世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

2015-03-21 07:05:20 | 瑠璃の小部屋

とまった時計の中で
死んだ地球の上に
ひとり立っていた

海は ガラスをどこまでもしいてあるように
静かに 動かない
風は流れのままに固まった ゼリーのような手触り
もう少しすれば きっと氷のように硬くなるだろう

ぼくは人形のように動かずに立って
岸辺から海を見ている
空だけが 動いている
菫色の空に 白い雲だけが静かに流れている

淋しいと思うことなんかない
地球が生きていた頃も
ぼくはこどくだった
友達はいたけれど
いつもぼくは ひとり
自分だけが皆と違うような気がしていた

動かない地球を 眺めているうちに
ぼくはひとり歩き出した
生きているのはぼくだけかな
ならばぼくにはしなければならないことがある

そしてぼくは 砂浜に落ちていた石をひとつとると
それに小さな詩を吹きこんで
空に投げたのだ
小さな石は空に飛びだした途端に
白い鳩になってかなたに向かって飛んでゆく
これでいい

そしてぼくは ベッドの中で目を覚ます
ほら いつもぼくはこうやって
世界をすくっているのだ
死んでしまった地球も
滅んでしまった人間も
焼きつくされた森も山も
干上がった海も
無残な血の流れた町も
すべては ぼくが見た夢になった

だから地球は まだ生きている
まだ間に合う
まだ助かる

すべては




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栗鼠

2015-03-20 07:02:53 | 瑠璃の小部屋

緑色のろうそくに 火をつけよう
ほら 朱色の小さな小人が
ダンスを踊りだす
光をまとって 歌いながら
火花のようにリズムがはじけるよ
夢みたいだね

赤いろうそくに 火をつけよう
ほら 紅の薔薇の妖精が
ダンスを踊りだす
まっかなはなびらのドレスが
くるくると回ってリズムに乗るよ
きれいだね

青いろうそくに 火をつけよう
ほら 星の海に住む銀のメダカが
ダンスを踊りだす
真珠のようなしずくがはねて
光の中で虹のリズムを歌うよ
信じられないね

白いろうそくに 火をつけよう
ほら 君の胸に住む小さな栗鼠が
ダンスを踊りだす
クルミの木の香りが笑って
静かな森のリズムを呼んでくるよ
不思議だね




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この道を

2015-03-19 07:01:11 | 瑠璃の小部屋

雪降る 白きも静かなる道を
こころなき 白貝のごとき雪の
冷たく ほろほろと落ちる道を
ぬれそぼち 歩きゆく
紅梅のごとき われの耳を
穏やかな刃のごとき冷風の切る

雪は鉛の粒のごとく重く
凍てつくこほりにとぢこめし
にくきあざけりの
しじまの舌のごとく
われのほほを打ちにければ
われのほほを流れる涙は
湯のごとく熱く したたり落ち
白き雪の上に
うさぎの足跡のごとき
ちさき穴をこしらへゆきたり

まだ ゆくか この道を
風の中に姿なくも我に問ふものはたれか
問ひてきくもせん無きことと
知りながらも問ふ
おまへはたれか こたへはすまい

かろきつみも おもきやみも
すべてを ましろなるこほりの雪にて
かくしつくさむとした者の
いつはりをかなしむは
おろかともおもひつつもわれはいふ

まだ ゆく この道を
ましろにも こころなき
白き蛾の雪の降る こほるしじまの道を
われはゆく

まっすぐに




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明日

2015-03-18 06:50:07 | 瑠璃の小部屋

苦しみが胸から去らない時は
心を青空に飛ばそう

木々の梢を櫛といてゆく
風のように飛んでいこう

花々の香りが作り出した
透明な海に飛び込んでいこう

光は心の壁を透いて
暗がりにひずんでいた君の胸を
温めてくれるだろう

かすかな鐘の音が聞こえるのは
世界の裏側で誰かが
神様の愛のために歌っているからだ

涙は消えなくても
明日を生きていく力が
胸の奥から あふれてくる

笑ってごらん




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神様の声

2015-03-17 06:53:34 | 瑠璃の小部屋

オルゴールのように
ぼくを開けてごらん
ほら 小さな声が聞こえるだろう
まるで静かな音楽のような
これはね ぼくが
一度だけ聞いたことのある
神様の声なんだよ
ほんとうさ

