石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 - 中東の戦後70年(11)

2019-10-23 | その他

ホームページ:OCIN INITIATIVE 

 

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

荒葉 一也

E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

 

第1章:民族主義と社会主義のうねり

 

5.イスラエル独立(その3):流入するユダヤ移民に押し出されるパレスチナのアラブ人

 世界のユダヤ人口は約1,400万人であり、その大半は米国とイスラエルに住んでいる。イスラエルのユダヤ人口は630万人で全ユダヤ人口の45%に相当するが、イスラエル一国(総人口850万人)で見ると同国人口の4分の3を占めている。

 

 しかしイスラエル建国前のパレスチナ時代にユダヤ人がこれほど多かった訳ではない。第一次世界大戦直後の1920年代初めのパレスチナの総人口は75万人で、そのうちユダヤ人は約8万人であり、総人口に占める比率は1割強にとどまっている。絶対数では現在の80分の1、比率でも8分の1程度だったのである。

 

 シオニズム運動とバルフォア宣言の後押しにより第一次大戦前後にヨーロッパ各地から多数のユダヤ人がパレスチナすなわち「シオンの土地」へと移住した。それは「アリヤー」と呼ばれ19世紀末から1920年代までの第一次アリヤーから第四次アリヤーまでの間にほぼ20万人がパレスチナに押しかけている。そしてナチスドイツのホロコーストが始まるとユダヤ人たちは我先にヨーロッパを脱出、その多くは米国に向かったが、イスラエルに移住したした者も25万人に達した(第五次アリヤー)。この結果第一次大戦直後に75万人であったパレスチナの総人口はその後わずか20年たらずの間に150万人に倍増したのである。

 

 パレスチナの土地は元々広くないが決して不毛の砂漠ばかりではなかった。耕作可能な土地はすでに先住民であるアラブ人たちによって耕作されており、耕作に不向きな土地では羊やラクダが放牧されていた。

 

新たなユダヤ人移民がまず必要としたのは農地だった。彼らはそれまで住んでいたヨーロッパのユダヤ人社会の中でも相対的に貧しい階層である。移民とはそもそも貧しいから移住するのであって豊かな者たちは移住などほとんど考えない。さらに言えば海外移住を希望する比較的裕福なユダヤ人たちは、パレスチナではなく米国など豊かな先進国を目指したのである。

 

 彼らはいかにして農地を手に入れたのであろうか。ユダヤ人たちは先住者のアラブ農民を力づくで追い出したのであろうか。イスラエルと言う自分たちの国家がある現在ならいざ知らず、当時のユダヤ人にはそのような力は無い。かれらが取った手段は地主から土地を買い取ることであった。アラブ農民は小作農であり、土地はオスマン・トルコ時代からの不在地主のものである。

 

 ユダヤ人入植者たちは札束を積んで不在地主から土地を買い取った。彼ら自身がそのような大金を持って移住してきたとは考えられない。それはヨーロッパに住み続けた豊かな同胞(ロスチャイルドはその典型であろう)、或いはアメリカにわたって成功した同胞からの義捐金である。豊かなユダヤ人はヨーロッパに残り、才能や学歴のあるユダヤ人はアメリカに移住した。パレスチナに移住したユダヤ人のほとんどは金も才能も学歴も乏しい貧しい者たちだった。1909年、帝政ロシアのポグロム(ユダヤ人に対する迫害。「破滅・破壊」を意味するロシア語)を逃れたユダヤ人が社会主義とシオニズムを結合した形で始めた共同農場「キブツ」はその後ユダヤ人入植地に広がっていった。

 

彼らが土地を手に入れると次に始まるのは既にいるアラブ人小作農の追い出しである。土地の権利はユダヤ移民のものであるからアラブ人は文句のつけようがない。アラブ農民は賃金労働者としてユダヤ人の下で働くか、それが嫌なら都市難民、さらには親類縁者を頼ってヨルダンなど周辺アラブ諸国に逃れるしかなかったであろう。パレスチナ経済難民の始まりである。

