たかたかのトレッキング

駆け足登山は卒業、これからは一日で登れる山を二日かけ自然と語らいながら自由気ままに登りたい。

(続)茅ヶ岳・金ヶ岳

2020年12月14日 | 心に残る思い出の山

続き

 

深田久弥氏の慰霊碑から一喘ぎ、山頂で待っていたのは見事なまでの展望と下界の全てを覆い尽くす雲海だった。 先ず前衛の山々を従えて威風堂々たる富士の山。 目の前には峰々の一つ一つをクッキリと際立たせる南アルプス群、首を巡らせば展望は更に広がり金ヶ岳の横に八ヶ岳が思いのほか大きく雪雲を被って鎮座している。そして振り向いた先には金峰山、奥多摩、秩父の山々、大菩薩連嶺と目で追う山々は限りなく眺めても眺めても見飽きる事が無い。

 

気温も上がって暑くもなく寒くもない気持ちの良い日と言う事も有ってこの大展望は山頂の憩いを盛り上げてくれた。私達は持参のワインを雪に埋め取り敢えず金ヶ岳を目指す事にした。 後ろから「金ヶ岳へ行かれるのですか?滑らない様、注意して下さいね」声が掛かる。

石門

踏み跡の無い尾根道は、ここまで足を延ばす者が居ない事を物語っている。後方に女性の奇声が迫って来た。しかし、それも石門に下り着く頃には全く聞こえなくなった。結構な下りなので諦めたらしい。

石門から再び登り返し下から眺めた柱状の岩の所で一息入れた。ここから見る茅ヶ岳はまるでピラミッドの様に綺麗な三角形をしている。その左後方には同じ形をした富士山が覗いている。

金ヶ岳南峰三角点にタッチ

案内書に寄れば、かなり厳しくみえる登りも取り付いてしまえば意外に簡単に登れると有るが、どうしてどうして結構きつい登りで南峰に辿り着いた時にはフラフラ。気を静めていると途中で私達を追い抜いた男性がもう金ヶ岳から戻って来た。「金ヶ岳までは後15分位で着きますよ」と言って去って行ったが齢にしてちょうど私くらい。スピードとバランスの良さは四足動物の様だった。

南峰から一旦下って登り返した金ヶ岳は西側方面だけが開け、そこには南アルプス連山があった。茅ヶ岳に比べて興奮度は劣るが人が居ない分、安らぎのある頂だ。それに高度は茅ヶ岳より60m高い。その金ヶ岳まで足を延ばした満足感を味わった私達は記念写真を撮りワインの待つ茅ヶ岳に戻った。

茅ヶ岳は相変わらず大勢の登山者が頂を埋めていた。今日のとてつもない温かさで、あちこち黒土が露出していたが我がワインは未だ雪の中、安泰だ。

「上手い」雄さんは初めて飲む「おたるワイン」が気に入った様子。冷え加減もちょうど良かったのかもしれない。私が良く購入する「マドンナ」より数倍美味しいとご満悦。 ラベルには「小樽限定販売、小樽だけのワインです」と記されていた。 時間はもう直ぐ1時、大分ゆっくりした。

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雪が融け日の当たる所は既に乾き分岐点で「直進だろう」と雄さんが見誤る程、一変した景色、そんな明るい雑木の中をジグザグに下って女岩

明日のコーヒー用にとペットボトルにお水を

そろそろ山道も終わりに近づいた時、逞しい若者が自転車を担いで登って来た。「行ける所まで行って自転車で降りてくる」と言っていた。若さをフルに活用して、それを楽しみに変えている若者の意気込みが羨ましい!

深田公園は現在工事中で丸太がアチコチに散乱し、その中に置かれた碑の鏡面には紅葉の茅ヶ岳が写しだされ、あの有名な「百の頂に百の喜びあり」が刻まれている。 ふと「こんなに綺麗にしなくても草茫々の方が僕に相応しいのに」・・・そんな深田氏の声が私には聞こえて来た様な気がした。