初女さんの本に挟んであった2月1日の
朝日新聞の天声人語を読み返しました。
『…起伏の多い人生を送っている。
結核に苦しみ、50代で夫と死別、
80代で息子に先立たれた。
そんな経験から得たものが、心に重荷を
負った人々の胸に届いたのだろう…』
この短い文章の中に初女さんの人生が
見えて来るようです。
80代で初女さんの一人息子を亡くされた時
本当に突然のことのようでしたが、
初女さんは、これで子どもを亡くした人の
気持ちがわかると思ったと、言われてました。
そして、亡くなったその時から、息子と一緒に
いると思ったと…
初めてお会いした時、そんな話をして
下さいました。
本当に起伏の多い人生を歩んで来られたから
人の心に寄り添い、深い愛情で包んで
下さったんだなと、思いました。
それは慈愛と言っても母性と言っても
良いでしょうか…
初女さんを前にしたとき、言葉も交わさず
泣き崩れる人を何度も目にしました。
黙って手を握って下さるだけで、抱えてきた
苦しみや悲しみを受け取ってもらえる
そういう気持ちになりました。
それは、初女さんが深い悲しみや苦しみを
体験された方だからと思います。
私たちは、出来たら起伏の少ない人生を
歩みたい。
悲しみや苦しみは、あまり体験したくなと
思いますが、心が深くなるためには
どうしてもそこを通らなければならないように
出来ているのかもしれません。
私が、亡くなった息子の写真を見せた時の
初女さんの頬を伝わった涙を、
今でも忘れることが出来ません。
初女さんは、苦しみの先にある喜びも
伝えてくれています。
光は、どんな暗闇の中でも差しているんですね。
『すんなり、するすると
幸福になることはなくて
生きていれば、何度でも繰り返し
苦しみがやってきます。
けれども苦しみは決して苦しみだけに
終わることなく
いつか喜びに変わります。
苦しみなくして刷新ははかれません。
真の幸福は、苦しみの中にあってこそ
実感できるものです。
佐藤 初女 』