世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

どこへ

2015-10-21 04:02:09 | 詩集・空の切り絵

馬鹿が偉いという
世界を創りたかったんです
勉強したって
あいつらには追いつけないから
そんなのは馬鹿にして
馬鹿の方が偉い世界を創ろうとして
あらゆることをやったんです

人からいいもん盗みまくって
馬鹿ばかりえらくいいもんにして
本当にいいやつには糞ばかり食わして
ぜんぶだめにしてやったんです

そしたら 突然世の中ひっくり返って
今までやってきたこと
すべてがだめになったんです
なんでって 俺たちが創ってきたものみんな
馬鹿が好きになるおもちゃみたいなもんばかりで
本当の人間はそんなもんいらないっていうんですよ

地位も名誉も金も大きな家も美人の妻も
馬鹿かおまえはって言われるだけで
うらやましいなんて誰も思ってくれない
おれのもんみんな
何でもない馬鹿になってしまったんです

みんな みんな行ってしまう
新しい世の中に
星みたいな光を持って
行ってしまう
おれはどうすればいいんだ

馬鹿ばかりになった
おれのガラクタを引きずって
どこへいけばいいんだ

(もうやめろ)
どこからかだれかの声が聞こえる




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神様は

2015-10-20 04:07:56 | ちこりの花束

 学校を卒業しても、人生の試験ていうのって、あるような気がします。何げないところで、結構重要な選択を迫られる時って、ありませんか。例えば、役員会で、どんな発言をするのかってね。そういう決断を迫られる時、神様はじっと、人間のすることを見ているそうですよ。
 いやあ、何となく予感はしてたんですけど。まさか、ほんとに、「私がやる」と言ってしまうとは…。いや、PTAの会長のことなんですが。
 会長になりたがる人なんていませんから、誰もが自分以外の誰かに押しつけようという、結構険悪な話し合いだったのです。でも、ああいう状況で、最後まで、他人に押しつけようとする態度を取り続けていたら、自分の奥で、神様がとても悲しい顔をするような気がして、つい…。でも、引き受けてしまった時は、落ち込みましたよ。こんな自分にできるのかと。
 でも、これも、新しい自分になるための、いい学びの機会なのだと思って、がんばることにします。
 これも、ある意味で、古い自分からの「卒業」かな。


(2005年3月ちこり33号、通信欄)




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夢買い

2015-10-19 04:04:26 | ちこりの花束

 空を飛ぶ夢は、性的な意味を持つと言われています。私も子供の頃はよく夢の中で飛んでました。鳥のように飛ぶというよりは、高くジャンプするという感じでしたが、なかなか楽しかったです。ところで夢は無意識からのメッセージと言われますが、こうして、人の耳目に触れるところで発表すると、重大な意味が発生します。もしかしたら、その夢を見た当人のSさんではなく、他の人へのメッセージかもしれないという可能性が出てきます。北条政子の夢買いの話は有名ですよね。ある日、政子の妹が、日と月を袂に入れるという吉夢を見たのですが、政子は櫛一つでその夢を買ったのです。だからその夢は政子のものとなり、政子は後に一国の主のような存在にさえなったという話です。さて、足元から崩れていって、無事に着地するというSさんの夢、もしかしたら、これを読んだ誰かが、それを受け取ってしまったかもしれませんよ。辛いことがあって崩れそうになるけれど、無事に切り抜けられると解読できるこの夢、誰が受け取るでしょうか。欲しい人は手を上げましょう!
 こういうこともあるので、もし吉夢を見たら、誰にも言わないでおきましょうね。


(2003年3月ちこり27号、通信欄)





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ひかり

2015-10-18 04:22:10 | 詩集・空の切り絵

あしたの ひかりを
野の花のように摘んで
心臓の壺に差し
生きてゆくことが
小鳥が土の中を飛ぶことよりも
むずかしい
世の中を 生きていました

みんな 人間は
自分の思いどおりにならないことばかりで
生きるのが苦しくて
傷つけあってばかりいて
それでいっそう生きることがつらくなって
また人間同士で馬鹿にしあって
もっと苦しくなって
世の中は そんなことばかりで
正直に美しく生きて行こうとすることは
本当に難しかったのです

