イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「夢ノ町本通り」読了

2024年07月20日 | 2024読書
沢木耕太郎 「夢ノ町本通り」読了

このエッセイ集は著者がこの30年ほどの間に書いてきた書物にまつわる文章を集めたものだ。以前に読んだ、「銀河を渡る」は著者が交わってきた人々について書かれたエッセイであったが、この本と対をなすものとしてまとめたものだということだ。

半径10kmの範囲でしか生きてこなかった身にとっては、この人の紀行文なら読むことはできなかったけれどもそうじゃないエッセイなら読めそうである。
前作同様、この人の書く文章はすばらしいと思った。そして、今回は「書籍」を題材にしたエッセイということで、僕もこんな文章を書いてみたいと切に思うのである。しかし、当たり前のことであるが、持っている知識、知性、記憶力、何を取ってもはるかに劣っていると痛感してしまう。

取り上げられている書籍はただ1冊を除いて読んだことのない本ばかりだった。半径10kmの範囲でしか生きられない人間と世界中を旅してきた人とではこれだけ読むものが違うのかとやはり痛感してしまう。かなりの紙幅は時代小説の書評や解説、感想に使われていて、そこは僕が好きなジャンルではないというところもあるが、それ以外のジャンルの作家でもほとんどが知らない作家ばかりである。
だから、この本で取り上げられている作品を読むこともないだろうが、ほんの少しずつあらすじが紹介されている時代物などは時間の余裕があれば絶対読みたいと思ってしまう。老後の楽しみに取っておこう。

沢木耕太郎は自身でも時代小説を書いているが子供の頃から貸本屋で時代物を読んでいたというほど好きなようだ。だからこの本にもたくさんの時代物が取り上げられている。時代物ではないが、「春に散る」という沢木耕太郎原作の映画を観たが、これもなかなかよかった。ストーリーとしては格闘技物によくあるプロットだったけれどもそのハードボイルド具合がなかなかよかった。原作を読んでいないのでなんとも言えないが、エッセイを読んでいても確かにハードボイルドの感じがする。きっとそういう部分が、こんな文章を書いてみたいと思わせる部分なのだと思うのである。

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