国債で財源を確保し、春に増税を決めたばかりの国が、減税と言っています。
おかしい、と思って調べたら、どうも、目的は、減税どころか、大規模な財政出動。
奇しくも、大田区も国に歩調を合わせ、2023年に箱モノインフラへの財政投入額を大幅に引き上げています。
今は、人も物も足りませんから、需要を大幅に増やすと、物価高を招き、所得水準を下げかねません。
そこで、大田区議会で、質問しました。
答弁は、「直ちに物価高につながらない」
直ちにつながらない、というのは、物価高を認めているように聞こえました。
補正予算が成立して、いつから物価高になると思っているのでしょう。
質問と答弁の一部を掲載します。
全文は末尾に
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国債で財源を確保し、春に増税を決めたばかりの国が、減税と言っています。
【質問】
国債で財源を確保し、春に増税を決めたばかりの国が減税はおかしい。
区には区民から取り過ぎ、貯めた1300億円もの基金がある。蒲蒲線や箱モノに使わず住民税減税で区民に返すべき。
【答弁】
取り過ぎの認識はない。新たな行政課題を遅滞なく解決していく
【質問】
国の閣議決定は、3.5兆円規模の減税の影で、インフラなどへ21.7兆円の財政投入を見込んでいる。
(ところが、減税のための税制調査会はこれからで、早々にインフラなどへの財政投入と低所得者への給付のための補正予算を決めている。その上、成立した13兆1千億円のうち、給付は2兆7千億で、インフラ他投資は10兆4千億円ですから、減税や給付というより、インフラなどへの財政投入をやりたかったのは、明らか。)
閣議決定で21.7兆円と言っていた大規模な財政投入を、この人も物も足りない時に行えば、物価高を招きはしないか。
奇しくも、大田区も、国に歩調を合わせ、箱モノ費などを2023年から1.55倍増やす。
人や物が足りない時に、箱モノや開発需要を増やせば、物価が更に上がり所得水準を下げないか。
【答弁】
直ちに物価高につながらない。
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【質問】
私は住民税を減税すべきであると主張してきましたが、今回の国の所得税と住民税の減税は理屈に合わないと思っています。
国は慢性的な財源不足と国債の利払いのために国債で財源を確保していますし、今年の春、防衛費1兆円のために所得税増税を決めたばかりです。
しかも常日頃社会保障財源が足りないから消費税増税と言っている国が、所得税という国税を減税と言っているのです。
減税という声に思ったより国民が冷淡だったのも、こうした減税の矛盾に気づき、別の思惑があるのではないかと思っているからではないでしょうか。
国は所得税1人3万円、住民税1人1万円の減税と言っています。
借金で財源を賄う国で3万円の減税で22兆円も基金がたまっている地方で住民税は1万円の減税ですから、これも不思議です。
私が住民税減税を主張しているのは大田区に基金が1300億円も貯まっているからです。
しかもこの基金は大田区だけでなく、地方公共団体を合わせると2021年末現在で22兆円にもなります。
2017年11月に総務省自治財政局が行った地方公共団体の基金の積立状況等に関する調査は、2006年度末と2016年度末の地方公共団体の基金残高を比較していますが、2006年度末は13.6兆円2016年度末は21.5兆円で、この間7.9兆円も増えています。
このうち、財政調整基金は3.5兆円、減債基金は0.4兆円、特定目的基金は4.1兆円の増加となっていると分析していて、基金が増えて溜まっているのが、日本全体の傾向であることがわかります。
特別区など不交付団体の増加が顕著ですが、県も市も町も村も、交付団体も増えているのを見過ごしてはならない傾向です。
また増えた7.9兆円の要因のうち2.3兆円は制度的な要因と分析していて、住民税の定率化や地方分権の三位一体改革、合併などが影響していると理解できますし、5.7兆円は、法人住民税の一部国税化で、国がそれを地方交付税交付金の原資としたことを思わせる分析です。
気になるのは基金の調査で、基金の残高増加の要因に人口減少による税収減と上げていることです。
