連休を利用して弟が来ていた。
入院している父の様子を見るためだったが、帰省してくるのは半年ぶりだろうか。
半年に一度は帰ってくるというのは、これでも父が元気だったころに比べれば増えた方で、父が元気だったころには一年に一度帰ってくれば良い方だった。
仕事があるので、そう頻繁に帰ってくることができないということもあるが、帰ってくると父や近くに住む妹に気を使わせてしまうという遠慮があってか、あまり帰ってくることはなかった。
父はよく「元気ならば帰ってこなくてもいい」と言っていたが、寝たきりになってしまった今、弟が帰ってくることを知らせると表情が変わる。
一瞬、顔が明るく嬉しそうになるのだ。
やはり息子が帰ってくるのは嬉しいのだなぁと思う。
父は86歳だが、この年代のせいなのか、長男というものを非常に大切に思っているところがあって、祖父母が買った土地はすべて長男である弟に譲るという遺言状を書いてある。
これは父が元気だった頃に書いたもので、父は遺言状を前にして「家と土地は息子にすべて譲るがいいか?」と私と妹に聞いた。
もちろん私も妹も「それでいい」と了解した。
すると父はホッとした顔をして「おじいちゃんとおばあちゃんが北海道に渡ってきて、苦労して手に入れた土地だから息子に継がせたかった」と言った。
父は土地と言うものに対して非常に執着がある。
これは「自分の土地」に対してほとんど執着を持たない私たちとは違うところなのだが、「祖父母が苦労してやっと手に入れた」ということでは、父の気持ちは分かる気がする。
しかし、この執着が死後にも残ることがあって、それがまたそこで生きる人たちにとっては怖いことで、迷惑なことでもある。
「子供の頃から数々の霊体験をしていた」と最近カミングアウトした弟とは、今回は土地にまつわる不思議話をした。
実家の建つ土地は市の中心部に近い場所にあるが、私は子供の頃からこの家でいろいろな怖い体験がある。
仏壇に手を合わせると必ず同じ場所から大きな家鳴りがする。(これは家族みんなが分かっていた)
たまに居間の椅子に誰かが座っている。
これは目には見えないのだが気配がする。それを母に伝えると「やっぱり。おかあさんもさっきからそう思ってた」というので、たぶんそうだったのだろうと思う。
また誰もいないのに階段を下りてくる足音がすることもあった。
最も怖かったのは、20代の頃に経験したことで、寝ていたベッドの周りをグルグルと歩き回る人がいて、不思議なのはベッドの片側が壁に面しているにもかかわらず、壁の方もちゃんと歩く気配がすることだった。
薄目をあけてそっと見たら、黒いたびを履いた人の足だけが見えた。
男なのか女なのかも分からなかったが、生きている人ではないことははっきりと分かった。
この頃は頻繁にそのようなことが起こっていたので、怖さもあったが、それよりも腹立たしさの方が勝り、目の前に来た黒たびの足を思い切りつかんでしまった。
今思うと、若気のいたりで無謀なことをしてしまったが、つかみながら「勝手に人の部屋に入って、ベッドの周りを歩き回るとは何なのっ!」と怒りの感情をぶつけてしまった。
すると、その人は私のつかんでいた手をゆっくりと外すと、私の背後に回り思い切り首を絞めてきた。
今まで誰かに首を絞められる体験はしたことは無いが、この時は本当に息ができなくて死ぬかと思うほど苦しかった。実際に首を絞められるとこうなるのだなと思ったが・・・
その話を弟にしていたら「そういえば亡くなったお母さんも同じようなことを言ってた」と教えてくれた。
弟が母から聞いたところによると、母が寝ていると布団の周りを誰かがグルグルと歩き回って、しまいには布団の端をめくられるということがよくあったそうだ。
そういえばそんなことを母が言っていたような気もするが、あの頃は当たり前のようにそんなことが起こっていたので、聞いたとしても特に気にもしていなかった。
気にするようになったのは父が高齢者住宅に入って、実家が空き家になった頃だった。
近くに住む妹が誰もいない実家を訪ねると、仏壇に手を合わせると家鳴りは相変わらずするのだが、電池の入っていない健康器具が突然動き始めたりすることがあって、とても怖いと言った。
結婚後、実家を離れてずいぶん経っていた私は「そのような現象が起きるのはやっぱりおかしい」とやっとノーマルな考えができるようになっていて、これはこの家か土地に執着を持って憑いている霊ではないかと思った。
同じ時期、本州で暮らす弟も実家の夢を何度も繰り返し見ていたそうだ。
そして、弟も「あの土地には何かいると思っていた」と言った。
そのようなわけで、弟に先祖供養の仕方を教え、たぶん弟はそれをしていると思うが、私も供養を続けた結果、まったく不思議な現象は起こらなくなった。(・・・と妹は言う)
今回、弟と会って「あそこにいたのはどんな人で、何の理由で長い間いたのだろうね」という話をしていたら、弟は「それはわからないけど、いなくなったのは確かだ」と言っていた。
私もそう思う。長い間、気がつかずごめんなさいという想いが通じたのだと思いたい。
不思議話に花が咲き、久しぶりに姉弟やその家族が集まり休日のひととき、楽しい夜だった。
