平成25年度大田区一般会計予算2320億円が、昨日成立しました。
私は、予算案に反対しました。なぜ、反対したのか。予算に対する私の考えについてご報告します。
平成25年度予算は過去最高の規模です。
財政が厳しくなったという言葉が毎年のように聞かれますが、この約10年、ほぼ毎年歳入歳出ともに決算額は増え続けています。
大田区はシティーマネジメントレポートにおいて、これを「行政需要額は増加傾向にある」と表現しています。
ところが、歳入歳出ともに増え続けているわけですが、放置され先送りされている行政課題が少なくありません。
保育園の待機児は一時締め切りで約1300人、特別養護老人ホームの待機者は約1600人です。
昨年の第四回定例会の一般質問において、私が、こうした待機児や待機者を出している公共サービス提供を公平性の観点から大田区はどのように考えているか質問したところ、大田区は、
「努力しているが、施設整備については、その性格上多額の財源を必要とするばかりでなく用地の取得など難しい課題があるから一時に必要とする区民全員に施設サービスを提供できるというわけにはいかないが目標値を定め計画的に整備を進めている」
と答弁しています。
多額の財源を必要とするからサービス提供できない区民がいて不公平になっても仕方ないというのが区の答弁でしたが、それでは、財源は本当にないのでしょうか。
たとえば、同じく第四回定例会において過去10年の歳出の増加分を何に使ってきたのか聞いたところ、区は増加分458億円のうち福祉費が388億円で生活保護や子ども手当てと答えています。
しかし、生活保護での増額分は130億、子ども手当は110億です。
たとえば、教育費が大幅に増えたのが大田総合体育館の建設費であるように、福祉費が増えたからと言って保育園の待機児対策や特別養護老人ホームの待機者対策が効果的に進んでいるとは言えない状況があります。
しかも、注目すべきは、増えた歳出458億円を何に使ったかだけでなく、この間民営化や民間委託による経費削減に大田区が努めてきていることです。
私は、民営化・民間委託、非常勤職員など多様な主体が大田区の行政サービスを担う時代にあって、職員定数条例で示す職員数の減少をもって、経営の効率化ははかれず、大田区としての指標を持つべきであることや、民営化・民間委託の効果を示すべきである発言するとともにその数値を示すよう大田区に求めてきていますが、大田区は、難しいとして一切示していません。
しかし、平成19年第一回定例会の区長挨拶において、
「平成6年度6264人であった職員定数は、この間に都からの清掃事務移管の411人を受け入れましたが、平成19年度には5000人を割り込む定数条例を提案しております。人件費や委託等による平成7年度から18年度までの経費削減効果の累計は約800億円に上っております」
とその効果を数値で示しています。
民営化や民間委託はその後も行われていて、同様の経費削減効果が達成できているのであれば、かなりの金額を新規事業に投入できたことになります。
逆に経費削減効果が認められなかったのであれば、何のための民営化や民間委託だったのかが問われることになり、それはそれで、別の問題が生じるわけですが、これら民営化や民間委託の経費削減効果はいったいどこに使われたのでしょうか。
民営化、民間委託による経費削減が、住民福祉の向上に使われず、本来、大田区が取組むべきではない公共インフラに投入されてはいないでしょうか。
増えた歳出458億円の使い道の説明もできていませんが、民営化や民間委託の経費削減効果も含めれば、新規事業に投入できる予算はかなりにのぼるはずです。これらを使って保育園の待機児や特別養護老人ホームの待機者対策が行えなかった理由は何なのでしょうか。
そうした視点からみれば、大田区の答弁「一時に必要とする区民全員に施設サービスを提供できるというわけにはいかないが目標値を定め計画的に整備を進めている」から、目標値を定め整備を計画に乗せれば、たとえそれが、サービス提供における不公平を生じたとしても問題ないことにもつながらないでしょうか。
区はまた、第四回定例会の私の質問に対し「用地の取得が難しい」、認可保育園入園の異議申し立てに対して「土地が無い」と答えています。一方、今回の議会には東京税関萩中住宅の跡地を大田区が購入して区民施設の設置を求める陳情が提出されていますが、この陳情に対する区の見解は、「区が買って作る計画が無い」です。
その場しのぎ、二枚舌と言わざるを得ない区の公の発言は、区民の付託を受けるに値しません。
その姿勢は、今回の予算委員会で私が明らかにした、この間の大田区の公有地、蒲田5丁目保健所跡地、大森北一丁目などの長期貸付、旧西行政センター売却、土壌汚染付の土地や形状の悪い土地の取得などの状況によく現れています。適地に公有財産があっても、子育て、高齢などの新たにな社会保障ニーズに対応してこないうえ、目的が無くても土地を購入してきたからです。
平成25年度予算は過去最高規模ですが、たとえ財政規模が増えたとしても、民営化などによる経費削減が行われて新規事業に投入できる金額が増えたとしても、また、土地があったとしても、課題解決における優先順位を変えない限り、保育園や特別養護老人ホームなど社会保障の課題が先送りされてしまうということです。
子育て支援も高齢福祉も深刻ですが、今年の予算案からは、その解決につながる施策はみえてきません。
昨年の補正予算で5億、平成25年度予算で5億の新線蒲蒲線整備積立基金・空港跡地整備のための調査費用が計上されています。
