
7月28日(木) 晴
夕闇のなか、庭の花木に水遣りをしていたら、ふうわりと芳香が鼻腔に届く。
「風蘭っ!」
亡夫が、この家を建て庭を作ったとき(あ、それぞれ業者さんが手掛けてくださり、彼はローンを組んだだけでしたケド、)、表の庭に水琴窟を作り(これも、彼はボーナスをはたいただけで、)、築山の樹齢数百年とのことでお舅さまから贈られた槇の古木に風蘭を植え付けた。
ケト土を買い求め、水苔を巻いて養生を欠かさなかったおかげで、風蘭は株を増やし、まことに見事な槇の木のアクセサリーになった。
夫に逝かれ、これからどのように生きて行けばよろしいのか、答えの見つからない日々にも、植木は育つ。
毎年2回来てくださっていた植木屋さんには連絡を取らず、安価に済ませていただける市のシルバー人材センターにお願いして、「すっきり、バサバサ伐ってくださいませ」とお願いしたまでは良かった。
夫の実家から頂いた黒檀の木が切り詰められ、彼が育て、大きく根付いていた風蘭の株が槇の古木から剥がされ、うず高く集められた草の上に打ち捨てられている。
「奥さん、こんなものを槇の木に着けといたら、木から栄養を吸うて、せっかくの古木が枯れますよ」、「良いのです。主人が植えて楽しんでいた花ですから、槇が枯れても良いのです」
剥がされた大きな風蘭の株を小分けして、築山の槇のほか門柱の脇の門かぶりの槇の木にも、見よう見まねで植え付けた。
日本原産の蘭で、品よく可愛い花を付け夏にはバニラチックな芳香を漂わせる。なおまた、真の名前が富貴蘭と知って我が街・富貴ヶ丘に植えるにふさわしい…と生前の夫が氣に入って大切にしていた花なのだ。
結局、築山の木には根付かず前栽の槇の木と松の木に、その後毎年優雅な花と香りを残してくれる。
夕方にむせるような芳香が漂うので、ついつい花違いの「夜来香」を口づさんでしまうさくら♪である。
夏の夕方、花と香りに心奪われしばし立ち尽くす。
嗚呼♪
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