(1)岸田政権の朝令暮改内閣はやはり朝令暮改内閣だ。昨年海外でのオミクロン株感染拡大を受けて岸田首相は水際対策強化として外国人を対象とした入国規制を打ち出したが、これに関連して海外在留の日本人の帰国もむずかしくなり批判を受けて政府は1日6千人の受け入れ基準に合わせて帰国可能としたところ年末を迎えたこともあり基準数を上回り、急きょ国交相が今度は航空会社にすべての海外からの航空券の発売停止を求めてその日の内での二転三転の混乱となった。
(2)この措置は官邸には相談もなく想定対応で国交省が独自の判断で決めたといわれて、岸田首相はどうなっているんだと憤(いきどお)ったといわれる。前々内閣に遡(さかのぼ)ればコロナ社会で当初減収家庭対象に30万円給付金を支給することを閣議決定し予算化しながら、実効性に疑問、批判が出て政府は予算組み替えですべての国民に10万円給付とした。
(3)同じように与党間主導の党利党略で18才以下子ども家庭に10万円給付を決定したが、経済的余裕のない大学生はどうするのか(政府は補正予算で対応するというが)、子どものいない困窮家庭はどうするのかなど問題もあり割り切れない政府の経済対策となった。
主体性のない政府の対応に国民は翻弄(ほんろう)されている。国民は誰の税金、投資で政策を実施しているのかの思いは強い。
(4)今問題になっているのは来年度年金額が現役負担世代の賃金スライド制で減額になる補てんとして年金受給者対象に一律5千円給付する政府案だ。自公幹事長が主導して合意して提案したものだが、今なぜ年金受給者だけなのか、他にもコロナ社会で苦しんでいる人はいる、参院選対策だとの批判、反発が国民、自民党内からも出てきて政府は制度設計の検討を中止して対応に追われている。
(5)コロナ対策、経済対策では自公主導の給付金案は目的、使途が経済、生活救済というよりは与党の連携維持、選挙対策の意味合いが強く、国民全体、困窮層対策、目的、理念とはなっておらずに批判、反発を受けて修正、調整に追われるということが常態化している。
(6)岸田首相は「聞く耳」(hearing ears)を持っていることが得意と公言しているが、政府と与党、自公幹事長の調整、積み上げ機能が働かずに政策、対策も「聞く」だけになっている。最近は岸田首相からも新しい資本主義、成長と分配の好循環も聞かれなくなり、自民党福田総務会長からもそろそろ具体的な理念政策、実行行程表を示してほしいとの要望も出ている。
(7)岸田首相、政権の主体性がみられない(unsubjectivity politics)朝令暮改内閣では心もとない。