えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

全部ゴヤっとお見通しだ!!

2008年10月27日 | コラム
随分前の話ですが書くことにしました。
タイトルツッコミ不可。

『宮廷画家ゴヤは見た』:ミロス・フォアマン監督 2006年

:『宮廷画家ゴヤは見た』は、ステラン・スカルスガルドという初老のスウェーデ
ン俳優演じるゴヤ(これがまたほっぺのぽっちゃり具合が肖像画のゴヤとそっくり
なのだ)と、彼が依頼された二枚の肖像画のモデルが織り成すスペイン模様だ。
とはいえ主役は『ノーカントリー』でアカデミー主演男優賞を獲り、『コレラの時
代の愛』の老成した姿で魅了するハビエル・バルデムで、すべての事件も彼を通し
てゴヤにつながってくるのだ。

 1792年の異端審問の時代と、1807年フランス革命後、スペインに侵入したフラン
ス軍の支配の時代と言う二部構成の中で、ハビエルは今回もまた”変化する男”の
微妙でいて極端な変わり方をやってくれた。オープニングでゴヤの版画集「ロス・
カプリチョス」を擁護する時の冷淡な知性はそのままに、目だけがだんだんと己の
信じるものへの狂信に切り替わる異端審問の場面からもう男が変わっている。

 ハビエル演じる神父ロレンソは、己が信じるものを絶対とみなし、他を認めない
排他的なアタマのいい人間で、それ特有の神経質な傲慢さと本質的な心根の弱さが
時代の流れに適合してゆくさまを、ハビエルは「ロレンソらしく」瞳から指先まで
きれいに動きを使い分けてあらわしていて技巧派を見せてくれる。

 ただ、たった一つハビエルの個性が抜けきらないのが、女性の肩の抱き方で、指
先からふんわりナタリー・ポートマンの細い肩をつつみこむやさしい力加減が、む
しょうにロレンソとそぐわなくて、なぜかほっとした。
コメント
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