入院している父の様子を見るためだったが、帰省してくるのは半年ぶりだろうか。
半年に一度は帰ってくるというのは、これでも父が元気だったころに比べれば増えた方で、父が元気だったころには一年に一度帰ってくれば良い方だった。
仕事があるので、そう頻繁に帰ってくることができないということもあるが、帰ってくると父や近くに住む妹に気を使わせてしまうという遠慮があってか、あまり帰ってくることはなかった。
父はよく「元気ならば帰ってこなくてもいい」と言っていたが、寝たきりになってしまった今、弟が帰ってくることを知らせると表情が変わる。
一瞬、顔が明るく嬉しそうになるのだ。
やはり息子が帰ってくるのは嬉しいのだなぁと思う。
父は86歳だが、この年代のせいなのか、長男というものを非常に大切に思っているところがあって、祖父母が買った土地はすべて長男である弟に譲るという遺言状を書いてある。
これは父が元気だった頃に書いたもので、父は遺言状を前にして「家と土地は息子にすべて譲るがいいか?」と私と妹に聞いた。
もちろん私も妹も「それでいい」と了解した。
すると父はホッとした顔をして「おじいちゃんとおばあちゃんが北海道に渡ってきて、苦労して手に入れた土地だから息子に継がせたかった」と言った。
父は土地と言うものに対して非常に執着がある。
これは「自分の土地」に対してほとんど執着を持たない私たちとは違うところなのだが、「祖父母が苦労してやっと手に入れた」ということでは、父の気持ちは分かる気がする。
しかし、この執着が死後にも残ることがあって、それがまたそこで生きる人たちにとっては怖いことで、迷惑なことでもある。
「子供の頃から数々の霊体験をしていた」と最近カミングアウトした弟とは、今回は土地にまつわる不思議話をした。
実家の建つ土地は市の中心部に近い場所にあるが、私は子供の頃からこの家でいろいろな怖い体験がある。
仏壇に手を合わせると必ず同じ場所から大きな家鳴りがする。(これは家族みんなが分かっていた)
たまに居間の椅子に誰かが座っている。
これは目には見えないのだが気配がする。それを母に伝えると「やっぱり。おかあさんもさっきからそう思ってた」というので、たぶんそうだったのだろうと思う。
また誰もいないのに階段を下りてくる足音がすることもあった。
最も怖かったのは、20代の頃に経験したことで、寝ていたベッドの周りをグルグルと歩き回る人がいて、不思議なのはベッドの片側が壁に面しているにもかかわらず、壁の方もちゃんと歩く気配がすることだった。
薄目をあけてそっと見たら、黒いたびを履いた人の足だけが見えた。
男なのか女なのかも分からなかったが、生きている人ではないことははっきりと分かった。
この頃は頻繁にそのようなことが起こっていたので、怖さもあったが、それよりも腹立たしさの方が勝り、目の前に来た黒たびの足を思い切りつかんでしまった。
今思うと、若気のいたりで無謀なことをしてしまったが、つかみながら「勝手に人の部屋に入って、ベッドの周りを歩き回るとは何なのっ!」と怒りの感情をぶつけてしまった。
すると、その人は私のつかんでいた手をゆっくりと外すと、私の背後に回り思い切り首を絞めてきた。
今まで誰かに首を絞められる体験はしたことは無いが、この時は本当に息ができなくて死ぬかと思うほど苦しかった。実際に首を絞められるとこうなるのだなと思ったが・・・
その話を弟にしていたら「そういえば亡くなったお母さんも同じようなことを言ってた」と教えてくれた。
弟が母から聞いたところによると、母が寝ていると布団の周りを誰かがグルグルと歩き回って、しまいには布団の端をめくられるということがよくあったそうだ。
そういえばそんなことを母が言っていたような気もするが、あの頃は当たり前のようにそんなことが起こっていたので、聞いたとしても特に気にもしていなかった。
気にするようになったのは父が高齢者住宅に入って、実家が空き家になった頃だった。
近くに住む妹が誰もいない実家を訪ねると、仏壇に手を合わせると家鳴りは相変わらずするのだが、電池の入っていない健康器具が突然動き始めたりすることがあって、とても怖いと言った。
結婚後、実家を離れてずいぶん経っていた私は「そのような現象が起きるのはやっぱりおかしい」とやっとノーマルな考えができるようになっていて、これはこの家か土地に執着を持って憑いている霊ではないかと思った。
同じ時期、本州で暮らす弟も実家の夢を何度も繰り返し見ていたそうだ。
そして、弟も「あの土地には何かいると思っていた」と言った。
そのようなわけで、弟に先祖供養の仕方を教え、たぶん弟はそれをしていると思うが、私も供養を続けた結果、まったく不思議な現象は起こらなくなった。(・・・と妹は言う)
今回、弟と会って「あそこにいたのはどんな人で、何の理由で長い間いたのだろうね」という話をしていたら、弟は「それはわからないけど、いなくなったのは確かだ」と言っていた。
私もそう思う。長い間、気がつかずごめんなさいという想いが通じたのだと思いたい。
不思議話に花が咲き、久しぶりに姉弟やその家族が集まり休日のひととき、楽しい夜だった。