世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

篠崎什

2012-10-13 07:30:56 | 画集・ウェヌスたちよ

詩集のときはけっこう訪問者数多かったけれど、画集にはいったら急にがたんと落ちました。何回も描いたのをまた描いているからかもしれないけれど、要するに、あまり男の顔なんか見たくないんでしょうか。けど、今日も一応、男の人です。

什さん、スーツなど着せても似合うでしょうが、いつもの普段着姿で。

彼は、血統的には弥生系日本人の顔立ちをしておりまして、目は二重ですが、切れ長の細い目をしとります。色は白く髪が長い。そのせいか、最近、外国から彼に会いにたずねてきた出版社の人に、女性と間違われたそうです。彼は、什さんの住む国の言語を独学で学んだそうで、流暢な言葉で言ったそうです。

「いや、てっきり男性だとばかり思っていましたので、びっくりしました」
そのとき、出版社の応接室に流れた空気がおもしろかった。什さんと一緒にいた同国人の編集者が、顔を覆って笑いをこらえていました。本人は、目が点になっていました。

本人も知らなかったそうで、彼は同国人にも、顔と顔より下が合わないとよく言われていたそうです。顔だけなら、彼は美男というより美女なんだそうです。髪を伸ばしても誰も切れと言わなかったのは、そのせいなのだそうです。

東洋人は西洋人に比して、骨格も体格も細めで小さいことも影響していると思いますが、外国から来た編集者はしきりに恐縮して、失礼をわびていたそうです。

    *

10月16日、イラストがやはり気に入らなかったので、改めて切りなおして、差し替えました。



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ドラゴン・スナイダー

2012-10-12 07:17:50 | 画集・ウェヌスたちよ
ドラゴン・スナイダー、30歳。

友人のアーヴィン・ハットンと、電話一本から始めた出版社が出した、第一作目の本、「燃える月」(ジョン・レインウォーター著)が、思いがけず爆発的ヒットを打ち、小さなビルの三階のフロアに会社を構えたころ。事務員も一人雇った。

アーヴィンは、この小さな出版社「ドラゴン社」(ドラゴンは、I&D社がいいと言ったのだが、アーヴィンが言い張って譲らなかったらしい)ができてからと言うもの、水を得た魚のように、活動を始め、まずはシノザキ・ジュウの最新詩集を出版し、次にレインウォーターの二作目の出版のための準備に入った。そして今彼は、飛行機に乗って、シノザキ・ジュウの住んでいる国に赴き、向こうの出版社と什に直接会いに行っている。前回の出版では書類のやりとりだけで契約を終えたが、今度は実際に詩人本人に会いに行きたかったのだそうだ。

一応会社では、ドラゴンが社長、アーヴィンが専務ということになっている。だがほとんどの仕事はアーヴィンがやっていると言っていい。ドラゴンの仕事は、まあおもに事務的なことと、時折アーヴィンの指示で、作家や画家と難しい交渉をしにいくことだ。どんな難しい相手でも、ドラゴンが行くと、なぜかうまくいくらしい。

ドラゴン・スナイダーの本格的な活躍は、彼が四十代になってからのことになる。そのときのことは、残念ながら物語には出てこない。なぜというと、作者には、詩的ファンタジーは書けるものの、醜い人間模様を赤裸々に書かねばならない企業小説やハードボイルドなどはとても書けないからだ。

しかし、スーツを着るとかっこいいね、ドラゴン。
初めて彼に会う人は、しばらく彼を見て息をのむそうだ。そして三人に一人の割合で、こういうそうだ。
「なんで君、ハリウッドにいかなかったの?」



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白髪金眼

2012-10-11 06:56:11 | 画集・ウェヌスたちよ

また描いてしまいました。白髪金眼の聖者。まだ物語の余韻は続くようです。
写真が下手で、あまり原画の雰囲気が出ていません。原画はもう少し、顔が少年ぽくなってます。なんか聖者さま、わかくなったなという感じです。