 

ただパレスチナ難民の中でも多数を占める政治難民は第二次大戦後のイスラエル独立戦争(第一次中東戦争)で生まれた。イスラエル独立後の3年間に70万人近いユダヤ人が流入、それとほぼ同数のパレスチナアラブ人が政治難民となってヨルダンに雪崩れ込んだ。アラブ人がユダヤ人に押し出された格好である。ヨルダン川西岸のトゥルカルムの町で隣同士であった教師のシャティーラ家と医師のアル・ヤーシン家の2家族もそのような難民の一つであった。シャティーラ家は当時16歳の息子アミンを伴ってヨルダンに逃れている。

 

(続く)

 

 

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石油と中東のニュース(10月23日)

2019-10-23 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・原油価格安定。Brent $59.41, WTI $53.76

・トルコ横断パイプラインTurkStreamのブルガリア陸上部分、2020年開通:ロシア外相明言。  *

*「ロシア-ヨーロッパガスパイプライン図」(JOGMEC作成)参照

(中東関連ニュース)

・ロシア/トルコ、シリア国境地帯紛争回避で歴史的取引。シリア領内のクルド勢力排除

・イスラエル、ネタニヤフ首相組閣に失敗。「青と白」ガンツ党首の組閣工作も難航予想。3度目の総選挙の可能性も

・サルマンサウジ国王、米国防長官と会談

・カタール、タミム首長が即位礼正殿の儀に列席

・Arab News紙の日本語版オンラインニュース近く発信:サウジ商業・投資相、東京で語る

・ドバイ万博まで残り1年。会場整備進む

・オマーン、国営航空を国内線、国際線に分離。国内線専用会社Oman Link設立

 

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今年の成長率は軒並み鈍化:世界・中東主要国のGDP(IMF WEO 2019年10月版)(1)

2019-10-22 | その他

注、本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/ImfWeoOct2019.doc.pdf

 

IMF(国際通貨基金)では毎年4月および10月に世界各国の経済見通し「World Economic Outlook Database (WEO)」を発表しており、今年10月版(以下WEO2019Oct)がインターネット上に公開された。

*URL: https://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2019/02/weodata/index.aspx

 

この中にはGDP成長率、ドル建て・各国通貨建てのGDP金額、一人当たりGDP、貿易額、財政収支など数多くのデータがあり、特に当年度或いは次年度の経済成長率は官庁、メディア等々で広く引用されている。

 

 ここでは世界と中東主要国の今年及び来年の成長率について前回4月版(以下WEO2019Apr)との変化を見るほか、2016年から2020年(予測)までのGDP総額及び一人当たりGDP(いずれもcurrent price, ドル建て)を取り上げて各国を比較することにより世界と中東主要国の経済状況を概観する。

 

1.2019/20年の経済成長率

(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-08.pdf 参照)

 

(1)全世界及び主要経済圏のGDP成長率

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-01.pdf 参照)

 IMFは今年(2019年)の世界の経済成長率を3.0%と見ており、来年(2020年)は今年よりも高めの3.4%と予測している。経済圏毎に見ると、主要先進7カ国(G7)は今年が1.626%、来年は1.571%であり来年の方が鈍化する。一方、EUは今年1.526%に対し来年は1.64%でありわずかながら上昇する見込みである。今年から来年にかけてG7とEUの成長率の見通しが逆転しているのは、次項に述べるように、G7のうち米国と日本の来年の成長率が今年よりも低いためである。ASEAN5か国は今年の4.818%から来年は4.915%とやや上向く見通しである。

 

(2)主要国のGDP成長率

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-02.pdf 参照)

主要国の今年と来年の成長率を見ると、米国、日本及び中国は来年の成長率が低下すると予測されているが、ドイツ、インド、ロシア、サウジアラビア、トルコなどはいずれも今年より来年の成長率は上昇するとしており対照的である。

 

