大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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災害廃棄物広域処理の背景にある清掃工場の余力という大きな問題

2012年03月25日 | ├.環境・エネルギー・廃棄物・アスベスト

災害廃棄物の広域処理について質問させていただいたのち、女川町に行ってきました。
お手元の資料(資料1)の黒く塗りつぶされているところに瓦礫が仮置きされています。

テレビや写真では画面いっぱいに瓦礫の山が映し出されますが、それではボリューム感がわからないと思いますので、この女川町の地図を見ていただければと思います。
瓦礫がおかれている以外の低地の大部分は、一組ビデオで女川町長が市街地の8割が被災したと話されているように、ほとんどが更地になっていました。

違う視点から、こういうことも言えます。
たとえば、災害廃棄物総量は、環境省の報告で2,250万t。そのうち広域処理分は353万tで15.6%。がれきが置かれている面積は約11㎢でそのうち広域処理分は2㎢程度です。可住地面積が、岩手県(3710㎢)・宮城県(3130㎢)と首都圏たとえば東京都(1396㎢)大阪府(1314㎢)などに比べ格段に広いことがわかります。また、地震の被害により海岸部は地盤が下がっていて、かさ上げしなければ使用不能ですが、がれきはそうした地域を中心におかれていることなども知られてはいません。

先日の議会質問でも指摘しましたが、地震により、地盤が下がり、そのままでは使用できず、場所によっては十数mとかなりのかさ上げが必要なことを女川町役場の方から教えていただきました。

仮置き場の一番奥にはコンクリートがらなどが置かれ、海岸部に近いところに混合ごみが置かれていました。
東京都に持ってくる女川町のごみは10万トンですが、残りのほとんどはかさ上げに使うそうです。しかも、それだけでは足りず、かさ上げの土を確保するために山を切り崩す予定だと女川町担当から説明をいただきました。(資料2)

しかし、いずれにしても、土地利用計画(案)が策定されたばかりで、これから町民に説明し、意見を聞きながら合意形成を図っていくという段階で、どこをどのくらいかさ上げするかさえ決まっていない状況であることがわかりました。

現地で乗ったタクシーの運転手さんは、海岸近くに住んでいたそうですが、津波の心配があるうえ、地盤が沈下しているため同じところには戻れないと話しておられました。実際、その場所は、土地利用計画では公共施設が設置される場所になっていました。
土地利用計画案が計画として定まるためには、場所や面積など細かい評価や補償が定まったうえで合意が必要ですが、女川町からはまだ何も言われていない状況だということでした。

災害がれきの処理とひとくちに言いますが、がれきの撤去だけではなく土地利用計画と密接にかかわっているところが阪神淡路と大きく異なっているところです。
がれきを撤去したらそこに元通り家や工場を建てられるわけではないのです。
はたして、こうした時間軸も含めた現地の状況や、町全体に占めるがれき置き場のボリューム感というものをどこまで把握して広域処理を選択しているのでしょうか。

時間軸や場所とともに考慮に入れなければならないのがコストの問題です。現地では土地利用計画も定まっていない状況で、がれき置き場すべてを緊急に撤去しなければならない状況にはありませんでした。それどころか、現地で稼働していたのは、広域処理の粗選別上だけで、埋め戻しに使うと説明していた44万tのうちの10万tを除いた34万tのがれきについては何も動いていない状況でした。女川町の担当は、東京都に持ってくる以外のごみのほとんどは、土地造成のための埋戻しに使うと言っていましたが、埋め戻しさえ行っていない状況でした。

問題にすべきは、土地利用計画や復興計画が進まないことであり、すべてのがれき処理を緊急に行うことではありません。

逆に、急ぐことを理由に拙速に広域処理を行えば、輸送費などのコストがかさみます。
 特に、東京都に受け入れるがれきの選別場を見てきましたが、現地にはベルトコンベアのついた選別機が設置され、4つのラインで手選別が行われていました。
 がれきをベルトコンベアに乗せ、プラ・コンクリ・布紙・アスベスト・PCBなどを除いていくと最後には木くずが残ります。
 ところが、分別の済んだこの木くずにプラと布・紙類を混ぜ「一組の清掃工場の受け入れ基準」に合わせて東京都23区に運んでいることがわかりました。
 選別のためのプラントを建設し分別のための費用をかけているにもかかわらず、それをまたブレンドして燃やすとはなんと無駄なことをしているのでしょうか。
 ごみの世界では、分ければ資源、混ぜればごみと言います。
いったん、分けて木質資源になったものをなぜ、また混ぜてゴミにしてしまうのか、理解に苦しみます。
 がれき処理が目的でなのではなく、東京都に持っていくこと=広域処理が目的であることは明らかで常軌を逸しています。

 常軌を逸しているといえば、広域処理が進まないからと言って、がれき広域処理のための広報宣伝費に39億円の予算をつけてるのもまた異常です。
政策ですから、なすべきは、政策の優位性を理解してもらうために情報公開を進め、説明責任を果たすことです。
 これらの処理費用はすべて私たちの税金により賄われるわけですが、広域処理ならいくらかけても良いということでしょうか。

