Fish On The Boat

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『音楽機械論』

2011-02-24 18:38:58 | 読書。
読書。
『音楽機械論』 吉本隆明 坂本龍一
を読んだ。

1985年ころの、才気あふれる坂本龍一さんと、
その頃でももうお年を召していた吉本隆明さん(前回読んだ『キッチン』の吉本ばななさんのお父様)
との共著であり、対談本です。
坂本さんのスタジオに吉本さんが訪れる形で話はスタートします。
思想界の巨人といわれる吉本さんが音楽に疎いといことなので
(とはいえ、一般的かそれ以上の教養はあるようですが)、
若き教授(坂本さん)が吉本さんに音楽についていろいろ説明します。
説明といっても、吉本さんが彼らしい観点から質問をして、
それも難しそうなことなのですが、すぐさま教授が答えを返して
会話が成り立っています。音楽の専門的な事はわからなくても、
吉本さんはその教授の言葉からいろいろと他の分野、たとえば文学などと比較したり、
類推したりして理解を深めていってるようでした。

坂本さんは当時33歳です。
奇しくも今の僕と同い年です。
がっぷりよっつに組みあって、自分と比較してみましたが、
圧倒的に負けているなという印象です。
たとえれば、柔道で、4段くらいで90kgもある相手と初段で70kgくらいの自分が真っ向勝負する感じ。
難解勝負しても、必ずや投げられますね。そのくらい違うなと思いました。

坂本さんは知識も豊富だし知恵もあって、高橋幸宏さんが「教授」とあだ名したのも、
全然、飛躍じゃないなと思いました。

一方、吉本さんは、教授とともに音楽を作るという段になったら、
語彙があやしくなってきます。「あれして」とか、「あれなので」だとか、
要所要所で、「あれ」という言葉が飛び出します。
きっと、音楽作りに集中して、脳の、言語を司る部位が不活発になっているんだろうなと思いました。
対談本で「あれ」連発ですからね、「そんなのありなのか!」と笑えてしまいました。
いや、決して馬鹿にしているわけではないので、あしからず。
自分だったら、音楽を作っていなくても、音楽作りの細かなところのニュアンスさえつかめずに
「あれこれ」しかしゃべれなくなると思う。

けっこうね、部分によっては、「認知」っていうもの、「意識する」っていうことを
意識して話し合っている風でもあったかなぁ。
そういう部分は誰が読んでも学べると思います。

でも、どうだろう、吉本ファンか坂本ファンじゃないと面白くないかもしれないね。
いや、でも、人によりけり!

吉本さんが作って、教授が補作曲およびアレンジをした曲は
「人差し指のエチュード」というそうです。
聴いてみたいね。なんか、ダウンロード販売しているみたいです。
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