読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

中山七里の『鑑定人氏家京太郎』を読む

2023年05月03日 | 読書

◇『鑑定人氏家京太郎

         著者:中山 七里  2022.2 双葉社 刊

  
        今を時めく中山七里の「鑑定人氏家京太郎」シリーズ第1弾。
  鑑定をテーマにしたサスペンスは珍しい。事件そのものもプロットもさして特徴はないも
 のの検察(警察)と鑑定人(弁護士)との丁々発止の攻防が魅力。最終章で驚愕の真相が明
 かされる。とにかくエスプリの効いた辛辣なやり取りが小気味よい。

    「氏家鑑定センター」の所長氏家京太郎は常連客の吉田士童弁護士から連続通り魔殺人事
 件として世間の耳目を集めた裁判での鑑定を依頼された。事件の容疑者那智貴彦ご指名で弁
 護人となったというのである。医師である那智は3人の若い女性を扼殺したうえ子宮を摘出
 するという残虐な殺人を犯した容疑者として逮捕されたのであるが、当人は最初の二人につ
 いては犯行を認めたものの第三の殺人は身に覚えがないと主張しているという。
  吉田弁護士によると那智が否定する第三の殺人の物証の一つ加害者の体液について鑑定を
 頼みたいというのである。
  吉田弁護士によれば依頼人那智は至極まともな意思疎通能力を持ち水準以上の知能の持ち
 主で客観性を持ち合わせているという。

  実は氏家は20年前に科捜研(警視庁科学捜査研究所)の一員であった。鑑定案件を巡り
 あわや冤罪者を生む同僚の不始末を指摘したことが原因で組織内で白眼視されたことから科
 捜研を自ら追ん出て民間の鑑定業を立ち上げたた経緯がある。
  那智案件では東京地検の公判担当検事は谷端一級検事、ヤメ検と呼ばれる吉田弁護士にと
 ってかつての同僚でありライバルだった。
  この事案を担当する増田判事の下で3回にわたって公判前整理手続きが進められた。

  鑑定の焦点は第三の殺人事件で被害者に残された体液が那智のものとされたDNA鑑定結果
 が別人のものではないかという疑問である。
  氏家の鑑定センターには警視庁科捜研出身者など優秀な鑑定士がそろっていて、氏家らは
 事件の証拠収集に当たった所轄の刑事らの協力を得て、鑑定試料が途中ですり替わっていた
 に違いないという結論をうる。
  科捜研の鑑定結果を否定することは元科捜研鑑定士の氏家にとって忸怩たるものがある。

     そんな中氏家鑑定センターでは鑑定結果保管庫が荒らされたり、DNA鑑定の担当鑑定士が
 襲われ暴行を受けるなど不審事に見舞われる。新たな鑑定結果を恐れるのは誰なのか。
 
  那智事件 第二回公判で氏家はDNA鑑定結果について所見を証言する。
        あまつさえ氏家は残されていた試料から第三の事件被害者が妊娠していたという検査結果
 が出たことを明らかにした。
  谷脇検事は呆然とし、科捜研は蜂の巣をひっくり返したような騒ぎとなる。マスコミから
 は当然の如く科捜研への非難が集中する。
   
  では一体だれが鑑定試料を入れ替えたのか。そして第三の事件の真犯人は誰なのか。
       
  氏家は公判の結審前にある人物を訪ね、自首を勧める。
                               (以上この項終わり)
  
 




 

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