将来人口が減って税収が減るから余った税金をそのときに備えて貯めているというこの言葉こそ、私達が将来の人口減のため多めに税金を払わされ、基金が多額になったことに他なりません。
地方税負担が必要以上に過剰ということです。
私はかねてから議会でも小泉構造改革や地方分権や三位一体改革で地方に集められた財源が地方分権本来の目的に使われず、箱物や開発に過度に使われ、それでも余って基金に貯まっていることを指摘し問題視してきました。
税金の使い方など自治体ごとに状況はそれぞれですが、たまたま大田区の税収が良かったとか、大田区だけ財政手腕が優れていたということではなく、基金がたまる背景に、私が指摘した地方分権などで、構造的な要因があったことを裏付ける調査で、構造改革とはよく言ったものだと思います。
今回国は所得税と住民税の減税の他に、非課税世帯への7万円の給付を行うと言っていて、本会議に補正予算が送付されています。
ところが7万円の給付は現在国会で審議中でまだ可決していません。
いいことだから早くやりたいという一見正当な理由に見えますが、だからといって国会で可決していない補正予算をもとに補正予算計上して、議会制民主主義の手続きを軽視してはいけないと思います。
国が自治体に補正予算を年内に組むよう催促する異例の通知を出していますが、可決もしていない予算を根拠に補正予算を組めと書かれているわけではありません。
与党多数だから可決するに違いないという区長の考えは、閣議決定を国会議決と同等に扱うに等しく、国会軽視で大変恐ろしいことです。
大田区が議会の議決を軽視したのは今回が初めてではありません。
コロナの特別定額給付金のときにも早く給付するという名目で議決をせず区長の専決処分を行っていますが、早いどころか大田の給付が他自治体に比べ大幅に遅れ、区民の皆様からお叱りを受けました。
入札せず随意契約で業者を決めたことで、業務内容の条件が区の意向通りにならなかったことも大きく影響したと思います。
議会を軽視したら業者主導の契約になってしまったのです。
今回国会の議決を待たずに低所得世帯への給付の補正予算を送付した大田区ですが、同時に閣議決定された住民税減税は、国会の議決は不要で、大田区が特別区条例を変えればできるのに、特別区税条例を変えればできるのに区は何の準備もしていません。
国会軽視という民主主義の大大汚点を刻んで国の物価高対策を早くやろうとしている大田区ですが、同じ物価高対策、住民税減税には全く手をつけていないのです。
今回の国が言う1人1万円の住民税減税規模は、大田区の納税義務者数43万人から計算すると、およそ43億円で、非課税世帯への臨時特別給付金57億円より小さい額ですし、大田区には区民からとりすぎて余ってたまっている、1300億円もの基金貯金がありますから、十分に対応できる金額です。
基金を使わなくても例えば2022年度の大田区の消費税収は187億円でしたが大田区がそのうち社会保障に使ったと決算書に書いているのは109億円にすぎません。
78億円は社会保障に使わなかったのです。
大田区のシティマネジメントレポート令和3年度版を見ると、消費税が8%になって以降大田区に入った消費税収総額1368億円中、大田区が社会保障に使ったのは半分にもならない655億円。
713億円は社会保障に使っていません。
財源がないのではなく優先順位の問題だということです。
急激な物価高騰に収入が追い付かないことは明らかで、それを放置すれば国民の生活水準が下がり、貯金が目減りします。
そこで伺います。
大田区は独自財源で1人1万円と言わず速やかに住民税減税で、物価高騰から区民生活を守るべきではありませんか。
財政健全化の視点からも、蒲蒲線や箱物開発のために基金に財源を確保するのではなく、大田こそ減税して取り過ぎた税金を区民にお返しすべきだと思います。
【答弁①】
区の公共施設につきましては、区が保有する延べ面積のうち、約半分が築40年を経過するなど、更新の時期を迎えております。
こうした状況を踏まえ、区では、大田区公共施設等総合管理計画に基づき、将来のまちづくりや人口構成の変化をはじめ、新しい行政需要も着実に捉えながら、計画的に公共施設を整備を進めなければなりません。
このほか、先般の改訂の際には、環境負荷低減・脱炭素の取り組みの一環として、公共施設を新築する場合は、ZEBの基準を目指すことも位置づけております。
