不登校の生徒だった。不登校の生徒はたいていの場合、進級認定で「進級」と認定され
卒業認定でも「卒業認定」が下される。そして卒業して行く。
しかし、卒業しても高校へ進むこともあるが、進まない場合は、家事手伝いとなり
進学もしなければ就職もしない。社会からはまったく離れた生活になってしまう。
そして、私の所に来るような成人がいるのだ。私の所で勉強しようとする人はまだ
良いと思う。言いたいことは、中学校をつまり義務教育を修了させても、その後
のことは何も考えられていないということだ。
義務教育の卒業認定があれば、あとは何とかなるだろうなどという考えは、現在では通用しないのだ。
卒業させるということは無責任としか言いようのないことだったのだと思った。
現役の頃職員会議で卒業認定のことが議題となる。不登校であっても、たいていは卒後認定される。
そして卒業するが、卒業してもどうにもならないのが現状なのだ。
私の家庭教師の生徒は中学科卒業後は「家事手伝い」であったが、
その後引きこもりになってしまったようだ。本人がこれではいけないと思い、
やっと引きこもりから脱出を試みたらしい。
それでも相当な年月が過ぎていた。本人の人生にとっては相当な損失だろうと思う。
私は現役の頃何人もの不登校の生徒を登校させた経験があったので、
不登校で終わってしまった生徒のその後までは考えてもみなかった。
たいていは登校するようになって卒業したからだ。
そんなわけで不登校の経歴があると知っても家庭教師を引き受けることにしたのだった。
つづく