梅雨とは思えない、土砂ぶりの雨
又しても大災害が起きました。
自然を前にしたとき、人間は無力です。
唯、この大雨が過ぎ去ってくれるのを祈る
ばかりです。
それは太古の昔から、そうだったのかも
しれません。
自然とともに生きていくとは、どういうこと
なのでしょう…
海辺にて
長田 弘
いちばん遠いものが、
いちばん近くに感じられる。
どこにもいないはずのものが、
すぐそばにいるような気配がする。
どこにも人影がない。それなのに、
至るところにことばが溢れている。
空には空のことば。雲には
雲のことば。水には水のことば。
砂には砂のことば。石には石のことば。
草には草のことば。貝殻には
貝殻のことば。漂着物には
漂着物のことば。影には影のことば。
椰子の木には椰子の木のことば。
風には風のことば。波には
波のことば。水平線には
水平線のことば。目に見える
すべては、世界のことばだ。
すべてのことばのうちの、
ひとのことばは、ほんの一部にすぎない。
風が巻いて、椰子の木がいっせいに叫んだ。
悲しむ人よ、塵に口をつけよ。
望みが見いだせるかもしれない。
ひとは悲しみを重荷にしてはいけない。