本年3月に策定した大田区公共施設改築・改修等中期プランにおきましては、今後10年間に改築・改修を予定する施設について、可視化をすることで、中期的な財政負担額や工事量を把握するとともに、公共施設を計画的に保全する仕組みを構築するなど、効果的、効率的な施設マネジメントを推進しております。
加えて、中期的な経費を試算しており、かつて大田区公共施設等総合管理計画にて公表した更新経費の今後の見通し額につきましては、近年の建築資材や人件費の高騰をはじめ、消費税率の変化、公共施設の脱炭素化の推進による工事費単価を補正するとともに、現在整備を進めている公共施設の予算額も適切に反映いたしました。
今後10年間に予定している施設の改築や改修の時期につきましては、各施設の利用状況や、代替施設の確保の状況、総量抑制の観点なども踏まえて総合的に判断するなど、引き続き、計画的な施設整備を進めることで、区民サービスの維持向上を実現してまいります。
なお、物価は国際情勢や為替レートをはじめ、原油価格の上昇など、様々な要因に影響を受けるものであるため、公共施設の計画的な改築・改修が直ちに物価高などにつながるものではないと認識しております。
国は、住民税減税と言っているのですから、住民税減税も先取りして対応してもおかしくないのに、そこは動かないのはなぜかと思って調べたら、2009年リーマンショックのときに定額減税を定額給付金に変更して給付した事例がありました。
低所得者への給付は100%都費で大田区の財源を減らしませんから、フライングで補正予算計上するけれど、独自財源を減らす先取りの住民税減税には全く動かないということだと思います。
気になりましたので国の閣議決定を調べたら、デフレ完全脱却のための総合経済対策、日本経済の新たなステージに向けてという表題がついていて、改めて今回の減税が経済対策の一環だと知らされました。
驚いたのは減税が3.5兆円規模なのに減税以外で21.7兆円の支出増を見込んでいたことです。
国は減税で税収を減らすのが目的ではなく、減税を上回る国債を発行して、国土強靭化始め財政出動するのが目的だということです。
そこで心配なのが今回の経済対策についての影響です。
例えば日本総研の西岡慎一上席主任研究員は、11月10日のメルマガで今回の経済対策について、先日政府は巨額の経済対策を決定しました。
コロナが流行していたから、この時期の大盤振る舞いが恒例化しています。
しかし大規模な財政出動は現在の我が国には不要です。
景気はコロナ禍の苦境を脱し、回復しています。回復期には財政を引き締め、将来の景気後退に備えることが政策運営の鉄則です。
しかも我が国では今年に入って需要不足が回収し、供給不足に転じています。
巨額対策は需要を過剰に刺激し、かえって物価高を助長しかねません。
現在求められる対策は供給力の強化ですという指摘しています。
大切な指摘だと思います。
内閣府は日本経済の需要と供給力の差を示す需給ギャップについて、今年4月から6月までの推計値が3年9ヶ月ぶりにプラスになったと発表しています。
ニューズウィークの記事は、需給ギャップがプラスになったということは、需要に対し供給が足りないことであり、日本経済が人手不足やコスト増加によって供給制限に陥った可能性が推察されると書いていますし、NHKの記事には、需給ギャップはプラスの状態だと物価が上がりやすく、マイナスでは物価が下がりやすいとされていますと説明しています。
確かに、人やものが不足し始めていることを感じる場面はこの大田区でも見られます。
今年6月大田区の馬込小学校の図書室のエアコンの室外機が故障しましたが、修理するにも機材を調達できず、直るのが9月になると言われ、区内の使わなくなった機材をを探してようやく直せたということがありました。
修理におよそ2ヶ月もかかりました。
大田区で入札の不調が目立つようになりましたが、工事単価が上がって以降落ち着いたそうです。
経済産業省は2022年の経済白書に、2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大は、サプライチェーンの上流から下流に渡って大きな影響を及ぼし、今もなおその影響は継続している。ロックダウン等の感染拡大防止のための行動制限と移動制限といった対策に起因する経済の停滞や人手不足による影響のみならず、ここからが重要です。
大規模な財政措置による急激な需要喚起も相まって、物流の遅延は価格の高騰を招いている。
物流の混乱は、資源エネルギー価格の高騰を招き、高騰した資源エネルギー価格は物流価格の高騰を招くという負の連鎖が発生していると指摘しています。
国は物価高騰の遠因に急激な需要喚起を指摘しているのです。
にも関わらずこの時期に国は減税で財政規模を縮小するのではなく、財政出動による急激な需要喚起を行うとしています。
コロナでは仕方なかった需要増かもしれませんが、今回は国が意識して行っている急激な需要喚起です。
しかもさらに心配なのが、今年6月に大田区が公共施設改築改修等中期プランを変え、箱物だけで今年10年を比較すると、年平均1.55倍、今後6年間集中して800億円も増やす計画に変更していることです。
大幅な需要の短期集中的な前倒しです。
報酬審議会の答申に、一般財源の大幅な税収は見込まない。一方、社会保障関係費や公共施設等更新事業などを避けることができない財政需要の増加が見込まれ、歳出に対し歳入が不足する厳しい財政環境が継続するとあるのは、大田区がそう分析できる資料を作ったからだそうです。
本来歳入に対し、身の丈に合った歳出を予算として計上することも可能ですしそうすべきですが、大田区は1300億円の基金があるからなのか、歳入が大幅に増えないと予測しているにもかかわらず、歳出を減らす努力はしないと決めていて、歳入を増やす効果も出ないと決めているのです。
基金を集中して使うということではないでしょうか。
国と大田区が歩調を合わせるように、大規模な財政投入をしようとしているのです。
そこで伺います。
人も物も不足し始めているときに、箱物などの需要を短期集中的に激増させれば、更なる物価高を招き、所得水準が下がりませんか。
【答弁②】
一般に地方自治体は税率の上限を定めた制限税率や、よるべき税率として標準税率が設定されるなどの実情がある中、特に個人住民税は、基幹税として財政を支えています。
また、地域社会の費用をその住民がその能力に応じ、広く分担し合うという性格も有してございます。
区は、これを含む地方税を大きな財源の一つとして、地域に即した特色ある行政サービスを実施してございます。
福祉、健康作り、子育てや教育など、区民生活に欠かせない施策を常時展開し、今後も地域住民の生活保障はもとより、ますます多様化する行政需要へ円滑に対応する必要がございます。
こうした区民生活に必要な行政サービス提供の礎となる財源を適切に確保する観点から、また自主財源を確保していくという意味においても、特別区民税は極めて重要な税目であり、大田区特別区税条例に税率等を定め、適切に税務行政を行っているところでございます。
お話のように住民税を取り過ぎているとの認識はしてございません。
新たな行政課題に遅滞なく解決していくため、特別区民税は必要不可欠な財源と考えてございます。
なお、国が令和6年度に個人住民税の減税をする旨の話がございますが、詳細についてはいまだ決定しておらず、区へ具体的な手続き等の情報提供はございません。
今後の国の動向等をしっかりと注視し、適切に対応してまいります。
日本はこの間、農業も林業なども一次産業もエネルギーも製造も海外依存を高めてきました。ここにきての物価高騰の背景には、進めてきた過度なグローバル化と外需依存の結果でもあると思います。
なら、今なら間に合いますから、方向転換すべきです。
借金は、そもそも車時には投資利益に分離課税する日本においては、税金で給付するということは雇われてお給料をもらって働く人が払った税金が別のやっておられてお給料をもらって働く人の収入になるということで、雇われて働く人の所得が減り続けている日本で、どうやって所得水準を上げるのかという根本的な問題にはなりません。
賃金は誰が増やすのでしょうか。
賃金の抑止になるのは、雇われていない公務員であり、個人事業主やオーナー企業の経営者などですが、この間、大田区は民営化で公務員を減らし、グローバル化や国の政策で、町工場が減り、商店街から商店が消え、雇われて働く人の賃金の低下を抑止し、引き上げる力を弱くしてきました。
今の課題は大資本、グローバル資本、機関投資家とそれ以外の所得格差が大きくなっていることで、根本的な課題解決は、労働分配を是正し、公務員、個人事業主や小規模事業者など、誰かに雇われていない人を増やすことなどによって、所得水準を上げて格差を是正することにあるということを指摘して、質問を終わりたいと思います。