GDPが世界最大の米国の今年の成長率は2.4%であり来年は2.1%と予測されている。中国と日本はそれぞれ6.1%→5.8%及び0.9%→0.5%と見込まれる。中国は近年成長率が鈍化しているが世界の平均成長率(今年、来年とも3%台)に比べるとインドと並び依然突出して高い成長率を維持している。

 

中国を上回る成長が見込まれるのがインドであり、同国の今年の成長率は6.1%、来年は7.0%の成長率が見込まれている。ドイツの今年と来年の成長率は0.5%→1.2%であり、ロシアは1.1%→1.9%である。

 

中東主要国のうちエジプトは今年と来年の成長率がそれぞれ5.5%及び5.9%と世界平均を上回る安定して高い成長率を維持するものとみられる。これに対してサウジアラビア及びトルコは今年の成長率はともに0.2%にとどまっており、特にイランは米国による経済制裁・原油輸出制限の影響を受けて成長率は▲9.5%とかなり深刻な状況である。これら3か国の来年の成長率はトルコ3.0%、サウジアラビア2.2%と予測され、イランはマイナス成長を脱して+0.046%とプラス成長に復帰すると予測している。但し米国の対イラン経済制裁が終息する気配は見られず、またトルコも米国との貿易摩擦の恐れがあり、さらにサウジアラビアも原油価格が低迷したままであるため、IMFの予測通りの成長率を達成できるかは不透明であると言わざるを得ない。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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石油と中東のニュース(10月21日)

2019-10-21 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・サウジ/クウェイト旧中立地帯カフジ油田、1-1.5か月以内に生産再開の見通し

(中東関連ニュース)

・米軍、シリアから撤退へ。700人をイラク西部に移駐:エスパー国防長官

・シリア:クルド兵部隊、トルコ国境地帯120KMから撤退

・ペロシ米下院議長ヨルダン訪問、アブダッラー国王と会談

・オマーン副首相、即位礼参列のため来日

・レバノン:増税・汚職反対の大規模デモ続く。キリスト教系閣僚が連立内閣から離脱

・エジプト、ルクソール王家の谷で大量のミイラ発掘

・サウジ、女性だけのマッカ巡礼を認める

 

 

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石油と中東のニュース(10月19日)

2019-10-19 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・米国の原油在庫増で石油価格下落。Brent $59.05, WTI $52.99

(中東関連ニュース)

・トルコ、エルドガン-米副大統領会談で5日間の停戦合意

・レバノン、経済悪化でデモ拡大。ハリリ首相:72時間以内に解決策出せなければ退陣する

・オマーン:小林大使が副首相と会談

・サウジアラムコ、直前でIPO再び延期。来年1月以降か。 *

 

*参考:

アラムコの2019年1-6月業績

アラムコIPOの行方は?」(2017年3月レポート)

 

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今週の各社プレスリリースから(10/13-10/19)

2019-10-19 | 今週のエネルギー関連新聞発表

10/14 Total 

Total expands its strategic partnership with Adani to supply and market natural gas in India  

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/total-expands-its-strategic-partnership-adani-supply-and-market-natural-gas-india

 

10/14 Saudi Aramco 

Saudi Aramco signs 1 SPA and 9 MOUs with Russian companies at the Saudi - Russian CEO Forum 

https://www.saudiaramco.com/en/news-media/news/2019/saudi-aramco-signs-1-spa-and-9-mous-with-russian-companies-at-the-saudi-russian-ceo-forum

 

10/16 出光興産 

スノーレ油田向け洋上風力発電導入開発計画をノルウェー政府に提出 世界初の試み 石油ガス生産設備に直接接続する浮体式洋上風力発電設備の開発を開始 

https://www.idss.co.jp/news/2019/191016.html

 

10/18 BP 

BP and ZPCC explore the creation of a world-scale acetic acid joint venture in China 

https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-and-zpcc-explore-the-creation-of-a-world-scale-acetic-acid-joint-venture-in-china.html

 

10/18 Total 

New Marine Fuels: Total’s First LNG Bunker Vessel Launched 

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/new-marine-fuels-totals-first-lng-bunker-vessel-launched