空を見上げながら
神さまの涙を飲んで
わたしを信じてくれる
すべての風を抱きしめて
明日も生きて行こうと
わたしは自分の心臓に棲んでいる
小鳥に言いきかせて
生きていたのです

何をしなければならないのかは
なかなかわからなかった
けれど 空の上から
虹がわたしのところに降りてきたとき
それがわかった

つらくても 苦しくても
自分を捨てずに
がんばって生きて来たことが
これですべて生きることになる
わたしはそう思って
胸一杯に風を吸い込んで
高く 高く 世界中に向かって
小鳥のように歌を歌ったのです






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心を動かす

2015-10-17 04:01:47 | ちこりの花束

 職場の人間関係では、種野はあまりストレスを感じる方ではないです。きつい人はいて、よく怒られて、その時は落ち込んだりするんですけどね。そこはザッパなO型。一日経つと忘れてしまうというか。でももしかすると、その分周りの人がストレス感じているのかも。
 他人の中にいると、何かの摩擦はつきものですが、種野はできるだけ人の愛すべき点を探すようにしています。だって嫌ったり憎んだりすると、心が重くて息が詰まるんだもの。心が地獄模様になってしまう。地獄になんて住むのはいやだから、どんな人にも、どこかに美しい所があるはず、そこを探そう、と。もちろん、それだけでは乗り越えられない壁もあります。人間の気持ちというのは複雑怪奇ですから。それはそれで、その時に学び、工夫していこうと思っています。そんな努力をすること。それそのものが、心を動かすこと、生きることに通じるのじゃないかなあ。



(2003年3月ちこり27号、通信欄)
(※かのじょは通信欄では種野と自称していた。)






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小さいもの

2015-10-16 04:07:48 | 月夜の考古学・本館

小さいものは 哀しい
自分の小ささが 哀しい
だから
とどかない星を
憎む ねたむ のろう
毒を吐くことしか できない
だから
よけいに 哀しい

小さいものが 救われるには
どうしたらいいのだろう



(2003年11月、種野思束詩集「種まく人」より)





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合成人間

2015-10-15 04:05:59 | 詩集・試練の天使

今の世界は
合成人間の世界です
合成人間ばかりが
人間の世界を歩いています

昔は本当の人間がたくさんいましたが
今の時代は 合成人間が
本当の人間をほとんど殺してしまいました
なぜなら本当の人間がいると
自分が合成人間であることが
簡単にばれてしまうからです

なぜこんなに合成人間が増えてしまったのか
それは本当の自分をいやがって
他人から盗んだ美を組み合わせて
全然違う肉体を作り
心もほかの心と混ぜ合わせて
全然違う心を作って
全くちがう自分になりたかった
そんな人間がいっぱいいたからです

合成人間は
自分と違う者になれて
うれしくていっぱい楽しいことをやりましたが
死んでから 
全てが嘘だったということに気づいて
夢から覚めたようにがっくりしました
自分はけっこうすごいやつだと思っていたのに
本当はひねた餓鬼のようなつまらないやつで
自分の人生でやったすべてのことは
自分がやったことじゃないということに気づいて
馬鹿馬鹿しくて しんどくて
糞みたいな人生だったとつばを吐いて
どこかへ行ってしまいました

合成人間は
人間がずるでやってることだから
どんなに一生懸命やっても
何にもならないのです
何も自分の力にはならないのです
本当の自分でやったことでないと
自分の本当の力にはならないのです

合成人間は 死んでから
本当の自分に戻ると
あんまりに自分がみじめで悔しくて
泣けてきて
どんなにがんばっても
みんなのようになれない自分が
いやでいやでしょうがなくて
またいつものように
今度の人生も合成人間にしてくれと
馬鹿のたまり場にやって来るのです




