(1)40年を超えて唯一稼働している関電美浜原発3号機の周辺住民が老朽化で危険性が増しているとして運転差し止めを求めた申し立てについて、大阪地裁は「安全性に問題はない」として却下した。
岸田首相は原発政策で新増設、リプレース(建て直し)の方針を示しており、これに沿った判決となった。原発再稼働は福島第一原発事故を受けて国民世論でも過半数が反対を示しており、政府と国民の意見は相容れないものだ。
(2)原発は11年の福島第一原発事故を受けて当時の民主党政権が運転期間を原則40年に制限するルールを決定した。これには規制委の認可を受ければ1回に限り最大20年運転期間を引き延ばすことができるとし、しかし40年超運転は「例外中の例外」だった。
福島第一原発事故の復興が進まない中で、政府はカーボンニュートラル50年達成目標に向けて岸田首相は原発政策に再びカジを切り、「例外中の例外」の40年超えての原発再稼働の規制委の追認が相次いで恒常化して、政府はさらに最長60年と定められた運転期間をさらに「延長」する新ルールをとりまとめる意向(報道)といわれる。
(3)「歯止め」が一度取り払われると、次から次と例外はなくなり、延長、延長へと突き進むことになる。国民は福島第一原発事故の影響の大きさから原発反対論が過半数を占め、再生可能エネルギーへの変更を求めているが、政府対応は遅く、国民への説明、理解は進んでいない。ドイツでは福島第一原発事故を受けて、原発から再生可能エネルギーへの転換をすでに決めて取り組みは早い。
(4)わずかに司法は国民の安全性を考えて、いくつか原発運転差し止めの判決で原発事業者に改善、決断を迫っているが、政府の対策は新増設、リプレース、60年を超えての原発再稼働推進政策を打ち出している。
(5)現在はウクライナ戦争の影響で石油高騰、エネルギー不足で電気料金値上げ、節電要請に向けられているが、次世代エネルギー構造を原発に依存しない新開発にも着手する必要はある。原発よりも安全性の高い核融合型電力システムも研究(報道)されており、再生可能エネルギー実用化とともに次世代電力構造に取り組む必要がある。
(6)福島第一原発事故からの原発安全性の歯止めがいつしかなし崩しになり、原発依存体制に戻ることは、政治、国民の進むべき道(the road we should take in the future)ではない。