少々青味が来い菫色というか、色辞典で見ると、紫苑色という色に近い紙を切りました。でもカメラで撮ると、何か雰囲気が違うのです。色を撮るのて難しい。

これもまたいいですが、スキャナでとりこめるといいんですけどね。

最近男の人をよく描きますが、ほとんどは人間でない人ばかりです。人間の美男て難しいなあ。今のところ、人間の中で、わたしが一番きれいだなと感じる男性は、高倉健さんですね。その次が、水谷豊さんです。でも、人間の男性って、難しくて描けないのです。なぜかなあ。中身まで踏み込んで描こうとするからかな。

多分、人間の男性は、苦しすぎる。今が。そういうことを描くには、わたしは幼すぎるんだ。だから、人間以上の男性しか描けないのです。

あ、でも、アーヴィンやマルコムは描いたっけ。でもあれも、どちらかといえば、あまり人間ぽくないなあ。

それにしても、男性ばかりなので、カテゴリ名とだんだんあわなくなってきてる。このままでいこうか、変更しようか、考え中です。




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ながすゑを

2012-10-10 06:41:30 | 歌集・恋のゆくへ

ながすゑを おもひわずらひ 風窓に まよひきたりぬ 十六夜の月


追憶の 川面を歩き ひと振りの 金の笛吹く 風は血の声


痛きといふ 痛きおもひは 心臓の 隅に建てたる 小屋にしまひぬ


瑠璃の玉 手に弄び あをきもの すべてを思ひ なすべきをなそ


まんじゅしゃげ 摘みて抱えて なにもなき 胸満たさむと 百舌鳥の声聞く


秋の宵 枝に残りし 柿の実を ともしびと見て 道を正さむ


赤星の 空をすべりて われを訪ふ 長きおもひを 清めに来しと


泣けば泣け 喉割りて泣け たれがいふ わらひくだきて 前を向け我


若者よ つらしといふな くるしくも くるしといふな いへば星落つ


我は我の 君主とあれば 身を統べる ものは我のみ 我は我なり


長々と 歩き来し道 ふりかへり 月の光の さやけきの見ゆ


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青い地球

2012-10-09 07:16:22 | 詩集・貝の琴

青い地球の青い毛布を
ちょいとめくると
ほら人間が隠したものが
いっぱい出てくるんだよ

濡れたままの おねしょのシーツだとか
食べたふりして残した にんじんだとか
壊してしまった おとうさんのコップだとか
十二点の 算数のテストだとか
隣の子の机から 消しゴムを盗んだ時の
小さな心の痛みとか

みんな捨てて こんなところに
隠してあったんだね
さてとわたしは どうしよう
放っておくわけにもいかないから まあ
とにかくシーツは洗濯して 干して
にんじんは腐ってしまったから 埋めるしかないね
お父さんのコップは なんとか直してみよう
この算数の点数ときたら どうだろう
一応教えておくよ 誰だか知らないけど
いちたすには ろくだからね

さてこの小さな心の痛みは どうしよう
あらよくみたら たくさんあるなあ
同じようなものが
小石のようにたくさん 転がっている
ひとりではとても 掃除できない
みんなに頼まないと

みんな 手伝っておくれ
地球を きれいにするのを



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星の言葉・5

2012-10-08 07:44:05 | 詩集・貝の琴
今日のわたしは 少々憂鬱だ
昨日悲しいことがあったし
悲哀の蜂が ぶんぶんと
体の周りを 飛びまわるものだから