神様の声は
つげの木のささやきに似ていて
からまつの林の静けさに似ていて
爪よりも小さな白い小人のように
ぼくの耳から入ってきて
ぼくの心に小さな穴を掘って
うさぎのように すみついてしまった

神様の声は なんて言っていると思う?
ぼくはそれを 一生懸命に書いてみたんだ
知っている限りの言葉を使って
使える限りの技術を使って
直喩に使える魚や鳥を探して
隠喩に使える絹や毛織の絨毯を探して
そうやって 神様の言葉を全部
やっと書けたと思ったら
ぼくはいつしか 小さな青い小鳥を作っていた

小鳥はちるると鳴いて
そのまま僕の手から飛んで行って
あれきり帰ってこない
どこへ行ったのか わからない
でも ぼくはもう一度 神様の声を書いてみた
そうしたらぼくはいつしか
とてもきれいな銀色の蛾を作ってしまって
それもまた 夜のしじまの向こうに
すぐに飛んで行ってしまった

おかげでぼくは 神様がなんて言ったのか
いまだにわからない
でもあの声は いつでも聴くことができる
この胸の中で ぼくの心臓と一緒に生きているから

いつかきっと ぼくには
神様が 本当は何を言いたいのか
わかる時が来る
そうしたらみなに 教えてあげよう
ああ ぼくはそのとき それはたくさんの
薔薇を 世界中にまくように
幸せなことだろう




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悲しみは夜に

2015-03-16 07:05:46 | 瑠璃の小部屋

悲しみは 夜に歌おう
白い星が 雨あられのように
降ってくる この地上の
奇跡の映画が 見えるときに

悲しみは 夜に歌おう
小さなグラスに 虹色の金平糖を入れると
星の火が燃えて そこから生まれた白い小鳥が
君の心の小窓を 訪ねてくるときに

悲しみは 夜に歌おう
銀の瓶に差した 赤いバラが
閉じた心を開いて
真珠のようなため息を 
君の耳元に届けるときに

悲しみは 夜に歌おう




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風と真珠

2015-03-15 07:48:54 | 瑠璃の小部屋

この世界のすべては たった一羽の小鳥の中にある
この青い空のすべては たったいっぱいのコーヒーの中に入る

この青い世界のすべての花は 君の心の中に咲く
この空のすべての星は 
君の大すきな小さな小猫の瞳の中で光る
この世界のすべての愛は 
一つの小さなかわいい真珠の中にある
この世界に吹くすべての風は 
花弁の形をした貝細工のような 
君の耳の中を吹き抜ける

そして今夜は みんなでいくんだね
内緒の夜の ハーフ・ムーン・コンサートに
そしてみんなはやっとわかるのだ
この世界のすべての声はみな 
愛してると言ってることに

白い銀河のほとりで 今夜 今夜 今夜こそ
僕は君をみつける 君に出会える
そうしたら僕は君のために 
虹の香りで銀の薔薇を作ってあげよう

愛してるよ 君を とても
まるであの 静かな緑山の子宮の小屋に住む
秘密の金の蝶のように




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魔法

2015-03-14 07:24:12 | 瑠璃の小部屋

銀の炎を着た君は
風に揺れる白い菊のように指を揺らす
すると本当に
指先に白い真珠のようなつぼみが現れて
それを卵にして 君はたくさんの白い鳩を生むのだ
鳩はしばらく群れとなって上空を何度か回った後
ばらばらになって菫色の空に溶けていく

