大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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増税とバブルへ誘導?大田区空き家条例

2015年12月07日 | ├.まちづくり・都市計画

空き家が問題になっていますが、その根底にあるのは、規制緩和による都市無計画が招いた際限なき開発。ところが、そこに目をつけ増税と開発へ誘導しようというのが空き家対策特別措置法に基づいた「空き家条例」です。私は、個人の財産権を侵害や、憲法の課税権を濫用の可能性がある問題のある条例だと思っています。


今日、大田区議会第四回定例会で、「大田区空き家対策審議会条例」が可決しました。
私は、たった一人でしたが、この条例に反対しました。
以下、この条例を否決した理由を述べたいと思います。

この条例は空き家対策特別措置法が示す空き家等対策計画を策定し、法が規定する「特定空き家」の判定その他に関することについて区長の諮問により答申するための審議会を設置するための条例です。

空き家特措法は、適切な管理が行われていない空き家を「特定空き家」として、上物があれば面積により六分の一から三分の一になっている固定資産税の減免を除外し、代執行による建物などの除却を可能にする法律です。

今回条例で定めようとしている審議会は、法が定めている

①大田区の責務である空き家とその土地に関わる計画を策定し、

②調査・東京都の固定資産情報を利用し空き家に関するデータベースを整備し、「固定資産税減免措置の除外」や、「除却」などの措置により空き家とその土地の活用のための対策を実施しようとしています。

 確かに空き家の問題は深刻ですが、私は、大きくは次の4点において、空き家対策特措法に基づく審議会条例による空き家と土地対策には問題があると考えています。

 まず第一点目が、特定空家の指定の基準と憲法との問題です。

設置される審議会は「固定資産税減免の適用除外」や「強制代執行」の対象となる特定空き家の指定という大きな役割を担います。

ところが、「特定空き対する措置に関する適切な実施を図るために必要なガイドライン」と名付けられている指針に示されている特定空家の基準は非常に幅が広く、憲法の定める財産権を侵害する恐れがあり心配です。

ガイドラインには、たとえば、

・屋根が変形している

・屋根ふき材が剥落(はくらく)している

・壁体(へきたい)=壁を貫通する穴が生じている

・看板、給湯設備等が転倒している

・擁壁表面に水がしみ出し、流出している

・ごみ等の放置、不法投棄による臭気の発生があり、地域住民の日常生活に影響を及ぼしている。

・同じく、多数のねずみ、はえ、蚊等が発生し、地域住民の日常生活に影響を及ぼしている。

・屋根、外壁等が、汚物や落書き等で外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている。

・多数の窓ガラスが割れたまま放置されている。

・立木の枝等が近隣の道路等にはみ出し、歩行者等の通行を妨げている

・門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れている等不特定の者が容易に侵入できる状態で放置されている

これらは好ましくないものですが、だからと言って特定空家として指定し、固定資産税が6倍になったり、除却することを可能にしてよいでしょうか。

 二つ目が、課税権と執行者との関係、および憲法との関係です。

 課税は議決によらなければならないと憲法は定めています。固定資産税の課税権者は東京都ですが、減免の除外対象者を決めるのが実質大田区になっています。大田区が審議会で固定資産税適用除外者を決めることができるでしょうか。固定資産税課税権者である東京都の議決なく、個々人間の固定資産税の減免基準を大田区の審議会の判断で変えることが可能でしょうか。

三つ目は個人情報の問題です。

この審議会メンバーは、一般には知りえない固定資産税課税の情報を知ることができます。

 地方公務員法第34条の守秘義務が適用され、情報の第三者への提供が禁じられますが、当人が知った情報をもとに経済活動、つまり空き家や土地活用のために使うことを違反として禁じることはできるでしょうか。職員以外が情報を知り得ることの優位性が見出せません。

一方、ゆるい基準で特定空き家と指定された持ち主に対し、固定資産税減免解除と場合によっては代執行の可能性がある文書がいけば、どのようなことがおきるでしょうか。

そうでなくとも「管理の悪い空き家は固定資産税が6倍になります。場合によっては除却されます。」となれば、空き家の修繕が行われる、空き家が解体され固定資産税が増える、上物を建てるなど土地を開発する、土地を売却するなどへ促されることが考えられます。

しかも特定空家指定の幅は非常に広いので、空き家の増税が行われるようなものではないでしょうか。
 憲法の財産権を侵害するほど過大な裁量権をあたえてしまう基準をつくり、多くの空き家の持ち主に、税の減免の解除や代執行という措置があることを知らせることは行政権限の濫用にあたらないでしょうか。

 

四点目に、何より問題は、一方で、マンション建設や開発はやまず、結果として新たな空き家を招いているいまの都市計画です。確かに今ある老朽化した空き家はなくなりますが、新たな住宅などが建設されますから空き家問題が必ずしも解決することにはなりません。都市のキャパシティーをどうするか、景観や住環境に配慮したまちをつくるにはどうしたらよいか、という視点でのとりくみが重要ですが、都市計画からの空き家対策はこの法律と条令では一向にすすみません。

以上の理由から反対いたしました。

 


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