一方で、こうした広域処理を可能にしているのが清掃工場や廃棄物処理施設の余力です。

 今回の広域処理にあたり、東京都は環境省からの事前調査で一組、多摩市広域連合、民間処理施設の一日当たり処理可能量について回答しています。
ここでの回答が、現在までのところ、その通りに進行しています。民間処理施設での引き受けについても公募はしているものの、環境省の受け入れ調査が、事前調整機能的な役割を果たしているように見えます。


災害がれきの広域処理は、「きずな」や「支えあい」という言葉で飾られていますが、お金の流れや実態からは、過剰設備投資による余剰能力を稼働できる絶好の機会であり、稼働しなくても支払わなければならない固定費をカバーしてくれる特需という側面が見えてきます。

さて、この広域処理にあたり、東京二十三区清掃一部事務組合は、一日受け入れ可能量を150トンとしています。

年間54750トンを受け入れられるとしていますが、これを現在の清掃工場の年間稼働日数と余力で割り返すと、日量200tを処理する清掃工場分のごみにあたります。
災害廃棄物受け入れに際して、この間、清掃工場の焼却能力への影響するといった議論は一部事務組合からも、区長会からも一切ありませんでした。つまり、現時点で、200tの炉=ちょうど渋谷清掃工場程度の炉がなくても23区のごみ焼却は賄えるということを示しています。

 そこで、23区排出のごみのうち清掃工場で焼却している量と清掃工場の焼却能力について調べてみました。

 お手元の棒グラフ(資料3)の平成22年までが清掃工場に持ち込まれたごみ量実績を示していて、23年以降は一部事務組合が示しているごみ量の予測です。
 上部の折れ線グラフは、清掃工場の施設整備計画の総量を表しています。
 これを見るといくつかのことが分かります。
①まず、平成13年から平成22年までゴミが減り続けていること。平成20年にいったんゴミは増えますが、これは、それまで不燃ごみだったプラスチックが可燃ゴミになったために増えたものです。しかし、いったん増えたものの、平成22年には、プラスチックが不燃ごみだった時期よりもさらにごみ量は減っています。
これは、23区民の社会全体の環境志向に伴う、包装類の簡易化、環境意識の高まりによる資源回収の拡大や、景気の低迷などが考えられます。
②一方で、ゴミは減り続けていながら、施設整備計画は、平成23年以降横ばいです。それを裏付けるごみ量予測も横ばいになっています。


23区の清掃工場に持ち込まれるごみが減少しているように大田区のごみも減少を続けています。たとえば、大田区では、(資料4)平成12年には247,801トンだったごみが22年には203,992と18%。約2割も減っています。

中でも、焼却処分される可燃ゴミは平成12年には(資料4)174,748トンでしたが、平成22年には142,516トンとやはり19%=2割程度へっています。一方で、焼却処理を担っている一部事務組合への分担金ですが、(資料5)平成12年も平成22年も約31億円とぼぼ同額です。

しかし、大田区の負担額はほぼ横ばいですが、一部事務組合の総予算は8%も増えていることに注目する必要があります。


(資料5)をみていただくとよくわかるのですが、分担金は、必ずしも平準化されていません。なぜなら、清掃工場の施設整備に伴う組合債の償還期のピークが平成22年だったことによるものです。建設費である固定費が大きく影響しているからです。
 一組経営に施設整備費がいかに大きく影響しているかということです。

 例えば、平成12年から22年ではごみ量は、30万tも減っています。
 一部事務組合は、清掃工場の稼働日数を年間約300日、余力12%としていますので、その数字で計算すると30万tのごみを処理してきた清掃工場の能力は日量で1,136tにもあたります。10年で300tの炉が少なくとも3つは不要になったほどのごみの減り方だったということです。
 ところが、焼却能力は一向に変わりません。

 ごみが減るのに分担金が減らない背景に清掃工場の施設建設費が大きくかかわっているいことがわかります。

 一部事務組合は、23区の可燃ゴミを処理するために、23区が共同出資し設立した地方公共団体であるにもかかわらず、23区が策定したごみ処理計画と全く遊離したところでごみ量予測を行い、それに基づき施設整備計画を策定しています。しかし、一組のごみ量予測と各区のごみ量予測にかい離などあり得ず、それを認めるなら、共同処理の前提は崩壊します。
共同処理の設立目的からかけ離れた、いわば東京都時代の論理がそこにはそのまま継続されているのです。


特に、東京二十三区成功一部事務組合は地方公共団体でありながら、実質住民のいない自治体となっていることが、地方自治における民主主義の基本である意思決定過程における市民参画を極めて困難にしています。一組議会は23区議会の議長で構成されていますが、実質議決するのは予算や一定規模以上の契約に限られ、その根幹をなす各計画や経営改革プランなどの方針には実質上関与できないしくみになっていて、そここそが今後改善すべき大きな問題です。

