関東に住む弟が父に会うために帰ってきた。
弟は駅からまっすぐに父の所に来るということだったので、私と妹の家族は高齢者住宅で弟と落ち合うことにしていた。
弟には今年に入ってから急激に弱ってきた父の様子を知らせてあった。
「前回会った時よりもかなり弱ったよ。もうあまり食べなくなったし、話せなくなったし、すこし起きていても、すぐに苦しそうな息遣いになって横になるしね・・・」
そう弟には話していた。
さて施設に弟が到着したので、みんなで父のいつも居る部屋に行った。
ちょうど今まで横になっていた父をヘルパーさんが車椅子に座らせてトイレに連れて行ってくれるところだった。
「おとうさん」と皆で声をかけたが、父はうつむいたままでほとんど反応を示さない。
「おとうさん、○○(弟の名)が来てくれたよ」
そう声をかけても反応がない。
寝起きもあって話を理解できていないのだろうか。
しかしちょうど父の前に大きな鏡があり、父がふと顔を上げた時、後ろにいた私たちや弟の姿が映った。
すると、なんと父の目が一瞬大きく見開き、口元に笑みがこぼれ、そして「おぉ」と片手を上げたではないの。
弟が来ていることを父が認識した瞬間だった。
父はレビー小体型認知症だが家族の顔は忘れないようだ。
「来たのか?来たのか?」と何度も嬉しそうに父が弟に言った。
それからの父は嘘のように元気になった。
目に力が入り、前かがみだった背中もまっすぐ伸びた。
父を囲んで皆で座ると、最初はなかなか言葉が出てこなかった父だったが時間が経つにつれて、色々なことを自ら話すようになった。
ずっと昔のことから昨年くらいのことまでを記憶していて会話をしている。
まだこんなに話すことができたなんて信じられなかった。
とはいえ、同じ話を繰り返したり、間違った記憶を話したりするのだが、それでも今まで弱々しくベッドに横たわっていた、いつもの父ではなかった。
しかも驚いたことに、食欲が旺盛なのだ。
それは職員さんからも「最近、よく食べられますよ」と聞いていたのだが、父の食べる量がすごい。
大きな柿を二つ、甘酒の缶を二本、ソーダーの缶を一本、大きなおせんべいを二枚。
これらをぱくぱくとすごい速さで食べる。
まだまだ食べられそうな勢いだったが、途中でもう止めさせないとダメかも・・・と思うほど父は食べ、そして最後にそれらを吐いてしまった・・・
最初は妹と「お父さん、食欲が出てきて良かったね」と話していたのだが、途中から「これは認知症の症状かもしれない」と思った。
「最近、食事がおいしいんだ」
そう父は話していたが、おいしいだけであれほどの量を、すごい速さで食べるというのは、元気な頃の父ではあり得なかったと思う。
しかし、それ以外は久しぶりに弟に会えた父は終始きげんがよかった。
食べ物を吐いてしまったが、一時間あまりの長い時間を父は一度も疲れた様子を見せることなくおしゃべりをして過ごした。
それにしても久しぶりに会った息子の力は凄い。
娘二人(私と妹)では、こんな風に父を元気にすることはできない。
私たちはいつも顔を見に行っているので、もう私と妹では父に甘えや慣れが出てしまって、しゃっきりとなれないのかもしれないが。
「またお父さんに顔を見せて、刺激を与えてやってね」と弟にお願いしたら「わかった、もっと頻繁に来るようにするよ」と弟も言ってくれた。
夕食は弟を囲んで、みんなで楽しく食事をした。
こうしてきょうだいが集まって食事ができるというのは、やはり父のお陰だと思う。
もしも父がいなくなってしまったら、弟もなかなか帰って来れないだろうし、きょうだいと言っても疎遠になっていくのかもしれない。
父にはまだまだ頑張ってもらいたい!と思う。
弟は駅からまっすぐに父の所に来るということだったので、私と妹の家族は高齢者住宅で弟と落ち合うことにしていた。
弟には今年に入ってから急激に弱ってきた父の様子を知らせてあった。
「前回会った時よりもかなり弱ったよ。もうあまり食べなくなったし、話せなくなったし、すこし起きていても、すぐに苦しそうな息遣いになって横になるしね・・・」
そう弟には話していた。
さて施設に弟が到着したので、みんなで父のいつも居る部屋に行った。
ちょうど今まで横になっていた父をヘルパーさんが車椅子に座らせてトイレに連れて行ってくれるところだった。
「おとうさん」と皆で声をかけたが、父はうつむいたままでほとんど反応を示さない。
「おとうさん、○○(弟の名)が来てくれたよ」
そう声をかけても反応がない。
寝起きもあって話を理解できていないのだろうか。
しかしちょうど父の前に大きな鏡があり、父がふと顔を上げた時、後ろにいた私たちや弟の姿が映った。
すると、なんと父の目が一瞬大きく見開き、口元に笑みがこぼれ、そして「おぉ」と片手を上げたではないの。
弟が来ていることを父が認識した瞬間だった。
父はレビー小体型認知症だが家族の顔は忘れないようだ。
「来たのか?来たのか?」と何度も嬉しそうに父が弟に言った。
それからの父は嘘のように元気になった。
目に力が入り、前かがみだった背中もまっすぐ伸びた。
父を囲んで皆で座ると、最初はなかなか言葉が出てこなかった父だったが時間が経つにつれて、色々なことを自ら話すようになった。
ずっと昔のことから昨年くらいのことまでを記憶していて会話をしている。
まだこんなに話すことができたなんて信じられなかった。
とはいえ、同じ話を繰り返したり、間違った記憶を話したりするのだが、それでも今まで弱々しくベッドに横たわっていた、いつもの父ではなかった。
しかも驚いたことに、食欲が旺盛なのだ。
それは職員さんからも「最近、よく食べられますよ」と聞いていたのだが、父の食べる量がすごい。
大きな柿を二つ、甘酒の缶を二本、ソーダーの缶を一本、大きなおせんべいを二枚。
これらをぱくぱくとすごい速さで食べる。
まだまだ食べられそうな勢いだったが、途中でもう止めさせないとダメかも・・・と思うほど父は食べ、そして最後にそれらを吐いてしまった・・・
最初は妹と「お父さん、食欲が出てきて良かったね」と話していたのだが、途中から「これは認知症の症状かもしれない」と思った。
「最近、食事がおいしいんだ」
そう父は話していたが、おいしいだけであれほどの量を、すごい速さで食べるというのは、元気な頃の父ではあり得なかったと思う。
しかし、それ以外は久しぶりに弟に会えた父は終始きげんがよかった。
食べ物を吐いてしまったが、一時間あまりの長い時間を父は一度も疲れた様子を見せることなくおしゃべりをして過ごした。
それにしても久しぶりに会った息子の力は凄い。
娘二人(私と妹)では、こんな風に父を元気にすることはできない。
私たちはいつも顔を見に行っているので、もう私と妹では父に甘えや慣れが出てしまって、しゃっきりとなれないのかもしれないが。
「またお父さんに顔を見せて、刺激を与えてやってね」と弟にお願いしたら「わかった、もっと頻繁に来るようにするよ」と弟も言ってくれた。
夕食は弟を囲んで、みんなで楽しく食事をした。
こうしてきょうだいが集まって食事ができるというのは、やはり父のお陰だと思う。
もしも父がいなくなってしまったら、弟もなかなか帰って来れないだろうし、きょうだいと言っても疎遠になっていくのかもしれない。
父にはまだまだ頑張ってもらいたい!と思う。