鼎子堂(Teishi-Do)

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『グランドシネマ・坂東玉三郎・日本橋』②泉鏡花と玉三郎

2014-03-24 22:51:49 | Weblog
春本番。
霞んだ空と少し澱んだような空気。


百年に一度の女形の誉れ高き坂東玉三郎。

このひとは、男でも女でもないし、男でもあるし女でもある。
生物学的には、男性なのだろうけれど、たぶん、その括りでは、分類できないヒトを超越した何かがある。

・・・だから・・・。

観客は、既に還暦を過ぎた彼の舞台に酔う。

それが、映画となると・・・。
その魅力の何割かは、無条件で、差し引かれることに成るのだけれど。
・・・それでも・・・このひとの天性の才能には、何の影響もないだろうと思っている。
思っているが・・・しかし・・・。
映像とは、不思議なものである。
カメラのレンズを通して映る被写体には、たぶん、オーラも映るのだろうか?

さて、この天才女形が、好む題材が、泉鏡花という文人だった。
同じ日生劇場で、演じられた『天守物語』の富姫。
相手の姫川図書之助役は、片岡孝夫(現・仁左衛門)。
究極の美形カップルである。

この『天守物語』を見た当時、私は、まだ10代の小娘で、観劇などは、高嶺の花。
チケットを買ってしまうと、帰りの電車賃さえ心もとない。
・・・それでも・・・日生劇場の二階の・・・小娘のワタシでさえ、狭いと感じる・・・一番後ろの席。
そこで、私は、初めて、この百年に一度の女形の舞台を見たのだった。

煌めき、幽玄・・・美しさにもいろいろあると知った舞台だった。

その後、玉三郎は、病的に神経質なこの文人の作品を次々に手掛けていく。

多分、初の映画だろう・・・『夜叉が池』。
『天守物語』の富姫のお仲間、白雪姫・・・。この映画は、失敗だったけれど。
その後、お庭をただ歩くだけの『外科室』の監督。

正直・・・鏡花の世界は、物語性を追うものにとっては、難解だとおもう。
急に場面が転換されて、その間の事情は、語られない。この・・・映画『日本橋』で、葛木の出家は、どう理解していいのかわからないところもある。

鏡花と玉三郎・・・まさに運命の邂逅。

理屈では語れぬ究極の美が、そこにある。それは、感じるひとだけが感じ取れる美でもある。

高橋恵子の清葉役は、絶品。