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2015-10-14 04:29:59 | ちこりの花束

 人間って、苦しい時ほど、よく空を見るものですね。私も、よく空を見ます。青空や雲や日や月や、風の音の中にも、神様がかくしておいてくれた私への手紙がないものかと、探してしまうのです。つらいことがあっても、がんばれと、だれかに言って欲しい。そんなことばかりがよくある今日この頃。でも、なんとか、がんばれているのは、神様からの手紙が、言葉ではわからなくても、確かに私の心に届いているからでしょう。時々、自分という小さな入れ物の容量では、とても生み出せないほどの喜びが、ただ生きて日を浴びているというだけであふれ出してくることがあるのです。それはきっと神さまからの贈り物。生きなさい。耐えなさい。前に進みなさい。言葉がぶつぶつと沸騰する泡のように生まれて、どこかはるか上に向かって吸い込まれていく。どんなことがあっても、生きていこう。そう思うことができるのは、空の向こうから誰かが見てくれているから。そう思っても許されるでしょうか。


(2003年3月ちこり27号、通信欄)




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小鳥

2015-10-13 04:13:24 | ちこりの花束

 先に、勤め先の書店で児童書の担当をしていると皆さんにお便りを書きましたが、店長の指示を無視して、いろいろ自分の好きな本を注文してましたらば、ある日突然担当を外されてしまいました。(いや、多分ほんとの理由は他にあるんでしょうが…) 職場で絵本の読み聞かせやってみたくて、図書館で読み聞かせの講習を受け始めていたところだったので、ちょっとショックだったです。やっぱりお仕事は甘くないですね。新しく担当になった人の仕事を、未練タラタラの目で見つつ、どこが悪かったのかしらと模索する日々です。
 今はレジ担当で、仕事中ほとんどレジに立ってます。まあ、お客さんと本の話をしたりすることは嫌いではないのですが、やはりどこか物足りなくて、ヒマでボーっとしてるときなんかは、ため息を深々とついたりしています。
 担当を外れることを言い渡された日の帰り道、バイクで走りながら、涙が出てしょうがありませんでした。パートのおばちゃんは仕事に夢見てはいけないのかなぁ…。絵本の読み聞かせをやれば、きっと人が集まって活気づいてくる。そしたら本も売れるし…。自分なりに考えてたんですが、甘かったです。
 そんな夜には、とてもシンボリックな夢を見てしまうもの。それは妊娠していた子供を流産してしまう夢でした。突然破水して水がとまらなくなり、子供が流れ出てしまう。目を覚ましても、私の中を通り抜けていった小さなかたまりの感触が、生々しく残っていたほどでした。しかもその子供は人間の子供ではなく、白い鳥のヒナだったのです。とても冷たくて、小さくて…、目を閉じて、死んでいました。
 考えてもしょうがないことですね。どんな仕事にも壁や試練はつきもの。要はそこをどう工夫して楽しく切り抜けるかです。何かに挑戦して、少しずつでも自分が成長していくのを感じるのは楽しいですから。今はだからレジでできることを一生懸命にやるだけです。少しでもいい気持ちで買い物をしてもらえるように、お客様にはいい言葉と笑顔で接していこうと思います。
 でも、いつかまた、児童書の担当やってみたい。生きることは壁ばっかりだけど、あきらめずにまた、何度も何度も夢みていこうと思います。夢みてさえいれば、また新しいヒナが、私のおなかに宿るから…。


(2002年11月ちこり26号、編集後記)




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光の実

2015-10-12 04:05:16 | 月夜の考古学・本館

わたしは
世界の入り口に立ち
ミノムシのように
硬い毛布にくるまって
一粒一粒 光の実を食べていました

まだ少し 眠いな

おかあさん
わたしが目を覚ますのは いつ?



(2006年11月、南野珠子詩集「ひとつの星」より)




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