リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

スイス「里帰り」記(13)

2007年06月25日 13時49分09秒 | 音楽系
シャテル・サン・ドゥニに着きましたがこちらのもくろみははずれ、モーリスはまだ来ていませんでした。もうちょっと早めに電話すればよかったかなと思って、帰りの列車の時刻表を眺めていたら、モーリスが現れました。相変わらず元気そうでした。彼の家に到着してまず外のベランダでコーヒーをいただきました。空は晴れ渡り、非常にさわやか。いつきてもここは空気がおいしいです。明らかに空気の成分が相当異なり、味を感じます。日本からバーゼルに到着したときでも空気がきれいだと思いましたが、バーゼルと比べるとまた一段とおいしい空気です。こんなきれいな空気を吸って誕生した楽器が日本の空気の中で生活するのはちょっとかわいそう!?

ちょっと一服のあと、早速新作の楽器を見に、階下の工房に。中に入ると、左方のテーブルの上にそれは置かれていました。手にとって、こちらに来て暗譜したヴァイスの曲を弾いてみました。(時間があったので、楽器なしでヘ長調のブレとクーラントの暗譜に精を出してました)私の楽器と比べると、音がより明るくバランスも申し分ありません。トーンの違いはボディの形状の違いから来るんでしょう。Kさん用のこのバロック・リュートはクリスチアン・ホフマンの楽器を元にしていて、私のものと比べるとより細長で幅狭で、断面はより真円に近いボディです。ペグの調子は大変よく、何回もの調整を経てやっとスムーズに動くようになった私の楽器と比べると大いに改善されていました。ペグはモーリスが自分では作っていないので、これはペグ職人の問題なんですが、実はあとから聞いた話では、いつものベグ職人さんが突然亡くなったんだそうです。それで急遽お弟子さんが製作してモーリスに納めたということでした。ということは師匠よりも弟子の方がいい仕事をするということかな?