リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

辛口+甘口?

2015年03月05日 00時10分06秒 | 音楽系
先日久々にNHKの音楽番組を見ました。曲目がなかなか渋くて、武満の「弦楽のためのレクィエム」、ベルク「ヴァイオリン協奏曲」とドヴォルザークの「新世界より」でした。はじめの2曲は現代曲(といってもベルクの作品はもう80年近くも前のものですが)というか調性感の希薄な(両作品とも完全に調性を否定した作品ではないです)作品、3曲目はいわずと知れた超ポピュラー曲です。

まぁこれは武満とベルクだけではお客が入らないので、ドヴォルザークを入れて集客しようととしたプログラムだと感じました。実際指揮をしたシャルル・デュトワも番組中のインタビューでそう言っていました。営業上仕方がない、みたいな。

でも3曲のレッテル、「現代曲」「人気曲すぎる」「十二音技法」「無調」なんかをばっさりとってみるとこのプログラム、案外きちんとスジが通った選曲みたいにも感じます。

まず作曲年代、「新世界より」が1893年、「ヴァイオリン協奏曲」が1936年、「レクィエム」が1957年で、均等間隔ではないものの20年から40年とそれなりに分布しています。(ちょっと無理があるかも・・・(笑))

ベルクの作品はシェーンベルクやヴェーベルンとは少し違い、かなり調性指向でとてもメロディックなところがある(バッハからの引用もあるし)、武満作品も少しあとの「樹の曲」とか「地平線のドーリア」なんかと比べるとこのレクィエムはかなりメロディックな要素が強い。もちろん「新世界」は美しいメロディに彩られている。だからこの半世紀あまりの間に書かれたこの3曲、作曲家の出身や「楽派」は異なり、短い間に大きく作曲技法が変化した時代であったにもかかわらず、魅力的なメロディやハーモニーという点では共通しているのである!と、まぁちょっとこじつけ気味かも知れませんが。(笑)

一見人寄せパンダ入りプログラムに見えますが、こうやって深読みしてみると意外にいろいろ見えてくるプログラムではあります。そうそう、NHK交響楽団の団員で「すてゆび」をしている人がいないか目をこらして見ていましたが、いませんでした。(笑)