前回報告報告しましたが、プラスチックごみが環境中に放出され拡散しています。
マイクロプラスチックと呼ばれる小さなプラスチック片になって魚が食べたり、海水を経由して食塩の中にまで入っていたりするなど、事態は深刻です。
しかし、この問題は、最近になってわかったことではなく、以前から、1950年代から警鐘が鳴らされていたにも関わらず、放置してきたことで、その結果、ここまで来てしまいました。
ヨーロッパでは、2030年までにプラスチックを使った容器包装類の使用を禁じる動きも出てきていて、中国では、環境汚染の視点などからプラスチックはじめ古紙・繊維など資源ごみの受け入れを禁止しています(2017年末から)。
NHK報道 https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/catch/archive/2018/02/0219.html
第23回、とことん討論会で紹介された対策は、生産者の責任とされているペットボトルのリサイクル方法に対する一つの考え方ではありますが、現在行なっている容器包装リサイクル法での理念や考え方とは、根本的に違っています。
拡大生産者責任に基づくペットボトルリサイクル
現在容器包装リサイクル法という法律に基づき、ペットボトルはリサイクルされています。
事業者が作った容器包装リサイクル協会が、完全ではありませんが、拡大生産者責任(EPR)という考え方に基づいて、リサイクル費用を負担しています。
拡大生産者責任(EPR)とは
この拡大生産者責任は、(ペットボトル飲料を)作って売ってお金儲けしている生産者に、営利活動に伴い排出されるごみの処理費用をご負担いただく、という考え方です。
売って儲けて、そこから派生する環境負荷やごみ処理は、行政ということになると、事業者は儲けるだけ儲けて、その負担(ごみや環境配慮など)を負うのは税金になってしまいます。
排出されるごみの処理費用の責任を生産者が負担する仕組みを作れば、
・企業の費用負担が増え利益を削ることになったり、
・売値に転嫁して売れなくなる可能性がありますから
→ごみ処理のしやすい製品、ごみの出ない製品を作るインセンティブが事業者側に生まれます。
ここを期待しているのが、拡大生産者責任という考え方で、それに基づいて容器包装リサイクル法という法律ができています。
http://www.jcpra.or.jp/consumer/again/tabid/169/index.php
消費者に費用転嫁するエストニア方式
とことん討論会で提案された考え方は、回収費用をペット飲料代金に上乗せし、ペットボトル回収機に入れると上乗せした分が戻ってくるというしくみで、処理処分費用まで事業者に求めているEPRとは根本的に考え方が違います。
デポジットという言葉が、消費者を勘違いさせますが、ビール瓶は繰り返し使われるリユースの優等生で、使い終わったビール瓶を持ち込むと¥5の返金があります。
今回のエストニアの事例は、デポジットと言いながら、リユースではありません。
そもそも、発想が【回収】で【洗わなくていい】といった利便性を売りにしているので、汚れたペットボトル回収はリサイクルが難しく、焼却になる可能性が高い方法です。
中国が資源ごみを受け入れなって、日本に与える影響
中国が資源ごみの受け入れを禁止しました。
容器包装リサイクル協会経由のペットボトルも、大田区が資源回収しているペットボトルも、中国に売ってはいないと言いますが、ペットボトルのリサイクルに全く影響がないと言えるでしょうか。
ペットボトルリサイクル事業者の中には、収集したペットボトルの受け入れ先を失っているところや、そうなると処理処分費用負担の大きくなっている事業者がでてきている可能性も否定できません。
ペットボトルの処理費用は誰が負担するか
エストニアの事例は、ペットボトルの収集・処理費用をデポジットとして飲料代金に上乗せし値上げであることを見えにくくしています。
しかし、中国が資源ごみの受け入れをやめたことで、リサイクルに関わる事業者負担が大きくなることろを、エストニア方式にすると、消費者に転嫁させることになり、事業者負担を減らすことができます。
ペットボトル飲料導入当初の議論はどこへ
日本でも、ペットボトル飲料の販売当初は、大きな議論があり、当初は大きなものに限っていました。
それが、いつの間に、小さなものも認められるようになっています。
世界は、プラスチックを使わない仕組みの構築へ
そもそも、世界では、プラスチックごみの環境への排出をどう抑制するかが問われており、プラスチックを使わない社会をどう作っていくかが大きな課題になっています。ペットボトル飲料使用への規制をかけている国や地域が存在しているのです。
プラごみの中の「ペットボトル」だけを取り上げ【発生抑制でなく回収できれば良し】とする発想は、世界の流れに大きく後れを取っているどころか、事業者の経済利益優先で、大量生産、大量消費、大量廃棄の流れを容認する、世界の流れに逆行する考え方と言えます。