でもこんなときに限って
星がわたしのところに
また どうか人々に伝えてくれと
下りてくるものだから

わたしは憂鬱だから いやだといっても
そう悪いことではないかと思えたのだが
でも 性分というのは
どうしようもないので
ああ いいですよと 言ってしまうわけで

星はわたしの気持ちがわかって
つらそうにしていたけれど
やはり義務というか使命とかいうものが
あるらしくて 言うのだ

どうか 伝えてください
人々に 伝えてください
もっと 生きるものを 大事にしてくださいと

たとえば
スーパーで買った魚を
まな板の上で うろこをそる時
それがとても むごいことだと
一度でも 気づくことができる
そういう感性を 学んでください
魚は苦しいのです 痛いのです
ああ だから人間は 魚のために
無量の愛をそそいでください

たとえば 
犬を もっと大事にしてください
犬は たとえ人間が 
どのような闇や愚に落ちようとも
真実の愛で愛してくれます
ですから お願いです
鎖を もう少し 長くしてください
散歩をもう少し 長くしてください
簡単に 殺さないでください
暴力を ふるわないでください
愛していると 言ってください
苦しみを わかってやってください

ここは 生きるものを
殺さねば 生きていけない世界
だからこそ 愛がナイフの刃のように
心臓に触れてゆく
その痛みは 電流のように
魂を刺してゆく
愛のナイフは 決して心臓を刺すことはない
けれども 何百度も突き刺してゆく

人々よ
人間は 万物の霊長ではありません
青いたまごの中で
すべての愛に育てられている
小さな 命なのです
あらゆる命が 人間を育てている
その愛に こたえるということを
もっと深く学んでください
愛の段階を もう一段上がってください
そのために一番初めにやらねばならないことを
ああ ひとつだけ いいます

それは 耐えねばならないことです
恥ずかしいということに
耐えねばならないことです
人々よ どうかわかってください

わたしは こうして
星の言葉を伝えた
以上が 星の言った言葉である
なお 星の言った言葉は
実際はもっと簡単で
いくつかの単語を並べた短いものだった
それを わたしが
わかりやすく 噛み砕いておいた
だから ここに書いた星の言葉には
わたしの表現力が影響している

そういうことも考えて
よく 読み下してほしいと思う




 



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くすのき

2012-10-07 12:46:41 | 有為のしらべ

今日、犬の散歩をしていたら、友達のくすのきが、とうとう伐られてしまっているのを、見た。きれいだった緑の樹冠がなくなって、丸坊主になっていた。

ひとつ、発見したこと。人は、悲しいことに出会うと、何かが固まって、感情が動かなくなってしまうことがあるのだと、言うこと。

ずっと、あそこにいてくれて、一緒に生きてくれるのだと、思いこんでいたものだから。あの木が、なくなってしまうことなんて、ほんとは思ってはいなかったものだから。

初めて、あの光景をみたとき、なぜだかわたしは平静で、まるで他人事のように、ああ、いってしまうのか。いいよ、いってしまっても。ありがとう、と、落ち着き払って、あの木にあいさつしたのだ。とくに悲しみを感じることなんて、なかった。だけれど。

犬の散歩を終えて、カメラを持って外に出て、花の写真など撮っていたら、しんみりと、静かに悲しみがあふれ出てきて、それが石のように胸をふさいでしまった。頭から冷たく、何かがかぶってきて、わたしは人形みたいに動けなくなって、涙が出てきた。

蝶々が二匹、まるでわたしをなぐさめるように、頭の上を通っていった。露草が、日に透けて、静かに笑ってくれた。竹やぶの笹が、風に踊って、何かをわたしに語ってくれた。

仕方のないことなんだよねえ。わかってる。木は、人間を恨むことなんてしないよ。愛しているから。わかっているから。

でも、木が一本、いなくなっただけで、この世界から、愛が一つ、消えたのだ。それはとても微妙で、繊細で、ひなたに浮かんで見える、ホコリ一つの重さもないような、変化だけれど。

