佐藤氏宅には3週間近くも居候させて頂いたか。その間、ロンドン、ブリュッセル、アムステルダムに行って楽譜を探しに行ったり、楽器製作家に会いに行った以外は、ずっとデン・ハーグにいた。時期的にコンサートもなく、学校も休み、もちろん講習会などない。することと言えば、日本から持ってきた加納木魂氏作のバロックリュートを弾いたり楽譜を書き写すくらいだ。疲れたら近所のスヘヴェ・ニンゲンの海岸に行ったり、たまに氏の留守番をしたり、夜は氏と食事をしながらリュート談義という、ある意味では単調な、しかし充実した日々を過ごした。デン・ハーグでは当時まだ学生だった今村氏とも会うことができた。彼とはすでに名古屋で一度会っていて、初対面ではなかった。彼の下宿に行き夜を徹して(といっても暗くなるのは4時間くらいだったと思うが)話をしたが、その時彼は真剣な顔でデン・ハーグからバーゼルに学校を変わるかも知れないと言っていたのが印象に残っている。
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