(1)ドイツで極右組織のメンバーが国家転覆を企てたとしてメンバー、支援者25人が逮捕(報道)された。主犯格は貴族の家系の子孫といわれ、元連邦議会議員で現役裁判官も含まれるなどこれまでのテロ組織とは趣が違う異質な構成組織だ。
報道では暴力や軍事的手段で独自の国家樹立を目指し武装して、連邦議会の襲撃を準備していたとも伝えられている。
(2)日本でいえば国家転覆をはかって高学歴者の入信を勧誘してサリンを製造して地下鉄にまいて社会を混乱させたオウム真理教事件のようであり、72年の国粋主義の作家三島由紀夫が自衛隊駐屯地に乗り込んで憲法改正クーデター決起をうながした(失敗し自決)事件のような驚きだ。
(3)72年といえば沖縄が米国統治から返還されて日本の主権、独立が実現し、自衛隊が日本を守る立場になりながら憲法第9条の趣旨から当時はまだ存在が違憲との主張もあり、三島由紀夫が憲法改正を目指して自衛隊にクーデター決起をうながしたものだ。
(4)ドイツの国内事情はわからないがEU、ヨーロッパでは近年選挙での極右勢力の台頭が著しく、ドイツでは極右組織が選挙ではなく深層でのテロ行動で国家転覆を画策する動きがあったということだ。
ドイツはかってヒットラーによる全体主義国家が台頭し日独伊同盟で世界大戦へ突き進み、米国など連合国に敗北した経験から、戦後いち早く国が反省のもとに戦争責任を認め謝罪して民主主義国家としてメルケル前首相のもとにEUを主導してヒト、モノ、カネの自由往来という政治、経済、平和の壮大な実験場としてあたらしい民主主義体制を推し進めている。
(5)今年2月の露のウクライナ軍事侵攻ではNATOとしてウクライナ支援に協力して、米、日などと露経済制裁に参加して露からの石油、ガス・パイプライン供給停止の対抗措置を受けてエネルギー不足、石油高騰の影響を受けて社会不安の中でのドイツ極右組織の国家転覆テロ計画の進行が発覚した。
(6)同テロ組織は露と「新たな国家秩序」について交渉しようとしていたとも伝えられている。ドイツが「影の国家」(deep state)に支配されているという陰謀論を信じていたとも伝えられて、トランプ前大統領支持者の陰謀論(Qアノン)に影響を受けていたとの指摘もあり、トランプ支持者の米議会襲撃事件に強い影響を受けたとも考えられる。
(7)政治(体制)はそれぞれの国民が決めるものだが、世界は過激化、短絡、独裁化の流れが強くなって混迷を深めている。そうした流れを象徴するような過去の反省から自ら出直したドイツの極右組織による国家転覆テロ計画の摘発だった。