一方で、現有公共施設の維持管理が大田区の財政を大きく圧迫することが明らかになっていながら、平成25年度予算委員会のいても指摘いたしましたが、公共施設整備積立基金は余った財源頼みで平成25年度予算には1円も計上されていません。
大規模な観るスポーツに力点をおいた「大田区総合体育館」、海外企業と国内企業の連携や広域的な産業拠点と位置付けられている「空港跡地の産業交流施設」、周辺自治体から羽田空港へのアクセス向上を図る「蒲蒲線」などは、むしろ、国や東京都が取り組むべきで、基礎的自治体大田区が主体となって取り組むべき事業ではありません。
高度経済成長期には、社会資本を整えることが政治の大きな役割の一つでしたが、社会資本がほぼ整っても新たな需要を作り出し、大田区が優先的に行う必要のない公共インフラ整備に税金が優先的に投入されれば、少子化・高齢化・人口減少・労働人口の減少といった社会構造変化に伴い生じる新たなニーズ、本来基礎的自治体の責務である住民福祉の向上が放置され先送りされるのは当然です。
国の公共事業が問題視され国主体の公共事業が減る一方、地方自治体がニーズを作る自治体発公共事業に変わってきています。
それでは、国の補助金さえつけば、大田区の負担が少なければ、良しとして事業を行うべきでしょうか。
自民党政権に代わり、政府は経済対策のための10.3兆円の補正予算を計上しました。うち公債金で7兆8千億です。
国は、本年1月15日に都道府県指定都市財政担当と議会事務局に対し平成24年度補正予算(第一号)に伴う対応についてと題した文書を発行し、各自治体および議会に対し、その対応を求めています。
大田区は、本日送付の補正予算にて、14億5千万うち国庫支出金5億5千万を計上する一方、その分を平成25年度予算から減額する議案を提出しています。
結果として、国の補正予算を執行したことで、大田区の負担は減りましたが、国に借金が積み増されることになりす。大田区は行政の縦割りから「国が負担してくれるなら」ということかもしれませんが、私たち区民からみれば、国の補助金も大田区の負担も私たち区民支払う税金にかわりはありません。
結果として何が変わったかと言えば、借金をしなくてよかった事業を借金して事業を行うことになるということです。
大田区の14億5千万、うち5億5千万円など全体からみれば影響はわずかだというのかもしれませんが、そうした意識が国の累積債務につながってはいないでしょうか。
大田区はこれまでも、さまざまな大規模な公共事業において国の補助金を引っ張ってくるので大田区の負担は少ないから大丈夫ですと言って議会に合意を取り付けてきています。
しかし、私たち区民にとってみれば、国の補助金も大田区の歳出も同じ大田区民が支払う税金にかわりはありません。
自治体に予算が落ちれば良いという価値観で賛成すれば、後年度・次世代に負担が残ります。
本来、自治体が判断すべき事業について、国が補正予算を計上し、その後自治体側に通知分で使うことを強く求め、それに自治体が従うなら、自治体の自治権はどこに行ってしまったのでしょうか。地方分権とは何だったのでしょうか。
平成25年度予算案の概要には区債発行余力という言葉が非常に気になっています。何を持って余力とするか大田区に尋ねたところ、起債発行残高が減った額を示しているそうです。たとえば、昨年度末483億円だった残高が平成25年度末には474億円になるので、9億の余力が生まれているのだそうです。
平成16年度末の1508億からみれば大幅に減っている記載発行残高ですが、減ったから余力ができたというものではありません。
起債は、世代間負担の平準化などその目的が限定されるべきですが、今後の少子化・高齢化・人口減少労働人口減少という社会構造の大きな変化の見通しとその財政フレームも無いままに、起債発行残高が減ったので余力が出来たという意識の元編成されている予算には疑問を感じざるを得ません。
しかも、近年、大田区は、区債以外にも債務負担がありますが、これらがみえにくくなっていることが、過剰な債務につながらないのか危機感を覚えます。
雑色駅前広場整備のために蒲田開発に買わせた土地の債務負担、伊豆高原学園PFI、東糀谷工場アパートの借り上げ賃料。加えて言えば老朽化した公共施設も潜在的債務であり、これらを前提にした予算計上、計画策定が求められますが、施設整備積み立て基金計上されていないのみならず、公共施設統廃合の計画どころか議論さえ始まっていません。
経済対策も投入する費用や、減免する税に対し、期待できる税収の試算が行われたことはなく、市場から金利を支払い資金調達しているという感覚のないことに驚きます。これが高度経済成長期であれば、規模の増加による自然増が見込めるわけで結果として税の増収につながりますが、労働人口減少社会において、利息を支払い公共事業を行うことは、さらなる財政負担を招き財政の硬直化を進めるばかりです。
国は、東京を経済のけん引役としてヒト・モノ・カネを集中させていますが、その経済の中心に住む私たち23区民は、そこから得られる税収で当然受けるべき安定した豊かな暮らしができているでしょうか。保育園の待機児も特別養護老人ホームの待機者も23区に顕著です。
国は法律や制度を作ることができますが、社会保障のほとんどは基礎的自治体が主体的に取り組まなければ、区民生活は変わりません。
予算編成における優先順位をかえ、基礎的自治体の責務である、住民福祉の向上を最優先課題とする予算編成をもとめ反対とします。