平成24年度で768億円という莫大な予算規模を持つ東京二十三区清掃一部事務組合ですが、23区は、実態として、各区の議長だけで構成されています。区長与党と呼ばれる議長で構成された一組議会が、はたしてどこまで一組をチェックする機能を担っているのか疑問ですが、そのうえ、一組議会の議事録さえ公開されていないのですから、民主的運営とは程遠い状況です。しかも、大田区においては、数代前の議長の時から、一組議会で配布される資料の閲覧を要望していますが、再三にわたり請求してきたにもかかわらず、未だに公開されていませんので、一組議会で何が議論されているのかさえわからない状況です。


 また、昨今、一組の重要事項を審議決定する23区長で構成される評議会、経営委員会なども全くといっていいほど機能していないように見えます。

たとえば、今回の広域処理についても、仮に都知事が受け入れるといったとしても、一部事務組合は別個の行政であり、合意形成は、一部事務組合の管理者が決定すべきことでは無く、各区がそれぞれに持ち帰り区内の意思を統一した上で、一組内での合意形成を諮るべきでした。
ここに、一組のあり方の問題が集約されています。

 一組と東京ガスとで設立したPPS事業を行う新会社=東京エコサービスの設立の際にも評議会での議論がおこなわれています。一組の一般廃棄物処理基本計画策定の際にも最終的な判断は評議会にゆだねられています。

一組規約や評議会規定によれば、重要事項は評議会にゆだねられており評議会構成区長の半数以上から請求があった場合には会議を開催しなければならないことになっています。今回の、23区外のしかも安全性において23区民が大きな不安を持っているこれまでの分類では産廃だったごみを受け入れるということは、一般廃棄物処理基本計画の変更にあたります。この重要な事項が管理者の独断により決定されることが許されるでしょうか。

特に、前回の質問で、議決事項は地方自治法第96条により制限列挙となっていてそれ以外は条例で定めることができると規定されてるけれど一組は、この条例が無いというという答弁は、何でも管理者が決められるということになりますか?それは、決めてはいけない、決められないことを意味するにほかならないのではないでしょうか。
議決事項に当たらなければ管理者が決めてよいという解釈は、一組の判断でしょうか? 

また、こうした、官主導の意思決定システムが、行政主体、市民不在の硬直した一組運営を容認し、コスト意識のない、組織維持のみを主眼に置いた経営体質を招いてはいないでしょうか。


一方で、大田区の清掃費もゴミは減るのにへってはいません。

その理由のひとつには、リサイクルの問題があります。
大田区でも現在、モデル地区において、容器包装類のリサイクルのモデル実施が始まっており、来年度からは、拡大される予定です。

しかし、リサイクルが目的ではなく、最終的な目的はごみ量の削減です。
しかし、現在のしくみでは、リサイクルのための収集運搬費用を、自治体が負担しているため、リサイクルすればするほど、自治体財政を圧迫することになります。
容器包装リサイクル法における拡大生産者責任が課題になります。
大田区もようやく、容器包装類のリサイクルが始まるわけですが、漫然とリサイクルするのでは無く、リサイクルがごみ減量につながるためのしくみ構築への働きかけが重要であると考えます。今後も大田区として、また23区長会として容器包装リサイクル法改正への積極的働きかけは必要です。

一方で、リサイクルが拡大に伴い、収集運搬コストが増大するといわれていますが、ごみ・資源の総量が減っていることは、これまでも指摘しているとおりです。
単純に考えれば、同量のごみと資源の区分が変わることによる、配車や車の大きさなどの関係から、コストが増えることは一定程度予測されるものの、からなずしもそれが清掃費拡大につながることを容認するわけにはいきません。
リサイクルの拡大による、清掃費の増大は主に分別費用だからです。

たとえば、ごみ収集は東京都時代からの経緯から雇上会社と呼ばれる特定の企業が独占的にこれを行っています。覚書が根拠になっている、東京都時代のいわば遺産的位置づけです。この雇上会社も契約段階的に競争原理を導入していくはずでしたが、最近はさっぱり話題にもなりません。

他の分野において、契約の競争性や質の担保が求められている中、清掃事業だけにその独占を許すことにどのような根拠と正当性があると23区民に説明できるでしょうか。

しかも、こうした特定の企業が公共サービスを独占するという雇上の問題が課題となっているうえに、リサイクル枠が拡大するにつれ、リサイクルの収集については、リサイクル協議会という雇上会社にまたいくつかの企業が加わった閉じられた企業グループがリサイクルの収集を行うようになってきています。
 清掃事業における民間委託における雇上、リ協の存在についてどう考えますか。雇上問題はどうして棚上げになっているのでしょうか。また、公平性、効率性の担保された安定的ごみ収集確保のための改善策はどうしていくのでしょうか。

*今日はとりあえず、原稿をアップします。
 実際の質問は原稿とは異なります。また、答弁に対し、追加でさらに発言した項目もあります。









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1 コメント

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特になし (井上 理)
2012-03-27 14:44:10
勉強になりました。
トラックの廃棄ガスをあれだけ訴えた東京都が瓦礫を受け入れた理由が解らなかったのですが、腑に落ちました。
上記ブログシェアさせてもらいました。
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