7月某日
今朝から、セミが一斉に鳴き出した。
やつらは本格的な夏の到来を宣言しているのか?
ミーン、ミーン、ミーン、夏が来たで~。
気づかないフリしても無駄やで~。
すっごくすっごく暑くなるんやで~。
覚悟しとけや~、ミーン、ミーンって。
どうしよう、おろおろ、と少し焦ったが、焦ってもしょうがないと思い直し、二度寝する。
昼過ぎに汗だくで目を覚ます。
7月某日
図書館で借りたムーミン全集を読む。
挿絵を見ていて思ったが、ムーミンママって、お母さん体型だ。
もちろんムーミンパパもムーミントロールも同じ体型なので、お母さん体型だ。
お母さん体型のムーミン一族・・・ステキ。
7月某日
今日もムーミン全集を読む。
名作である。
ニョロニョロを食べたらどんな味がするか、想像してみる。
私の予想では、ニョロニョロはホワイトアスパラのような味がするはずだ。
茹でてマヨネーズを食べると美味しいはず。
ニョロニョロは体内に電気を溜めているので、電子レンジで加熱するのは危険。
やはりオーソドックスに鍋で茹でるのがいいだろう。
7月某日
ムーミン全集にすっかりハマる。
深い。
インターネットでムーミン情報を調べてみたら、
「ムーミン谷は山形県にある。
JR山形駅前で、タクシーの運転手さんに『ムーミン谷までお願いします』と頼めば、連れて行ってくれる」
という情報を見つける。
ムーミン谷はフィンランドにあると思い込んでいたので、ショックを受ける。
7月某日
今日は、日本の夏の暑さを堪能することにする。
具体的に何をするかというと、畳に寝そべって本など読みながら、すだれを透して入ってくる光と影のコントラストがレースのカーテンに映って、揺れているのを凝視したり、扇風機の風を顔に受けて、目を閉じてうっとりしたり、外を歩く人たちの、「えらい暑いねえ~」「ほんまやねえ」という会話に耳をすませたり、額や脇の下や肘や膝の裏にじんわり滲み出す汗を、ティッシュで丁寧に吸い取り、その匂いを嗅いだりするのだ。
午後3時ごろに暑さが最高潮に達したので、熱い空気を全身で味わう。
午後5時ごろ、もう十分暑さを堪能したからもういいやと思い、クーラーをつけ、冷たいビールを飲んで涼む。
有意義な一日だった。
7月某日
子供の頃、「せんぷうきをつけっぱなしで寝ると、皮膚呼吸ができなくなって死ぬ」と思い込んでいたことを、ふと思い出す。
だれか大人に吹き込まれたのだと思うが、それがホラだと気づくのに、長い年月がかかった。
これが真実だとすると、夏場の死因の第一位は「せんぷうき死」となり、ガンとか、心臓病とか、脳溢血とかを軽く上回まわるはずなのに、死因リストには「せんぷうき」の「ぷ」の字もない、おかしいな、とある時気づいたのだ。
7月某日
「せんぷうき死」に続いて、「とろろこんぶ死」についても、再考する。
「とろろこんぶ死」について話してくれたのは、たしか中学校の家庭科の先生。
ハキハキとした大きな声でよくしゃべる、顔が大きくて小太りの、年配の女性だった。
話の内容はだいたいこんな感じである。
「あるところに、とろろ昆布が大好きなおじいさんがいました。
ある日、おじいさんはいつものように、とろろ昆布を少しちぎって口に入れては、水を飲み、
それからまた少しちぎって食べ、また水を飲み、を繰り返していました。
おじいさんはとろろ昆布を食べながら、水を飲むのが好きでした。
けれど、その日おじいさんは、いつもより食べ過ぎてしまったのです。
とろろ昆布という食べ物は、水に浸すと膨らむのをご存知ですか。
おじいさんの胃の中で、とろろ昆布はぷわぷわと膨らみ続け、そしてとうとう、爆発してしまったのです。」
大人になったいま考えるに、あれもホラだったのではないだろうか?
とろろ昆布を食べ過ぎて死んだ人の話なんて、いままで他に聞いたことがない。
パッケージにも、「食べ過ぎたら胃が爆発しますので、十分ご注意ください」とか書いてないし。
7月某日
夕方、母から電話がかかってくる。
「みっちゃん、どうしてるん?
暑いけど、クーラーつけてる?
お年寄りとか、あんたみたいにぼんやりした人が暑さに気がつかずに、
いつのまにか熱中症にやられるんよ。気いつけなさい」
70歳をこえた母親に、この言われよう・・・
何か言い返すべきかと思ったが、暑くて何も思い浮かばないうちに、通話が終了する。
結局クーラーをつけずに、汗だくになりながら一日を過ごす。
夜、少し吐き気がした。母のいいつけに背いた報いだろうか?
7月某日
今日も途方もなく暑い。
うちの中で一番涼しい場所は、お風呂場。
一日中陽が差さないし、タイル張りなのでひんやりしている。
ときどき涼みに行って、水の気配のするひんやりした空気の中で、佇む。
逆にうちの中で一番暑いのは、トイレ。
日当たり良好で、狭い空間に温まった空気が充満している。
一日に何回かは足を踏み入れる必要があるので、トイレを憎まないよう、自分に言い聞かせる。
暑いのは、トイレの責任じゃない。
暑いのは、トイレの責任じゃない。
暑いのは、トイレの責任じゃない。
・・・あ~暑い・・・