチュニジアの5か国と米国及び日本の2015年から2019年までの推移を比較してみる。まず日本の場合2015年は世界61位で、その後大きく後退して72位に下落、過去2年間は少し改善して現在は世界67位となっている。米国は2016年に41位になったが、その後は43位→45位→48位と毎年順位を下げている。

 

一方MENA諸国の中ではチュニジアが最近5年間に自由度が大幅に上昇しており、2015年の126位から今年は72位に躍進している。これに対してUAEは2015年から2017年までは120位前後であったが、それ以降の3年間で世界ランクが大きく下がり、今年は133位にとどまっている。

 

イラン、イラク及びサウジアラビアは5年間を通じて150位台後半から170位台前半と世界の最低レベルに低迷している。3カ国の中でイラクは5年間を通じて150位台後半を維持している。イランは2015年の173位から2018年には160位台前半までアップしたが、今年は再び170位に転落している。米国の経済制裁に対抗する形でイラン政府の西欧メディアに対する報道規制が厳しくなっていることがうかがわれる。サウジアラビアは2015年の164位から5年連続でランクが下がっており、今年はイラン、イラクを下回る172位にとどまっている。同国は女性の運転や映画を解禁するなど社会的自由の拡大をアピールしているが、報道の自由度はむしろ後退していることが特徴である。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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世界主要国とMENAのGDP成長率 ・ 一人当たりGDP(IMF 2019年4月版)(4)

2019-05-02 | 今日のニュース

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してお読みいただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0466ImfWeoApr2019.pdf


 (中東では断トツのカタール!)

4.2018年の一人当たりGDP

(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-10.pdf 参照)

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03.pdf 参照)

 2019年の一人当たりGDPは日本が39,306ドル、米国は62,606ドル、ドイツは48,264ドルである。米国は日本の1.6倍、ドイツは1.3倍である。また韓国は31,346ドルであり、米国の2分の1、日本の8割である。BRICsと呼ばれる有力新興国のロシア、中国、インドはそれぞれ11,327ドル、9,608ドル、2,036ドルである。インドは今年7.3%、来年7.5%と中国を上回る高い成長率が見込まれているが(上記1. 2019/2020年の経済成長率参照)、一人当たりGDPはまだまだ低く、中国の5分の1、日本の20分の1、米国の30分の1に過ぎない。

 

 MENAの一人当たりGDPは各国間の格差が極めて大きい。LNGの輸出で潤うカタールの一人当たりGDP70,780ドルは米国をしのぎ日本の1.8倍で世界第7位である(ちなみに世界1位はルクセンブルグの114,234ドル)。MENAで一人当たりGDPが1万ドルを超える国はカタールのほか湾岸GCC産油国とイスラエルなど一部の国だけであり、カタール以外ではイスラエル(41,644ドル)、UAE(40,711ドル)が4万ドル台であり、サウジアラビアは23,566ドルである。しかし同じ産油国でありながらイラク及びイランは一人当たりGDPが5千ドル台であり、GCCと大きな格差がある。

 

なお一人当たりGDPは各国のGDP総額を人口数で割ったものであるが、IMF統計における計算の母数となる人口についてGCC諸国の場合特に注意すべき点がある。例えばカタールの人口は275万人(WEO4月版による)で同国の一人当たりGDP70,780ドルは同国のGDP(1,940億ドル。前項参照)をその人数で割ったものである。しかし同国人口のうち90%近くは出稼ぎ労働者が占めており、カタール国籍を有する自国民は50万人足らずと言われる。通常、統計上の人口は国籍を有する者のみが対象で一時的な出稼ぎ労働者は含まないが、カタールの一人当たりGDPには出稼ぎ労働者も含まれており実態を正確には反映していないと言える。このことは同じように外国人比率が高いUAEについても言えることであり、3分の1が外国人であるサウジアラビアの場合も程度の差はあれ同様である。

 

このような要素を加味してGDPを算出した統計は見当たらないが、カタール、UAEの実際の一人当たりGDPはIMF公表数値の数倍に達すると考えられ、これら湾岸産油国の一人当たりGDPが世界のトップクラスであることは間違いない。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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石油と中東のニュース(5月2日)

2019-05-02 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・石油価格大きな変動なし。Brent $72.14, WTI $63.63

・サウジ石油相:イラン原油禁輸の代替供給の用意はできている

・アブダビ、海上3鉱区、陸上2鉱区の開発入札に着手

(中東関連ニュース)

・UAEオンライン市場Souq、全面的にAmazonブランドに

・クウェイト、都心と将来のSilk City結ぶ36KMの世界最長の海上僑完成

・中国、オマーンDuqm港などインフラに5.4億ドル、一帯1路の重要拠点に

・Moody's、サウジアラビアの格付けA1安定的に  *


*世界主要国のS&P格付け(2019年1月現在)。

http://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-01.pdf

 

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大きく後退したGCC6カ国、MENA平均で世界140位:報道の自由度(2019年版)(3)

2019-05-01 | その他

(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してお読みいただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0465MenaRank6.pdf

 

 

(MENAなんでもランキング・シリーズ その6)

 

(ランクを大幅に上げたチュニジア!)

3.2018年と2019年の自由度の比較

(表http://menarank.maeda1.jp/6-T01.pdf参照)

 報道の自由度のMENAの平均ポイントは昨年の48.33から今年は48.82に悪化しており、世界平均順位も139位から140位に下がっている。各国ごとに前回と比較すると前回世界97位であったチュニジアが今回は大幅にランクを上げ、世界72位となり、イスラエルを抜いてMENAトップとなった。同国はポイントでも昨年の30.91から今年は29.61に改善している。チュニジアを除くMENA上位10カ国はいずれもポイントが昨年より悪化している中でチュニジアのみがランクを上げていることは注目に値する。

 

 ポイント、ランクがチュニジアに次ぐのはイスラエルであるが、同国は昨年に比べポイントが0.54下がり、世界順位も87位から88位に落ちている。MENA上位グループの中ではUAE(128位→133位)及びオマーン(127位→132位)が比較的大きく順位を落としている。MENA下位グループも大半の国が世界ランクを落としており、最も順位の下落が大きかったのはイラン(164位→170位)である。そのような中で順位及びポイントを上げたのはイラクとシリアであり、イラクはポイントが56.56→52.60に、ランクも160位→156位に上昇している。

 

 因みに日本は2018年のポイント28.64から2019年には29.36に落ちているが、世界順位は両年とも67位で変わらない。米国はポイント、世界ランク共に昨年より下がっている(世界順位45位→48位)。また中国はポイント(78.29→78.92)、順位(176位→177位)共に下落しており、同国よりランクが低いのはエリトリア、コートジボアール及び最下位トルクメニスタンんの3カ国だけである。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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