MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『差分』

2013年10月06日 | BOOKS
『差分』
著者:佐藤雅彦 菅俊一 石川将也
美術出版社


 「2枚の絵の差をとることで、新しい何かが生まれる」という、脳の働きを考える新しい研究です。
 
 2枚の絵の「差分」、つまり2枚の絵の違いを見比べる・違いを感じることで2枚の絵の間にある(かもしれない)絵(動き)が頭の中に生じるということに注目して、いろいろな角度から研究しています。
 この1冊を読むと「なんで今まで、こういうことを考えずにきたのかな?」と思うほど、面白い「認知科学」研究です。

 著者である佐藤雅彦氏が監修している番組「ピタゴラスイッチ」(NHK)を見ている子どもたちの方が、上手に「差分」を見つけられるかもしれません。
 (「なにしてるてん」というコーナーに似ています。)
 すぐ分かる「差分」もあれば、時間がかかってやっと分かる(感じる)「差分」もあります。
 一度見つけてしまうと、もう見つける前には戻れないというのも面白い感覚です。

 「表象(Vorstellung)」という言葉も、今まで意識していなかった言葉でした。
 頭の中に思い描くイメージ、目の前にある物や過去の記憶・想像によって思い起こるイメージ。

 一度も見たこともないものを頭の中に何かを思い浮かべることが、人間にはできるんですね。
 私もファンタジーを読むときなど、頭の中で想像することがありますが、これも「表象」なのでしょう。

 脳科学者・茂木健一郎との対談も非常に興味深いです。
 一人一人が違う時間をかけて、それぞれの違う記憶・違う感覚から、それぞれの「差分」を感じ取るのだということ。
 アニメーションとは違う、それぞれの時間で脳が認識するというところが面白いと思いました。
(実際、私と夫では感じ取る「差分」が微妙に違う絵もありましたし、分かるために要する時間も違いました。)

 研究だと思わずに、パラパラとめくって「差分」を感じるだけでも面白い本です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする