大田区の清掃事業から、民営化の課題についてあらためて見直しました。
23区のごみ処理は、かつて東京市だった名残から、東京都が行っていたのですが、これが、2000年に区に移管されて、収集運搬は区、焼却処理は23区が合同でつくった地方公共団体=東京23区清掃一部事務組合(一組)、埋め立て処分は都、という3つの主体が担う、特別な形で行われています。
通常は、収集運搬、処理処分は基礎自治体の自治事務なのですが、そこに一組という地方公共団体を作っているのです。
大田区の予算規模で100億円規模の清掃事業は、それぞれに議会と行政があり、そこに民営化などで担い手が多様なため、仕組みが複雑で、市民の目が届きにくい行政です。
今回は、短い時間なので、課題を明らかにすることを主眼に質問しました。
知っていただければと思います。
以下、質問原稿です
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フェアな民主主義 奈須りえです。
大田区は、営利と非営利の本質的な違いを明確にせず、「民で出来ることは民で」と民営化を進めてきたので、民営化の矛盾が目立つようになりました。
大田区の清掃事業をみても、ごみの収集運搬は、直営と雇上会社と区の第三セクター、大田区環境公社の3つ、資源は大田区リサイクル事業協同組合(通称リ協)と、合わせて4つもの主体が担っています。
同じ収集運搬でも賃金はバラバラで、雇上もリ協もその傘下にいくつもの業者があって、大田区が企業の経営者が決めると言った通り、賃金もそれぞれです。
雇上は、東京都清掃局時代からの歴史的な経緯のもと、清掃事業が区移管された以降も、
「覚書」見直し協議が継続協議となったことから、
可燃・不燃ごみなどは雇上契約が、当面、残ることになり、
一方、「粗大ごみ」と「資源」は「平成18年度以降、各区の判断で各区による契約とすることができる」こととなっています。
当面だった可燃不燃は、その後も棚上げで、
各区判断だったはずの粗大ごみと資源は、覚書も入札もプロポーザルも無く、
実質的には、区の雇上会社が担っています。
私は、歴史的経緯は大切にすべきと考えていますが、今の流れで、あいまいな随意契約を続ければ、将来的に国内への再投資の確証が持てない外資にかわられる日が来るかもしれないと心配しています。
外資は、事業の継続性に問題があるからです。
また、大田区は、職員が定年で減って収集能力が不足するという理由で、職員の新規採用をせず、収集能力の補完と安定的で持続可能なごみ収集体制を構築するため大田区環境公社を立ち上げ収集中継受け入れなどを担わせていますが、直営との賃金格差は歴然です。
区は、直営は、区の職員でなくては担えない
「高齢者・障がい者に対する戸別収集業務などの福祉的サービス業務」
「ふれあい指導」
そして、「委託業者に対する指導・監督業務」
を担わせるといっていますが、
車の台数で見れば、
・委託が200台、
・直営はわずか12台、それもリースです。
しかも、リサイクルも粗大ごみも、全て委託で、区の職員は従事していません。
大多数が民間事業者の中、区内2万6000か所の集積所の収集ノウハウは維持できるでしょうか。
車という資産もノウハウも無くて、清掃事業の主導権を持てるでしょうか。
今回あらためて、2003年以降の予算書を見ると、減っていくごみ収集を最終的に雇上と第三セクターに移し、資源もリ協に担わせる形になっていました。
結果、約10年前の2015年と比べれば、
ごみも資源もほぼ一貫して減り続けていますが、
収集運搬で27億増え、
リサイクルで減ったはずの焼却処分費用である一組分担金も10億増え、
合わせて37億円、1.7倍も増えていました。
37億円も税負担を増やして作ったリサイクルのしくみで、本当に環境は良くなったでしょうか。
2/3でこれですから、空気を運ぶようなプラリサイクル全面実施で更に負担は増えます。
大量生産大量消費大量廃棄はやまず、根本的な生産者責任は棚上げです。
株主利益最大化論が大勢を占める現在の日本で、民営化すれば、低賃金が問題になります。
直営割合が縮小すれば、技術を失い、民間企業に清掃事業の主導権を奪われる固定化するでしょう。
そこでうかがいます。
私は、何かが起きても、都市部の区民生活を衛生的に安全に維持するためのごみの収集運搬をささえるために、大田区が清掃事業の責務を果たすには、非営利の直営が欠かせないと考えています。
現在の大田区のごみと資源の収集運搬体制において、直営はノウハウの維持や、賃金体系の標準を示すなど、その役割を果たせているでしょうか。責務を果たすためには、少なくとも一定割合以上直営を配置した体制を保持すべきと考えますが、いかがでしょうか。