ナンセンス・カタログ (ちくま文庫) | |
クリエーター情報なし | |
筑摩書房 |
☆☆☆☆
凄い、谷川俊太郎さんって、やっぱり詩人。
この本は、言葉について、の150ものショートエッセイ集。
どの言葉についても、言葉のより選び方に感心。
最後の二行、そのまま、字数を整えれば、短歌になってしまう。
もしそんなふうに呼びかけることができたら、それが朝であろうが、
夜であろうが。一日がとても一日らしく感じられるだろうと思う。
たとえその日がじとじとと雨降りでもね。
床は人間と重力の接点なんだから、踏みしめるに足る硬さが必要だ。
皮袋に砂をつめこんだ凶器を、サンドバッグと言う。砂漠の砂嵐はしばしば
生命を奪う。無機物のくせに砂は生きもののように、いろんなところで
人間にかかわってくるな。
耳かきの無いとき、マッチの軸を使うことがあるけど、あのごつごつした
感触はいやだね。耳かきが洗練された一個の道具であることを再認識する。
とんびが輪を画いているのを見るのが好きです。子どもの手を放れた風船が空へ
消えてゆくのを見るのも好きです。たんぽぽの綿毛が風に吹かれるのを見るのも。
そりゃそうと、コンピューターは、あのうが言えないんだよね、気の毒に。
今かぞえてみたら、うちにはねじ廻しが十五本もあった。
それを全部使いこなしている自信はぼくにはない。
出した日付は、これは忘れるべきじゃないな。絵葉書は人と場所と時の
三位一体のはかなさに、いのちがあるんだから。
木漏れ陽の下では昼寝してしまうのはもったいない、
本を読むのも惜しい、そこにいるだけでいい。
季節はずれの果物や野菜も、ヴィニール・ハウスで育ったと思うと、
おひさまと無関係のような気がして、まずくなっちゃう。
詩人のわきだす言葉って、何気ない言葉なのに憧れますな。
「ナンセンス・カタログ」、どのような読まれ方をされるかは、
あなたまかせで、ございます。
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