読了。
2015年発行なので全然新しくないんですが、ウチダ先生の本はあっちこっちに飛びながら少しずつ読んでいます。
これまでの本と違って口述みたいな感じなんですが、人生相談のメールをまとめたものということなんですね。前書きにある「上達する前には、上達したあとに何が起きているのか想像もできないし、記述する言語もない」という言葉に非常に共感しまして、読み始めました。学生を指導していて、「この人はもっと伸びる」と思うからがんばらせる(しんどい思いをさせる)というのが研究室の日々なのですが、本人にしてみたら「がんばったら明日はこんな自分になれるんだ!」という想像がないってわけですから、そりゃあしんどいだけになるわけだなあと思ったんですね。
スポーツだったらタイムが早くなるとか打率が上がるとかいろいろ目に見える到達があると思うんですが、研究、しかも卒論ってなると研究者を目指すわけでもない学生たちがどこまで自分の成長を想像できるかってところは本当に重要で、「そもそも想像がないし言語もない」ってことを前提に指導者がとりくんでいかなきゃいけないなってことを改めて感じたところです。
他に、私にとって示唆に富んだ指摘は「葛藤的状況」が子どもたちのためになるという点でした。いろんなことを言う人がいる。だけどその中で自分の考えを成熟させていく。誰かが一つの「正しいこと」を示す中では、かえって子どもは苦しいと。研究室って昔は大講座で、若い先生から年配の教授までいろんな人がいて、ホントに言うことも様々だしやらない人はやらないし、学生は先生のことを「しょーがねえな」くらいに思って見てたんですが、そういう中で先生たちを乗り越えていったような気がするんですね。若い頃は私もみんなもえらそーにそんなこと考えてました。先生に言われたらそれが正しいし意見言えないとか言われた通りやらなきゃとか、全然そんな感じじゃなくて、自分たちは自分たちで考え、発言していました。先生たちが葛藤的状況だったんだなと思います。今の学生指導に生かせる示唆だなと思います。
それから、トラブルは「問題」ではなく、「答え」である。という章がありまして、日々目にする人間関係のトラブルは、起こるべくして起こっているのだということや、そもそも自分が起こしているのだということの認識が重要だとわかりました。
他にもなるほど!と思ったり、ええっとびっくりしながらも腑に落ちるという内容がありました。大学教員にお勧めかもしれません。
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