 

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石油と中東のニュース(10月17日)

2019-10-17 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・OPEC事務総長:2020年以降もOPEC+の結束で石油市場は安定。最近の減産達成率は136%

(中東関連ニュース)

・シリア政府・ロシア連合軍、米国撤退後のトルコ国境地帯に進軍

・国連安保理がシリアのIS過激派復活に懸念表明、トルコ侵攻には触れず

・クウェイト首長、米国での治療終えて帰国

・露大統領訪問に合わせ石油協力、露農業分野への投資など20件のサウジ-ロシア協定締結

・サウジ:SABIC、ロシア極東アムール地区に200万トンのメタノールプラントを計画

・露プーチン大統領、UAE公式訪問。6件、13億ドルの合意締結

・サウジ、バス火災事故で外国人巡礼者35人が死亡

 

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見果てぬ平和 - 中東の戦後70年(10)

2019-10-16 | その他

(英語版)

(アラビア語版)

 

荒葉 一也

E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

 

第1章:民族主義と社会主義のうねり

 

4.イスラエル独立(その2):ユダヤ人とは?

 「イスラエルはユダヤ人の国である」と言うことに異議を唱える人はいないであろう。しかし「ユダヤ人」を定義するとなると厄介である。ユダヤ人のルーツは旧約聖書を正しいとすれば、紀元前20世紀頃中東パレスチナのカナン(約束の土地)に定住したアブラハムの一族である。彼らは民族的にはセム系に属し、アラブ民族と同じ系統である。ユダヤ人たちはアラブ人と同一視されることを嫌がるであろうが生物学的あるいは民俗学的にみれば両者は同じ系統である。

 

 古代イスラエル人は部族として一神教のユダヤ教を信じ、信仰のリーダーを預言者として結束して行動してきた。紀元前13世紀にエジプトに抑留されていた一族を引き連れて再びカナンに戻ったモーゼはそのような預言者の一人だった。その後紀元前10世紀頃にダビデとその息子ソロモンがエルサレムに神殿を築きイスラエル王国、さらにはユダ王国として繁栄するのである。しかし紀元前6世紀以降たびたび隣国の新バビロニア王国の侵略を受けユダ王国は滅亡、ユダヤ人はエルサレムからバビロニアに強制移住させられた(バビロニア捕囚)。その後、新バビロニアを滅ぼしたペルシャ王キュロスによって彼らは解放されてエルサレムに帰還、エジプト王朝の支配下でエルサレム神殿を再興、紀元前から紀元後へとローマ帝国の属領ユダヤ王国として生き延びることになる。

 

 紀元100年前後にはローマ帝国に対して度々反乱した結果、135年にハドリアヌス帝によって徹底的に弾圧され、ユダヤ人はエルサレムに住むことを禁止された。この時から長いユダヤ人の「離散(ディアスポラ)」が始まり、彼らはヨーロッパ各地に移り住んだのである。

 

 キリスト教が深く根を下ろし、白人が定住するヨーロッパ各地で、固有の宗教を信奉するセム系のユダヤ人が蔑視され迫害されたことは言うまでもない。キリストを裏切ったユダの汚名がいつまでもユダヤ人について回った。キリスト教徒たちはユダヤ人を「ゲットー(居住区)」に押しこめ、自分たちが忌避する仕事を押し付けた。

 

 そのような職業の一つが金貸し業である。中世キリスト教社会では金融業は汚らわしい職業とみなされていた。人間を金に縛り付け強欲が支配する金融業は宗教の持つ清廉さと相容れないためであろう。実は金融業を忌避するのはキリスト教に限ったことではなく、イスラム教ではさらに厳格に解釈されており、現代でもイスラム社会では金利は「ハラーム(忌避すべきもの)」とされ金利を取ることは禁止されている。当時の金貸し業がユダヤ人の専売特許であったことはシェークスピアの戯曲「ヴェニスの商人」を見てもよくわかる。当時のヨーロッパではシェークスピアのような文化人ですらユダヤ人を毛嫌いしていた。このようなステレオタイプなユダヤ人観は20世紀前半まで残り、その最大の悲劇こそナチスドイツによるホロコーストだったと言えよう。