一番つらかったとき、一番助けてくれた、美しい木だった。愛してる。本当に愛してる。
ありがとうと、いうことばも、陳腐になるほど、苦しくて、言える言葉がない。

どうすればいい。どういえばいい。

ありがとう。



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びじん

2012-10-07 06:52:48 | 詩集・貝の琴

さて 今の自分はどんなやつかというと
まあ おんなで
あたまが そこそこよくて
かなり かわいい
うそじゃなく うぬぼれてるわけでもなく
ほんとにかわいいんだ
だって神様がそういうから


こういう状況で 何ができるかと
いうことを考えてみる
女で ほんとにあたまのいいやつは
自分のために ずるいことなんかしないよ
ひっそりとね 自分を影に沈めて
だまって そばにいてあげるんだ
それだけで 人を幸せにできるんだよ
ほんとにあたまのいい女の子は
そういうことができるんだ

きれいだということを
一番よいことのために使うんだ
やさしくほほえんであげるんだ
風のようによりそってあげるんだ
馬鹿なふりして 気がつかないふりをして
痛むところに そっと薬を塗ってあげるんだよ
だいぶ忍耐は必要だけど
そういうことができるのが 
ほんとにかわいい女ってものだから

ほんとのほんとに かわいい子は
ずっとこんなことを やっているよ
馬鹿なふりをして 頭の悪いふりをして
いいよ いいよって言って
どんなつらいときでも
ああ いいよって言って
全てを背負うのさ
それができるのが ほんとのびじんてものなんだよ



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十億匹の猿

2012-10-06 06:43:08 | 詩集・貝の琴

十億匹の猿が
神様の蔵から
ブルーベリーの実を一個盗んだ
そしてそれを銀行にもっていったら
なんと金貨で山ができたってさ

うれしくってうれしくって
猿はどうしたと思う
金の飛行機を作って
それで空を飛んだのさ
世界中を回って
珍しい宝をたくさん買いたいんだってさ

でも飛行場のちかくまで飛んできて
さて猿はふと気がついた
この飛行機 どうやったら降りるんだい?
猿はお互いの顔を見合わせていったものさ
え? え? え?
誰も知らないのかい? 誰も知らないのかい?

降りられなくて困った猿の飛行機は
空の上でぐるぐる回ってる
どうしよう どうしよう
このままでは燃料がきれて
飛行機が落ちてしまう
だれか 思いきって
飛行機をおろしてくれるものはいないか
金ならいくらでもあるから
飛行機を下ろしてくれ
でも猿はおどおどするばかりで
何もしない 何もできない

下から見てた人は言ったものさ
やあ 金の飛行機が飛んでいる
大きいね ぴかぴかだね うそみたいだ
何で降りて来ないのかね



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きみよ

2012-10-05 07:13:22 | 詩集・貝の琴

おどろくな きみよ
きみの すんでいる
きみの いえが
ほんの 五分のうちに
くずれさっても
おどろくな きみよ

なぜならそれは
さいしょから
きみのものではなかったからだ
きみよ どうかこのことを
しっかりと忘れないで
胸にきざんでいておくれ

きみのすむ その家は
ほんとうは ちがう人の家なのだ
きみのために
蜂の翅をもつプーカが
宝石の中に折りたたんで
盗んできたのだ
だからそれは いずれ本当の持ち主に
返さなければならない

きみよ おどろくな
なぜならきみはそれを 今は知らないから
そのきみの たいせつなたから
すべて きえてゆくことを
いつかそれを 知らなければならないときが
くるときのために 言っておく

きみよ すべてが
夢と消えても 驚くな
それは 最初からなかったものだから
本当の幸せは その中には
かけらもないのだ

きみよ きみよ
おぼえていておくれ
すべてをうしなったとき
これだけは言わないように
つらいと くるしいと いわないように
憎まず 涙を飲んで 耐えるように

ああそれでも 憎いときみがいうとき
きみを静かに 照らしてくれる月を 
せめて その愛を
あたりまえと 思うな
きみのために 涙を落してくれる空の
風にこめた愛のささやきにさえ
気付かずに 何もかもを見捨てて 
ひきとめる風を千切って 逃げるな




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