(1)ウクライナの軍事侵攻を強める露が欧米と一体となって露への経済、金融制裁を強める日本に対して対抗措置として北方4島返還交渉を含む日露平和条約締結交渉を「現在の状況で続けるつもりはない」(報道)とし、極東経済開発協力の「対話から脱退する」(同)と宣言した。
(2)事実上の外交交渉の決別宣言で想定されたものだが、岸田首相は「今回の事態は全てロシアによるウクライナ侵略に起因して発生した」(報道)として反論して強く抗議した。日本政府としては露との北方4島返還問題を抱えて、露との経済分野協力担当を萩生田経産相兼務として残したままで露との交渉継続の糸口、窓口は残しておきたい意向もあったのだろうが、日本の対露制裁が経済、金融制裁ということであれば、露との経済開発協力関係にわずかでも形式的にも期待することなどありえない思惑、見込み違いであり、露の対抗措置は考えられたシナリオだ。
(3)これでしばらくは露との北方4島返還交渉、平和条約締結交渉は遠のくことになり、北方4島返還をことさらに強く望む元島民にとっては厳しい対応になるが、近年のプーチン大統領、ラブロフ外相の発言からは北方4島は戦後法的に正式に露の領土となったことを認めるよう迫る発言がみられて、それは今回のプーチン大統領のウクライナ軍事侵攻の誤った思惑、強い意思と通じるものがある。
(4)露からの日本への経済、金融制裁への対抗措置をみるまでもなく北方4島返還領土問題は暗礁に乗り上げていたものであり、露の極東地域、北方4島への軍事力支配強化をみれば露がプーチン大統領が侵略支配した領土を返還する意思がないことがわかる。
(5)だからといって日本は固有の領土を占有されたままで何もしないことはできずに、露がどう出ようとも北方4島返還は訴え続けなければならず、しばらくはウクライナ情勢ともども露の政治状況の変化を見逃すことなく露に対して機会をうかがい、交渉再開に道筋をつけていかなければならない政府の責任がある。
(6)さらに近年は露軍機、艦船の北海道、対馬海峡公海周辺への進出が目立ち、日本への挑発とも受け取られる示威行動がみられる。露にとってはウクライナ・クリミア半島は海軍艦船基地として重要であり、強制編入してまで領土化したように、占有した日本の北方4島も日米軍事同盟への対抗策として軍事先鋭化を進める思惑、目論みが読み取れる近年の北海道沖への軍事進出で見過ごせない。
(7)ウクライナ情勢は露、プーチン大統領にとっては軍事侵攻の目的を果そうが失敗に終わっても、その後の露は世界から孤立して影響力を自ら失っていく末路を迎えて、プーチン大統領にとってはソ連邦再建どころかソ連邦崩壊を再びくり返す、呼び覚ます愚行を進むことになるだろう。
(8)世界は早くウクライナ停戦、収束に向けて取り組み、実現し、プーチン後(after putin)の露政治体制の行方を見極めたいところだ。