ああ よく見れば
銀の炎と見えた君の服は
風を凍らせて作った雪のように白いスーツだ
光が毛羽立つように君を覆っている
氷なのに 静かに燃えている
熱くはないのかい?と尋ねてみると
君は 氷だからねと そっけなく答える
ああ ほんとに
僕ときたら わかるはずなのに
わからなくて いつも
変な質問ばかり君に聞かせてしまうのだ

心が 目から滴って
体の重さに負けてしまう前に
僕は彼をまねて 魔法をやってみた
すると 僕の手は風に踊る菜の花のように揺れて
黄色いつぼみを卵にして 白い蝶々がたくさん生まれるのだ
ああ と僕は叫ぶ
白い蝶々は風の中を紙ふぶきのように舞いながら
やがて風に乗ってどこへともなく消えてゆく
僕がうれしそうな顔でそれを見ていると
君がいうのだ

すてきだね 君はもっと
心を大きくしていいと思うよ

うん
君がそう言ってくれるので
ぼくは本当に助かる
アクリルで作った偽物の空気が 
一瞬で本物の空気に戻って
呼吸が楽になって
ああ まだ生きていけそうだなって 思う




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蒼杉

2015-03-13 06:49:06 | 瑠璃の小部屋

ひとりゆく 蒼い杉の森を
耳の奥の ちいさなまいまいが
かすかな笛の音につまずいて
よろめいたと思うと
ぼくはいつの間にか倒れていた
地面がぼくの体温をすべて
吸い取ってしまう前に
立ち上がったが

ぼくはそのとき
めろんのように大きな真珠が
鳥のように目の前を飛んで行ったことに気付いた
何事なのだろうと
思わずそれについていくと
蒼い杉の森はだんだんと暗闇に塗りこまれて
さて困った
ぼくはどこからきたのか
どこへいけばいいのか

とにかく 大きな真珠はまるで
空から降りてきた白い月のようだ
杉の森の奥に 一本だけ
青ざめて生えている小さな銀杏の木の上で
くるくると回っている
ああ 周りを背の高い杉に囲まれて
まだ若い銀杏は日を浴びることができず
痩せ衰えて
黄葉をするにも絵具が足りずに
まるで青白く 今にも倒れそうなのだ

なぜ 蒼い杉の森などに 君は来てしまったのか
なぜ ぼくは 人間の町で 生きているのか

時々 わからなくなる
はたして僕は みなと同じ種類の生き物なのだろうか
もしかしたら僕は 人間ではなく
森の奥に芽生えるはずだったブナの木ではないのか

落ちていた古い杉の枝を削り
僕は小さなオカリナを作る
そして 青ざめた銀杏のそばに座り
カノンを真似た旋律を静かに吹いてみる
君も僕も 似ている
きっと僕も 君と同じように
誰かが 間違って違うところに落とした
小さな種だったのだ

オカリナの調べに
月のような真珠はくるくると回り
誰も知らぬ秘密のことばを ぼくらにささやいて
ふふ と笑う

昔 人間はみんな
あなたのような人ばかりでしたよ
それがいつのまにか
みんな違う種類の人間になったのです

僕は目を閉じて オカリナを吹く
なぜと 尋ねてはいけないことを僕は知っている
ただ ひととき
僕は一本の銀杏の木を慰めるために
笛を吹こう
月の光に染まった 僕の小さな時間の帯を
神様はひっそりと見ていて下さるだろう




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愛よ

2015-03-12 06:44:02 | 瑠璃の小部屋

愛よ おまえはいく
愛の ために
愛よ おまえはいく
愛の ために

針の 雨の中を
たぎりたつ 風の中を
ののしる いかづちの森を
愛よ おまえはいく
愛の ために

国境を越え 怒りを捨て
愛よ おまえはいく
愛の ために

愛よ おまえはいく
愛の ために





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