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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

神様

2012-10-04 07:16:27 | 詩集・貝の琴

君の幸せは 君がつかむものではない
君はすでに 幸せなのだ
でも今は それを言わないでおこう
いずれ君にも わかるだろうから
幸せとは 気づくものなのだと

野に倒れ込んで
やわらかな大地の胸に飛び込んで
風に自分をさらしてみる
自分にふれている何もかもが
虹のようにささやいて 愛で
何もかもを与えてくれるのが わかる

それがわかったとき 
君は幸せなのだ
幸せは君なのだ
君は幸せなのだ
愛が君を愛している

光を吸い込んだ宝石を雨のように散らして
赤ん坊のような笑顔で空を温めているのはだれ?
おまえがいるかぎり
どんなにかわたしは幸せだろうと
笑いかけてくれるあの大きな瞳はだれ?

知っている あれが
あれが
神様



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仮面

2012-10-03 07:00:22 | 詩集・貝の琴

にんげんが 自分の顔をささえている
その棒は 案外に 
もろすぎるものだ
金や銀の色を塗って
いかにも丈夫そうに見せているのだが
中はからっぽで ほんとうは
舞台の劇で使う偽物なんだよ

ああ 大切な人生のテーマを
書いた看板の縁を飾る薔薇の花が
ため息をついて教えている
嘘はおやめ
みな見抜いている

ああ にんげんが 支えている
重い石のような自分が
ほんとうは舞台用の
道化の仮面だと言うことに
いつ気付くのだい 君は
本当の君は
ジーザス・クライストのように
木に釘打たれて
ドライアードに抱かれて
ゆっくりと木に血を吸われているのだ

たましいを煮込む涙のスープの中で
ゆったりと温泉気分で
まどろみながら言っているのだ 君は

ああ 酒を 酒をもう一杯



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さみしさをみるとき

2012-10-02 07:33:35 | 詩集・貝の琴

さみしさを みるとき
わたしは いちめんの
みずいろの 水面の
上に 浮かんでいて
ためいきの ほそい糸で編んだ
白いレースの翼で
飛んでいます

水は静かで 広い鏡のようだ
わたしは 見えない糸に
空から つりさげられているかのように
あるいは 
飛んでいるまま 画像を止められたかのように
じっと動かずにいます

ああ 胸に巣くう熱い鳥が
ぐるぐる回りながら鳴いています
朱色の透き通った涙が
ほたほたと 水面に落ちます
すると一面の水は
まるで巨大な水琴窟のように

こおうん…

という音を たてるのだ
まるで わたしの魂を閉じ込めた
水晶の頭骨を 砕き散らすように

(目をとじなさい
というこえが きこえる
わたしは 目をとじる)

さみしさを みるとき
ふるさとを 思い出す前に
心臓に住む鳥を 毛糸で編んだ袋に入れて
眠らせてしまおう

そうすれば わたしは
まだ 生きていられるのだろう



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パキラ

2012-10-01 07:27:29 | 詩集・貝の琴

春まだ遠き頃
咲いたちいさな水仙の
こおりのため息を
砕いて 溶かした
愛に 月の光を
こめては 星のように
飛んでゆこうとする 思いの
どこにゆけばいいと
問う声に
緑のパキラが答える
静かな風に ついておいき
道はすべて
同じところにむかっている
晴れた空の 底なしの青の中に
飛びこんでお行き
まっさかさまに 水に落ちて行く
銀の魚のように


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