 

 以上のようなユダヤの歴史を振り返り改めて「ユダヤ人とは何か?」と言う問いに向き合ったとき一言で答えることは極めて難しい。

 

 まずユダヤ人は生物学的な意味での独自の民族と言うことはできない。彼らの起源がセム語族の中の一部族であることは間違いないが、2千年近いディアスポラを経た現在のユダヤ人が「血」の絆を共有しているとは言えないからである。

 

 それではユダヤ教と言う宗教でユダヤ人を定義することができるだろうか。否である。ユダヤ教からキリスト教に改宗した者たちも自らをユダヤ人と称している。米国のユダヤ人は大半がキリスト教徒である。「心(信仰)」の面でもユダヤ人は多義的である。

 

 結局ユダヤ人とは他者が「お前はユダヤ人である」と名指しするか、或いは自らを「私はユダヤ人である」と自称する者がユダヤ人である、と言うことになる。これは同語反復であってとても定義などと言えるものではないのである。

 

 近世までのヨーロッパでは白人たちが「お前たちはユダヤ人である」と決めつけてゲットーに閉じ込めようとした。それを嫌ったユダヤ人たちはユダヤ教を棄教してキリスト教徒として生きるか、或いはユダヤ人であることをひた隠しにして社会の片隅でひっそり生きてきた。

 

 しかしロスチャイルドに代表されるユダヤ人の金融資本家が戦争遂行に一役買うほどの実力をつけ、またアインシュタインなどユダヤ人の優秀な頭脳が見直されると、ユダヤ人たちの間にアイデンティティを鮮明にする動きが起こり、「私はユダヤ人である」と自称する者すべてがユダヤ人とみなされるようになった。ホロコーストを経た第二次大戦後は「ユダヤ人である」と名乗ることで身の安全と将来の繁栄が保証されるようになったのである。その意味でソ連邦崩壊後にロシアからイスラエルに大量に移住したロシア系ユダヤ人の中には本来のユダヤ人とは縁もゆかりもない移民がいるに違いないという疑念はぬぐえない。

 

 ともあれ他称、自称のユダヤ人たちによってイスラエルは建国され、今も版図を拡大し続けているのである。

 

(続く)

 

 

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石油と中東のニュース(10月15日)

2019-10-15 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・ESP(水中電動ポンプ)有力メーカーNovometに露・サウジの両政府系ファンドが31%出資

(中東関連ニュース)

・米軍撤退で三すくみ状態のシリア

・米国防省、シリア北部からの兵員1千名の撤退を表明

・トランプ大統領、トルコのシリア侵攻で幅広い経済制裁を示唆

・ロシア大統領、サウジ訪問。シリア、OPEC+、アラムコIPOなど幅広く意見交換

・オマーン、技術・通信省と芸術省を新設

・カタール、韓国貿易投資機関Kotraとデジタル分野で協力MoU締結

・チュニジア大統領に保守系法学者Kais Saied。得票率73%で対立候補に圧勝

 

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石油と中東のニュース(10月13日)

2019-10-14 | 今日のニュース

 

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・週末原油価格 Brent $60.51, WTI $54.70。EIA、年間Brent平均価格今年$63.37、来年$59.93$と予測

・紅海でイラン籍タンカー炎上、原油流出は止まる。ミサイル攻撃か

・米の原油輸出制裁処置でタンカー300隻近くが運航停止に

・英BP、30億ドル相当の資産売却。CEO交替で戦略転換

(中東関連ニュース)

・米、イランの脅威に対抗しサウジに兵員3千人増派

・トルコ、シリアのクルド支配地域への砲撃継続

・宇宙ステーション滞在のUAE飛行士、故国に凱旋

・サウジ・リヤドの韓流ポップコンサート盛り上がる

・カタールで日本文化の集い。剣道、着物、書道などを披露

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