◇教来石を越えて蔦木へ
教来石(きょうらいし)宿という妙な名の宿場を通る。
そろそろ12時になろうとしているが、途中に食事が出来る店も食べ物
を売る店もない。またも昨日の悪夢の再現かと心配していたら、やれ
ありがたや、甲州と信州の国境に架かる「国界橋」の袂に新しいコン
ビニがあった。「かつ重」などを買って、田圃道の草の上に腰をおろし
昼食をとった。日差しは強かったが涼しい風が心地よかった。
蔦木宿は珍しく東西の入口が枡形になっている。この先で釜無川
を橋で渡ると今夜の宿「信甲・館」がある。隣は「フォッサマグナの湯」とい
う保養施設であるが、甲信・館は露天風呂もあり、日帰り入浴客も受
け入れている。予定より早く、3時のご到着である。早速風呂に入り冷
たいビールを呑んで一休み。すぐ夕食の時間になる。
今夜の同宿客は4組。お隣に若夫婦が座った。
「帳場で甲州道中を歩いている方と伺ったのですが・・・」と若奥様。
聞けば結婚3年目であるが、「夫婦で共通の趣味を見つけたいね」と
いうことで、手近かの甲州道中を歩き始めたのだという。
我輩から見たらばまだ若輩の身でありながら、早くも夫婦の紐帯に
思いを致し、共通の趣味を持たんとするはなかなか立派である。また
夫婦仲もいい(1杯の生ビールを仲良く分け合って呑んでいた。)。
このような若者を社員にしている会社はきっと伸びるに違いない(と
思う)。
「次歩くのなら中山道がお薦め・・」とか言ってそそのかし、今後の情
報交換を約した。
花と思いきや葉っぱ 白州町は雷鳥と石楠花と甲斐駒ケ岳 道祖神団地
瀬沢大橋を渡るといよいよ急坂を登り山道に入る。傍らの水路を清
冽な水が走る。やがて重収の一里塚跡があり、標高950mとある。韮
崎との標高差約450㍍である。随分登ったものだ。
原の茶屋辺りでは961㍍となっていて、この辺りが富士見峠かもし
れない。御射山神戸の一里塚は珍しくも左右の塚とケヤキの巨木が
残っている。樹齢380年、樹高25米、樹周囲6.9米という威容で、枝葉
が辺りを覆い、かっこうやキビタキ、鶯などの鳴き声が心地よい。
赤米、黒米など古代米の里 一里塚のケヤキの巨木 思わず見とれた空木の花