リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

テレマンとリュート

2015年03月14日 19時22分35秒 | 音楽系
書棚にあるテレマンのバロックリュート二重奏の楽譜を探していましたら、こんなのも出てきました。



昔1976年にアムステルダムで購入した楽譜のひとつです。もうすっかりその存在を忘れていました。鍵盤楽器用の楽譜ですが、なぜこれを購入したのかも忘れていましたが、中身を見るとすぐに思い出しました。テレマンの「忠実な音楽の師匠」にあるリュート作品があったからでした。

ご存じのように「忠実な音楽の師匠」の中には、ふたつのリュート作品が収められています。一つはヴァイスの変ロ長調のソナタ(第49番)の最終楽章プレスト、もうひとつはバロンの組曲ヘ長調です。これらの楽曲はタブラチュアのまま掲載されています。


「忠実な音楽の師匠」よりヴァイスのプレストのページです。左のページはリュート曲ではないので五線譜です。

このテレマンの曲集は連載形式で予約を募って販売されていたようです。テレマンは当時高名なリュート奏者であったヴァイスやバロンの曲を入れることが商品として価値があると踏んだわけですね。ということは少なくともハンブルクのあたりでは結構バロック・リュートを弾いていた人がいたということです。

テレマンとリュートあるいはハンブルクを中心とした地域とリュートの関係はあまり取り上げられることはないようですが、なかなかのボリュームがあるのではないかと見ています。まだ研究がそれほどすすんでおらず、関連の録音も少ないですけど、たとえばテレマンのカンタータのうち500曲近い楽曲に、Calchedon (カルケドン、ドイツ語式ならカルヒェドンかも。Calchedonoという綴りも)というリュート系の楽器が使われているそうです。(リンダ・セイス、イギリスリュート協会会誌67号2003年)あと、ケルナーが1747年にハンブルクで11コースバロック・リュートのための曲集を出版したのはよく知られています。

ちなみに私がアムステルダムで買った曲集にはヴァイスの生年が1684年となっていました。その後1686年と言われていた時代があり、わりと最近になって1687年という説が定説となりました。ちなみに1686を自分が買った車のナンバーにして、途中で定説が変わったので悔しがっていた人がいました。(私のことです(笑))