リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

スイス「里帰り」記(17)

2007年06月29日 11時25分01秒 | 音楽系
私はちょうど真ん中のやや後ろよりの席でしたが、スヴェンのテオルボの音はよく聞こえてきました。ただ、彼はあまり和音を弾かずにというかめったに和音を弾かずに主にバスのラインだけを弾いていました。ヘンデルやバッハみたいに低音の動きが多い曲だと、テオルボで和音を弾きながら全てのバスを弾くのは実際上困難です。そこでどういう方法をとるかは、リュート奏者によって異なってきます。今夜のスヴェンみたいにほとんどバスのラインを弾くのに主眼を置く人と、バスは場所によっては経過音を省いて演奏して、和音や旋律をできるだけ入れていく方向の人とあります。技術的には前者の方が簡単ですが、それでも同じ左手4本の指でチェロは低音のラインのみを弾いているわけですからそれでも充分大変です。後者はそこにさらに同じ4本の指で和音の分を押さえなければらないのですからさらに大変なのはご理解いただけるでしょ?私の場合は、大変なのを承知で後者の方法をとっています。というのはリュートの音ってもともと小さいので、いくら大型のテオルボでバスのラインを補強したところであんまり補強にならない感じがするんですよね。それよりもより多くの弦をはじいた方が(いい形の和音をいいタイミングで)効果的だと思うんです。実際スヴェンも何カ所かでは和音を弾いていて、それが意外とよく通っていたので、もっと沢山和音を入れたらよかったのにと思いました。

コンサートは夕暮れ時から夜にかけて行われたこともあり、始めはステージに夕日がさしてそれが照明の代わりになっていて、次第にそれが中の照明にとって替わられていきました。すっかり夜になったころにはオラトリオもクライマックスを迎えました。この公演は明日もここで行われますが、私は明日はプレディガー教会のバッハカンタータを聴きに行こうと思っています。それにしても歩いていけるところでこんなコンサートが頻繁に開かれているというのは、バーゼル市民がうらやましいです。この点に関して彼我の差は大きすぎますね。そういやバーゼルから電車で10分くらいのリースタルというとこで行われていたヴィヴァルディのコンサートはヘンデルとかぶってて結局は行けませんでした。ヴィンセントのコンティヌオも聴きたかったんですけどね。ヴィンちゃん、ゴメン!